第78話 保存食
「さて、すぐに食べるお団子は2、3日柔らかく食べられるように作るとして、問題はそれより先に食べる分です。しばらく持ち運びしても大丈夫なお団子にしないとね」
って、そんなもん開発するより太郎の説得が先だと何回言えば……
「どうする気だい?」
「物が腐らないようにするには、干して水分を抜くのがいいと思います」
「ああ、干物かい?」
「そういう感じですね」
「でも、団子の干物ってのはなあ」
おじいさんが想像して顔をしかめます。
カチカチになったお餅を想像しているようです。
「そうならないように考えようと思ってるんです。食べる時にお湯かお水に入れて戻すと元のお団子のようにおいしく食べられるように」
「そんなものができるのかい?」
「ええ、そういうお米があるんですよ。山登りの時に持っていくようなお米です」
「アルファ米」をご存知でしょうか。
炊きあがったご飯から水分を抜いて、食べる時にはお湯やお水を足して戻すと元のご飯として食べられるように加工したご飯です。軽くて常温で長期保存ができるので、日本人の登山家がヒマラヤやエベレストに登る時にこのご飯を持っていったりしています。
どうして「アルファ米」と言うかと言いますと、固いお米を炊いて柔らかく、糊のような状態になることを「アルファ化」と言い、炊く前の固いお米や炊いた後で固くなったご飯は「ベータ化状態」と言います。
「ベータ化」状態であったお米を炊いて柔らかいもっちりしたご飯、つまり「アルファ化」させた物をもう一度乾燥させて「ベータ化」し、水分を含ませて元の「アルファ化」した状態に戻せるお米が「アルファ米」です。
おばあさんはこの技術を使って「アルファ団子」を作ろうとしているのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます