第123話 お宝争奪戦
「宝って」
「まあ、見ていなさいな。とりあえず、いろはちゃんたちも欲しいお宝が手に入ればいいんですけどね」
洗濯娘たちと一緒に走っている中には、力強く、足も早い男たちと思われる者もたくさんいます。
みんな何かの扮装をしているので、実際の大きさは正確には分かりませんが、このお宝争奪戦に参加している者たちには、あまてらす様やうずめ様のように、ひらひらした飾りを付けているのではなく、このために走りやすい扮装をしている者の方が多いように思います。
おそらく、それだけ早くお宝にたどり着くためにそうしているのでしょう。それでいけば、洗濯娘いろはの犬、猿、雉の扮装も、走るには適した扮装と言える気がしました。
「もしかしたら、それであえてあれを選んだのかな」
足元を見られて仕方なかったと言っていましたが、その中でも走りやすいのを選んだ結果があれだったのかも知れません。
いろはちゃんたちはがんばって走りましたが、それでも同時に走り出した早そうな人たちに追い抜かれていきます。
「ああ、大丈夫かなあ、間に合うかなあ」
「間に合うって?」
「お宝げっとに」
「え?」
「数に限りがありますからねえ」
一体どういうお宝なんだろう。
太郎はそう考えながら人だかりを見送っていると、港から上陸した鬼たちもあっという間にその列に追いついてきました。
「どうなったのかしら」
うずめ様が心配そうにそう言っていると、
「うずめ様! 太郎さん! ゲットしましたあ!」
「あたしも!」
「あたしも!」
3人娘がこちらに向かって手を振り、
「じゃあ、次行きます!」
そう言ってまたどこかに走って消えてしまいました。
「次って何!」
太郎の声も人混みの中に虚しく消えていきました。
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