第41話 一体何太郎?

 おじいさんもおばあさんも太郎のことを信じていました。


「なあに、太郎は今、ちょっと疲れているだけさ、少し休んだらまた元の太郎に戻ってくれる」

「そうですよね、それまで少し休ませてやりましょう」


 考えてみれば、まだ歩けもしないうちから厳しいかどうかは分かりませんが、色々な訓練を重ねてきた太郎です。


「ちょっと疲れてるみたいだから寝たい」


 そう言ったまま、ほぼ寝てる日ばかりがもう4年以上になってしまいました。


「三年寝太郎を超えてものぐさ太郎になってしまったかのようだ」


 おじいさんががっくりと肩を落としてそんなことを言う。


「あれだけきちっとした子だったのに、今ではお風呂も何度か言ってやっといやいや入るだけで、このままだったら垢太郎になってしまいそうです」


 おばあさんがほおっとため息をつきながらそんなことを言う。


 考えてみたら「太郎」と呼ばれる主人公たちのなんと多いことでしょう。

 もうみなさんも忘れてる頃かも知れませんが、うちの太郎は一応本名「桃太郎」です。

 念のためにお知らせしときますね。


 さて、本名桃太郎こと、うちの太郎は力も強く、賢くて見た目もかっこいい子だったのです。


「本当に、うちの娘も太郎さんみたいな人のお嫁さんになれたら幸せでしょうに」


 そんなことを言ってくれていた町の人も村の人もいちの人も、今ではおじいさんとおばあさんを見ても、申し訳無さそうに、気の毒そうに、頭を下げてそそくさと離れてしまいます。


「もうすぐ15歳、元服というとそろそろ縁談も出てくる頃ですのにねえ」

「ほんとうになあ」


 おじいさんとおばあさんが揃ってため息をつきます。


 この5年間、太郎は一体どんな生活をしていたのでしょうか?

 そしてこの先はどうなるのでしょう?


 とりあえずちょっとばかり今まであったことをお話でもしましょうか。

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