第79話 逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ

 さて、おばあさんは「アルファ団子」の研究に余念がありません。


「おばあさん、がんばっておるのう、わしも負けてはおられん!」


 おじいさんもそう言って動き出しました。


 おじいさんは鬼ヶ島に行くまでの地図や細かい雑品などを市で揃えに行きましたが、そちらはあっという間に揃ってしまいました。


「今の時代はお金さえあればなんでも揃って便利じゃが、あっけないもんじゃなあ」


 苦労しているおばあさんと比べて、おじいさんは手持ち無沙汰。


「はあ、何かできることはないかのう……」


 って、一番大事なことが残ってると思うのですが、もしかしてすっかり忘れてる?


「しょうがない、太郎の説得をしよう」


 おおっ! しっかり覚えてました。

 

 ただ、これまでも長い間、色んなことを言って、して、


「なんとか太郎をすーぱあちゃいるどに戻したい」


 から、


「そこまでいかなくてもいいからせめて外に出てほしい」


 になり、


「外に出なくてもいいからぼーっとせず家の中でできることをやってほしい」


 と考えるようになって、


「したくなければ何もしなくていいから普通に話をしてほしい」


 と、どんどんハードルを下げていったものの、太郎には一向に気持ちが届いていなかったので、疲れ果ててしまい、その結果、どうしてもその行動から逃げてしまうのです。


「ああ、だめじゃだめじゃ、おばあさんがあんなにがんばっておるのに、わしがこんなことでは!」

 

 おじいさんは拳を畳にぶつけてきりりと歯を噛み締めました。


「よし、わしが今度こそ太郎を説得する! 鬼ヶ島へ鬼退治に行く気にさせてみせる!」


 おじいさん、すごい決意をしたようです。

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