第39話 反抗期?

「太郎や、どうしたんだい?」

「最近元気がないようだけど?」


 おじいさんとおばあさんが心配しています。


「ううん、なんでもないよ」

「体の具合が悪いのかい?」

「ううん、全然そんなことないよ」

「だったらいいんだけど、なんだか食欲もないようだし」

「もう、大丈夫だってば!」


 いきなり太郎が大きな声を出したので、おじいさんとおばあさんはびっくりしてしまいました。

 太郎を育ててこの10年の間、太郎がそんな言い方をしたことは一度もなかったからです。


 2人のびっくりした顔を見て、太郎は、


「あ、ごめんね」


 素直に謝りました。

 2人を驚かせてしまった自分に自分でもびっくりしたからです。


「いやいや、ごめんよ」

「うん、ごめんなさいね」


 おじいさんとおばあさんも急いで謝りました。


「ちょっとしつこく言い過ぎたかもなあ」

「本当に」

「ううん、僕の方こそ大きな声を出してごめんね」


 空気、ちょっとほのぼの。


「でも、本当、ちょっと疲れてるのかも知れないから、僕、ちょっと寝てくるね」

「大丈夫かい?」

「おかしいと思ったらお医者に行かないといけないよ」

「うん、大丈夫、ちょっと休めばよくなるよ」

 

 おじいさんとおばあさんは心配しながら太郎が部屋へ戻るのを見守りました。


「考えてみたら、今まで風邪ひとつひいたことのない子でしたよねえ……」

「そうだったなあ……」

「もしかしたら反抗期かなあ」

「反抗期ですか」


 ご近所の子が反抗期だという話は今までも聞いたことはあります。

 ですが、まさかあの太郎がそんなことになるとは想像もしていなかったのです。


「今はそっと見守るしかないかのう」

「そうですねえ」


 おじいさんとおばさんはそう言って太郎を静かに見守るようになりましたが、その日以来、太郎は自分の部屋に引きこもり、あまり表に出てこなくなってしまいました。

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