第57話 力は力
そうして訓練を続けた甲斐があったのでしょう、おじいさんもおばあさんも、すっかり元通り、とまではいかないかも知れませんが、すっかり元気元気になりました。
「太郎、ほら、見てごらん」
おばあさんが得意そうに3本重ねた薪をポキっと折ってみせました。
「また薪が折れるようになったんだよ」
「へえ、すごいね、おめでとう」
太郎は笑顔でそう言いますが、特に感激した風にも本当に感心したようにも思えません。
あくまで、おばあさんがうれしそうなので返事をした、そのぐらいです。
「おばあさんは本当にすごいなあ。太郎も一緒にがんばって訓練してみたらどうかのう」
おじいさんが横からそう言いますが、
「僕はいいよ。おじいさんが一緒にやってみたら」
というので、
「実はな、わしもおばあさんと一緒に訓練したいたんじゃよ」
と、おじいさんは薪を2本取り出すと、
「ふぬぬぬぬぬ」
と、力を入れて、やっとのことで薪がポキッと折れました。
「ほらな」
「へえ、すごいね、おめでとう」
太郎はおばあさんにしたのと同じ返事をおじいさんにもしました。
「だから、太郎も一緒にやらないか?」
「ねえ、3人でやりましょう」
「もう暖かくなってきて、川べりは涼しくて気持ちいいぞ」
「そうそう、魚釣りもできますよ」
そう言って一生懸命誘うのですが、
「いや、いいよ、やめとくよ」
太郎はそう言ってまた部屋の中でじっとするだけです。
「せっかく力が戻ったのに……」
力が戻るのと太郎が元気になるのは全く別の話だったようです。
自分たちが元気になれば、きっと太郎も自分もがんばらないとと思ってくれると思っていたのに……
おじいさんもおばあさんも、一体自分たちは何をやってきたのだろうとがっかりしてしまいました。
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