第124話 人気の出見世

「あの、洗濯子ちゃんたちはどこ行ったんですか?」

「次の人気の出見世でみせです」

「人気の出見世?」


 「出見世」とは屋台として出しているお店のことです。


「人気の出見世のはすぐに売れてなくなってしまいますから、だから手に入れたい人はみんな、少しでも早く来たくて必死なんです」

「売れてって、宝物って売ってるんですか?」

「もちろんです」


 太郎が驚いて聞くと、うずめ様は何を当然のことを聞くのか、という顔で返してきました。


「売ってなかったらどうやって手に入れるんです?」

「いや、その……」

 

 鬼は人から奪った宝物を持ち寄るのだとばかり思っていた太郎は困ってしまいました。


「あ、その、そもそも、その売る宝物はどうやって手に入れてるんです?」

「それはもちろん、自分たちで作るんですよ」

「作る……」


 ますますわけが分からない。


「太郎さんは、本当に何も知らずにこの祭りに参加なさったんですね」

「ええ、まあ」

「どうして来ようと思ったんです?」

「いや、あの……」


 まさか、ひきこもり解消のためにおじいさんとおばあさんに放り出された、とはちょっと言いたくなかった太郎です。


「まあ、いろはちゃんたちが戻ってきて、見たら何かは分かると思いますよ」

「はい」


 なんとなくしょぼんと答える太郎。

 その間にも、次から次へと島へ鬼たちが上陸し、次々に「出店」とやらに群がっていきます。


「あの、うずめ様は買わなくていいんですか?」

「ああ、あたしも昔は買いに行ってたんですけど、今は出店同士の交換でいただいたりもしますし、それに今はほら」


 と言って、しゃららら~んと、美しい扮装を揺らして見せ、


「こっちに鞍替えしてしまいましたからねえ。もういろはちゃんたちみたいにはしなくていいかな」


 と言ってから、


「一度、親に全部焼かれてしまったので、そっちへの興味が薄れた、ということもありますし」


 と、少しだけさびしそうに言いました。

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