第99話 大放出!

「あ、えっと、ここ……」


 気がつけば太郎は家の門あたりにいました。


「おじいさん、目を覚ましましたよ!」

「おお、もうちょっとなのに!」


 寝起きでぼーっとした頭の中でおじいさんとおばあさんのそんな声を聞いていましたが、どうやらえっさほいさと運ばれている気がする~


 そして、


「ほいさっと!」


 ドサッ!

 

 そんな声と一緒に放り出されました。


「え、えっと、ここ、門の外? え、なに?」


 へたりこんだままきょろきょろしている太郎の前で、


「ぎぎーっ」


 と、門が閉じられてしまいました。


「え、あ、ちょっと!」


 急いで立ち上がり、門をどんどんと叩きましたが、中からおばあさんの声で、


「宝物を手にするまで帰ってくるなあ!」


 と、言われてしまいました。


「え、これって、もしかして締め出された?」


 もしかしなくても締め出されてるのは間違いないです。


「ちょっと、ちょっと! おじいさん! おばあさん! ちょっと! 入れてよ!」

 

 どんどんどんどん、どんどんどんどん、いくら叩いても中からかんぬきをかけられていて、全然開けてくれそうにありません。


「おじいさん! おばあさん!」


 もう一度声をかけましたが、返事もしてくれず、もう門の前にいなくなってしまったようです。


 太郎は一瞬、門をぶち壊して中に入ろうかと思いましたが、そんなことをしてもおじいさんとおばあさんにかえって嫌われてしまうように思ってやめました。


「はあ……」


 気を失ったのは晩ご飯を食べていた頃、夕方だったと思います。

 今は月が真上に昇っていて、すっかり夜ですが、夜のいつ頃かは分かりません。


「どうしようかなあ、これから」


 太郎はもう一度ため息をつき、月に向かって吠えたいような気持ちになりました。

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