第43話 無気力
そうして太郎はなんにもしません。
「太郎や、新しい書物を買ってきてあげたよ」
「ありがとう、そこに置いといて」
おじいさんが市で買ってきた新しい本を渡しても、パラパラっと目を通して、
「これはあれだね、なんとかって本と似た内容だね」
と、目新しいこともない、という感じで二度目を読むことはありません。
「太郎や、こんなきれいな生地が手に入ったから新しい着物を作ってあげたよ」
「ありがとう、そこに置いておいて」
おばあさんが太郎のために新しい着物を作っても、一応一度手を通すものの、
「出かける用事もないし、今着てるのももったいないよね」
と、
「何かやりたいことはないのかい?」
「ありがとう、何もないよ」
「何か食べたいものはないのかい?」
「ありがとう、何もないよ」
とにかく、何をしても何を聞いても、こんな感じで何もかもに興味を失ってしまったような感じです。
「寝てるのが一番いいかな、起きても特にやりたいこともないし」
そう言って、頭が起きている時も、ごろっと寝転がって天井や壁や、たまにはうつぶせで畳の目なんかをじっと見ているだけ。
「太郎や太郎、わたしたちが何かやってあげられることはないのかい?」
おばあさんがおろおろして聞いても、
「ありがとう、こうして寝てるのが一番いいよ」
と、ご飯を食べるかいやいやお風呂に入る時、あとはお便所の時は起きてきますが、それ以外はずっとずっと寝てるか寝転んでいるかだけの生活です。
あの日、
「もう、大丈夫だってば!」
初めてそう言って声を荒らげた以外、いつものようにやさしい口調で返事だけはするものの、心ここにあらずな状態です。
「こんなことなら、いっそまた怒鳴ってくれた方がどれほど気持ちが楽なことか」
おじいさんとおばあさんがそう言って一層嘆きますが、太郎は何もやる気がなさそうです。
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