第104話 太郎の大冒険はじまりはじまり!

 とまあ、太郎は無事に帰ってきました、めでたしめでたし。


 じゃないんだよ!

 その間の話がいるんだよ!


 ここで終わらせるわけにはいきません。 

 さあ、太郎がどこで何をしていたのかをお話ししていこうと思います。


 あの日、太郎は夜通し道を歩いてふもとまで出ると、そこから地図にあった「鬼ヶ島」のある方向へ向かって歩き出しました。

 おばあさんのお団子を食べ、途中で休憩も取りつつですが、翌日は丸一日歩き続けて、その夜は旅籠はたごに泊まりました。


 太郎の背中のカゴと懐には、路銀もたんまりと入っていたので当然野宿なんてしません。食べる物とお金さえあれば、夏だし、とりあえず死ぬことはない。そう思ったおじいさんとおばあさんの親心です。というか、甘やかし過ぎと思わないでもないですが、まあお坊ちゃんなのでしょうがないです。


 一泊して翌日、また歩いて、そろそろこのあたりから海を渡れば鬼ヶ島、という海岸近くの集落に到着しました。


「よし、今晩はこのあたりの宿に泊まって、明日は海を渡ってみるかな」


 時刻はお昼近く。お腹も空いたので、とりあえず休憩です。


 海岸近くの松林まつばやしは夏の日も遮ってくれて海風も心地よく、低木の植え込みなどもあり、休憩するのにもってこいに思えました。


「あそこの植え込みのところで休憩しよう」


 ちょうど腰を下ろすにはちょうどいい大きさの石も見つけ、一休みしてお昼を取ったら海を渡る方法や、今夜の宿の確保なんかをすればいいだろう。太郎はそう思って植え込みに向かって進んでいきました。


 と、


「お腹すいた……」

「ちょっとだけ何か食べたくない?」

「うーん、だけど、そうすると持ち合わせが」

「もし使っちゃたら欲しい物買えなくなっちゃうし」

「でもお腹すいたよね」

「どうしよう」

 

 どうやら女の子たちらしき声が聞こえてきました。

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