第111話 後援者

 翌日1日はオフとなりましたが、海を渡るためには船の予約を取らないといけないようです。


「そんなにたくさんの人が鬼ヶ島に渡るの?」


 太郎はちょっと困惑しています。

 だって、鬼ヶ島って怖いところじゃないの?


「ええ、そりゃもうたくさんの人が渡るらしいですよ」

「何をしに行くわけ?」

「宝物を手に入れるためですよ」

「え!」


 太郎はまたまたびっくりです。


「宝物は鬼が持ち寄るって聞いてたのに、手に入れるため?」


 なんだか話が違ってきませんか?


「もちろん持ち寄る人もいますけど、手に入れるために行く人もたくさんいるんですよ」

「そ、そうなの?」

  

 太郎はもう何がなんだか。


 洗濯娘たちと船着き場に行くと、本当にたくさんの人たちでいっぱいでした。


「この船はもう予約でいっぱいだよ、一番船はもう誰も乗れないよ」

「そんな~」

「ニ番船はこっち!」

「予約を!」

 

 えらい騒ぎです。


「ああ、これはもういつ乗れるか分かりませんね……」

「うん、一度島に行っての折り返しにしか乗れなさそう……」

「遅くなっちゃうね……」


 洗濯娘たちががっかりしてそう言います。


「船ってみんな乗り合いなの?」

「貸し切り船は高いんです」

「船賃だけでお金なくなっちゃいます」

「そんなことしたら行く意味がないし」

「お金があれば貸し切りの船はあるの?」

「ええ、でも、そこそこの船賃のはもうみんな『あまてらす様』たちのような人がずっと前に予約してると思いますよ」

「なるほど……ちょっと待ってて」


 太郎は大きい船の船主らしい人のところに行き、何か話をしてから戻ると、


「あの一番大きい船、まだ空いてたから予約しといたよ」

「ええっ!」


 洗濯娘たちはどびっくりしましたが、太郎はええとこのお坊ちゃんなのです。

 金、持ってんで~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る