第44話 力が……

 おじいさんとおばあさんは太郎に神経をつかい、気をつかう生活を続けたせいか、なんだか老けてしまったようです。


「ああっ!」

「おばあさんあぶない!」


 ある日、おばあさんは足元がよろよろしてころびかけて、やっとおじいさんが支えてケガをせずに済みました。


「ありがとうございます」

「いや、なんのこれしきだけど……」


 おじいさんはふっと心配になりました。


 だって、おばあさんはああだったでしょ?

 え、なんだって?

 思い出してくださいよ、おばあさんの特性を。


 そう、洗濯で鍛えた腕でいつの間にか怪力になっていたのですよ。

 このところはしょぼしょぼしているだけですっかり忘れている人もいるでしょうが、狼に襲われそうになった太郎を助けようとして一撃で狼を倒したことで、そんな力があることが発覚したのです。


 そんなおばあさんがよろよろになっています……


「おばあさん、このまま寝付いてしまうようなことになってはいかんぞ」

「ええ、ええ、わたしがそんなことになったら太郎はどうしますか」


 おばあさんはふん! と力を入れて立ち上がると、


「まだまだ元気ですよ、ほら、見てください!」


 そう言って薪を1本取り上げると、思いっきり、


「えい!」


 と、真っ二つに、


「いたあっ!」

「おばあさん!」


 どうしたことでしょう、これぐらいの薪、3本ぐらい簡単にポキっと折ってしまっていたおばあさんだったはず。それが1本も折ることができません。


「な、どうして……」


 おばあさんは薪を折ろうと思いっきり力を入れた手が痛くて、薪を放り出すとしびれた両手を痛そうに振っています。


「も、もう一度やってみてはどうだ? 今はちょっといきなりでたいみんぐがずれてしまったのかも」

「え、ええ、やってみます」


 そうして今度は気をつけて薪をゆっくり曲げてみましたが、薪はびくともしません。


「どうして、わたしの力が……」


 2人は形を留めたままの薪を見て呆然としてしまいました。

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