第106話 3匹登場

 太郎が驚いて声のする方向を探すと、すぐそばの植え込みの向こうから、


「あたしたちです~」


 と、聞いたことのある声がもう一度話しかけてきました。


「あれ、その声、もしかして」

「はい」

「洗濯子ちゃんたち?」

「そうです~」

「えへ~」


 そう、そうです、太郎んちで洗濯をやっている3人娘の声でした。


「何してるの、そんなところで」


 太郎が立ち上がって植え込みに近づくと、


「あ、あ、ちょっと、ちょっとちょっと!」

「あの、見ないで!」

「来ないで~!」

 

 と、悲鳴をあげるようにして嫌がります。


「え、どうしたの!」


 太郎は声に驚いて一瞬立ち止まりましたが、


「一体どうしたの? まさか追い剥ぎにでもあって身ぐるみでもはがれたの?」


 そう声をかけると、


「違います!!」

「着てます!!」

「裸じゃないです!!」


 と、恥ずかしさもあってか絶叫するように返してきます。


「とりあえず服は着てるんだね、一体何があったの?」


 と聞いても、なんだかもにょもにょ言うだけではっきりしません。


「それじゃあよく分からないよ。とりあえず姿を見せて」


 と、心配してのぞいてみたら、


「え!」


 そこにいたのは、


「犬! 猿! きじ!」


 ではなく、その扮装をした洗濯娘3人でした。


「どうしたの、その格好……」

「だから見ないでって言ったのに~」

「ふええ~ん」

「はずかしい~」


 と、3人で抱き合うようにして、太郎から姿を隠し合うようにして恥ずかしがりますが、


「ぐうううううううう~」


 と、ものすごく大きな音でお腹の虫が鳴きました。


「いや、なんか事情はよく分からないけど、とりあえずお腹へってるんだよね? おいで、おばあさんの作ってくれたお団子食べよう」

 

 そう声をかけると、もじもじしながらも空腹には勝てなかったのか、やっとのことで太郎の前に姿を現しました。

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