第50話 決意の初日

 翌日から、おじいさんとおばあさんは決意した通り、洗濯をしに川へ行くことにしました。


「本当に大丈夫なんですか?」

「ええ、無理しないでください」

「そうですよ、洗濯なら私たちがやりますから」


 3人の洗濯娘はお年寄りを心配する気持ち半分、自分たちが失業しないかと心配する気持ち半分でそう言いましたが、


「いやいや、全部の洗濯をするわけじゃないから」

「そうそう、ちょっとだけ持って行くから残りはお願いしましたよ」


 そう言われてホッとしながら、


「本当に気をつけてくださいよ」

「残ったらまた明日やりますから」

「そうですよ、無理しないでくださいね」


 そう言って送り出してくれました。


 おじいさんとおばあさんは洗濯を数枚持って川へと向かいましたが、


「はあはあ、川ってこんなに遠かったですかねえ……」

「ひいひい、本当じゃのう、遠いなあ……」


 太郎に負けず劣らず運動不足になっていた2人は、やっとのことで川にたどり着きました。


「はあはあ、ちょっと休もうか……」

「ひいひい、そうじゃのう、休もう……」


 今の2人の体力では、とても洗濯どころではありません。

 洗濯をするはずの大岩の上に腰をかけ、息を整えるのでせいいっぱいの有様です。


「はあはあ、もうちょっとだけ休みますか……」

「ひいひい、そうじゃのう、もうちょっとだけ……」


 2人はそう言って大岩の上に座ったまま、なかなか動けません。


「はあはあ、ちょっと寒くなってきましたね……」

「ひいひい、そうじゃのう、このままでは風邪を引きそうじゃ……」


 川まで歩いてきて汗をかいた体に、お昼で温かいとはいえ、決して暖かくない空気はとても冷たく感じられました。


「はあはあ、無理はいけませんね……」

「ひいひい、そうじゃのう……」


 というわけで、特訓初日、おじいさんとおばあさんは1枚も洗濯できないまま、やっとの思いで家まで帰ってきました。

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