第97話 すんのかいせんのかい

「もしも行くと言うのなら、準備はちゃんとできてるが」

「ええ、太郎ならきっと鬼から宝物を奪い返してくれるでしょうし」


 おじいさんとおばあさんも、ちょっと困ったようにそう言います。


「いや、行きたいと言ってるわけじゃ……」

「じゃあ、やめておく?」

「ああ、無理に行くこともない」

「いや、嫌って言ってるんでも、ない……」

「行きたいのかい?」

「いや……」

「行きたくないのかい?」

「いや……」


 太郎の気持ちははっきりしません。


「もしも行くつもりなら、そろそろ行かないと間に合わないかも知れないよ」

「そうじゃな、せっかく行ったのに終わっていたでは行っても意味がなかろう」

「いや、行きたいってわけじゃ……」

「じゃあ、もうやめておいたらいいんじゃない?」


 おばあさんが太郎の手を取って続けます。


「太郎の気持ちも考えずに勝手に話を進めて本当に悪かったと思っているの、ごめんね」

「いや……」

「でも、太郎だったら鬼たちをなんとかしてくれるんじゃないか、と思ってる気持ちも本当なの」

「それは……」

「でも、さっきも言ったけど、太郎がこうして普通に接してくれる、わたしたちはもうそれで満足かなと思っているのよ」

「うーん、だけど、せっかく準備もしてくれて」

「さっきも言ったが、無理に行くこともないんだぞ? 何しろ暑いしな」

「嫌とは言ってないし……」

「行きたいの?」

「とも別に……」

「行きたくないのかい?」

「ってわけでも……」

「行くの?」

「うーん……」

「行かないのか?」

「えっと……」

「行くのかい?」

「行かないのかい?」

「嫌なのかと思ったら行きたいのかい?」

「行きたいのかと思ったけど行きたくないのかい?」

「行くのかい?」

「行かないのかい?」

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