第59話 ほわい?

「え?」


 太郎は初めての質問に驚いたようです。


「太郎や」


 おじいさんが太郎の前で正座をして、真面目な顔で続けます。


「太郎は赤ん坊の頃からとても賢く、とても強く、そしてとてもかっこいい子じゃった」

「ええ、そうでした」

 

 おばあさんも続けます。


「川に洗濯に行くと一緒に来て手伝ってくれたり、畑仕事や田んぼ造り、井戸掘り、何をやっても上手で、感心することばっかりだったねえ」

「そうだったなあ」


 またおじいさんが続けます。


「本を買ってきてもすぐに覚えてしまって、小さい頃から大人のわしらに色んなことを教えてくれるぐらいで、感激することばっかりじゃった」

「ええ、ええ、そうでしたとも」

 

 またまたおばあさんも続けます。


「開拓を始めた時、まだ小さかった太郎が人一倍がんばってくれて、あっという間に山をぐるっと田んぼや畑にできたねえ。それはそれはすごかった」

「そうだったそうだった」


 またまたまたおじいさんが続けます。


「それで『はちまき山』の話をしたら、もっともっとって楽しそうだったなあ」

「ありましたねえ」


 そんな感じで思い出が次々と湧き上がってきます。


「太郎も毎日楽しそうで、わしらもそれはそれは楽しかった」

「幸せでしたねえ」


 2人とも今度は段々と涙声になってきました。


「それが、ある日突然、寝たいと言って寝て寝て寝て寝て、起きてきたらそうしてじっと座るばかり」

「一体何が理由で寝て寝て寝て寝て、起きてそうしてじっと座っているの?」

「何があったんだい?」

「何があったの?」


 おじいさんとおばあさんが座ったまま、じりじりと太郎の方にずりよってきます。


「教えてくれんかな?」

「教えてくれない?」


 太郎は2人にそう聞かれ、しばらくはじっと座って考えていましたが、


「うん」


 どうやら話す気になったようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る