第40話 天岩戸
「長い、長すぎる……」
太郎が自分の部屋に引きこもるようになって5年が経ちました。
あ、またすっ飛ばしたとか思ったでしょ?
違うんですよ、その間ずっとそんな感じだったので書くことがないだけです。
どんなことがあったかかいつまんで書きますが、おじいさんとおばあさんは太郎をそっと見守って、見守って、見守って、見守り続けたんですが、太郎はほとんど部屋から出なくなってしまった日々が続いた、それだけのことです。
「ちょっと、見守り過ぎたかのう……」
「ええ……」
5年間見守り続け、いつかは出てきてくれるはずと思っていたのに、太郎が出てきてくれる気配は一切ありません。
「太郎ももうすぐ15歳、元服する年になったのになあ」
「本当ですねえ」
どうしたら太郎が部屋から出てきてくれるのか、2人は頭を抱えてしまいました。
『こういう時はそっとしておくのが一番ですよ』
そんなアドバイスに従ったことを後悔しています。
「こうなったら、太郎が出てきたくなるような楽しいいべんとをやってみたらどうだろう」
「楽しいいべんとですか?」
「ああ、ちょうど季節は夏、盆踊りなんかどうかな」
「いいですね、それやりましょう!」
部屋の前とはいきませんが、家の前の庭で町の人も村の人も
「出てきてくれるまで続けるしかないかなあ」
がんばってお盆の間とその後の地蔵盆まで続けても太郎が出てくる気配はなく、諦めて片付ける頃には秋が近づいていました。
「太郎、一体どうすれば……」
本当に、どうしたの太郎、ひーろーになるんじゃなかったのかい?
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