第122話 戦闘開始!

 太郎が驚いてうずめ様を見つめます。

 うずめ様はニコニコして太郎を見つめ返します。


「あたしは、今はちょっと立ち位置も目的も違ってますけど、前はあんな鬼でしたよ。だからまあ、親に勘当されても仕方なかったと言えば仕方なかったんでしょうね」

 

 口ではそう言いながら、うずめ様の瞳はほんの少しだけさびしそうに見えました。


「世間様がみんな、鬼のことをもっと理解してくれたら、そうしたら、きっとみんな楽しく祭りに参加できるようになるんじゃないかと思ってます。そしていつか、そんな時代になると信じてます」


 そう言ううずめ様の瞳の奥には、さびしさを超えてさらに強い光が宿っていました。


「もうすぐ鬼が上陸するぞー!」

 

 誰かがそう叫び、


「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 と、また島のみんながこたえます。


「来たあ!」

「一番鬼が上陸したらだ!」

「待て! まだだ、まだ行ったら失格だぞ!」


 綱を張る男たちがそう言って、綱を押すようにして押し合いへし合いしている人々をとどめます。


「来たあ!」

「一番鬼が上がったぞお!」

「綱を離せえ!」


 その声と同時に綱を張っていた男たちが手を放し、綱が落ちるのを待ちかねるようにして、洗濯娘たちを含む一団が、


「わああああああああああ!」

「いっけええええええええ!」


 と、声を上げて一斉に駆け出しました。


「一体どこへ!」


 太郎がみんなが駆け出す方向に目をやると、先頭がいくつかの群れに分かれ、ヤマタノオロチが酒を見つけて各々おのおのの頭を八つのかめに突っ込むように、うねるように目的の方向に走っていくのが見えました。


「みんな同じ場所に向かってるんじゃないんですね」

「ええ、みんな欲しいお宝が違いますから」

「お宝!」


 鬼たちも、洗濯いろはたちも宝を求めて駆け出しているのだと太郎は知りました。

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