第61話 パチパチパチパチ

 太郎の話を聞いておじいさんもおばあさんもびっくりしてしまいました。

  

 確かに太郎は赤ん坊の頃から特殊と言っていい子で、成長するに従って、それはますます顕著になり、たった5歳で頭も力も何もかも大人をしのぐ素晴らしい子どもになりました。

 そして力や頭脳だけではなく、心も優しく、見目麗しく、文字通り欠けるところ一つない子どもになりました。

 さらにおじさんとおばあさんと一緒にがんばって田畑を拓き、今では財産もたくさんあり、これ以上素晴らしい人生はないだろうと思ったのに、太郎にはその何もかもが意味がないことのようです。


「だから、やりたいことがないから、こうして座ってるしかないんだよ」

「太郎……」


 おじいさんもおばあさんも、なんと声をかけていいのか困ってしまいました。


「僕、座っててもいいよね?」

 

 そう聞かれてもおじいさんもおばあさんもなんと返事をしていいのか分かりません。


「とりあえず、今はちょっと眠くなったので寝かせてくれる?」


 そう言われてしまって、2人はすごすごと太郎の部屋から出ていくしかなくなりました。


 パチパチパチパチ


 薪が、囲炉裏の中で弾けて燃えています。

 もう季節は暖かくなってきましたが、なぜだか部屋の空気は冷たい気がします。


 おじいさんとおばあさんはじっと黙って自分たちも太郎のように、じっと座ったまま時間が経っていきました。


 パチパチパチパチ


 薪が燃える音だけが流れています。

 

 じっと座ったままおじいさんとおばあさんはその音だけを聞いていました。

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