第38話 行き止まり
そうして、ちょっとした資産家になった太郎一家、耕作地の小作人なども雇って、ちょっとばかり優雅な生活をおくれています。
「本当にあの法律で助けられましたねえ、おじいさん」
「本当になあ」
今では洗濯は新しく掘った井戸で使用人がしてくれます。
おじいさんがちょっとした趣味として山へイノシシ狩りや川へ魚釣りになど行くことがありますが、ヤギや鶏、牛も飼うようになり、動物性タンパク質にも不自由しなくなりました。
「幸せですねえ」
「ほんに幸せだねえ」
そんなこんなでゆっくりと時は流れ、太郎は何不自由なく育って10歳になりました。
日々の筋トレや勉強を続け、なかなかに素敵なダンスィに育っています。
お友達も多く、ご近所の大人たちからも好かれて、何一つ文句のない10歳の男の子。
「ほんに太郎さんは言うことのないお子さんじゃ」
「強くて優しくて、頭もいい、見た目もかっこいい」
「どうしたらあんな子に育つのかねえ」
「ほんにほんに」
あっち行ってもこっち行ってもちやほやされて、太郎も行く先々で得意顔。
まるで太陽のようにきらっきら輝く少年に育っていきました。
――途中までは――
ある時、太郎はふっと気がついてしまったのです。
「僕、これから先、何をすればいいんだろう?」
貧しくともおじいさんおばあさんと3人で暮らしていた時は本当に幸せでした。
「太郎は将来立派なひーろーになるんだよ」
「一生懸命とれーにんぐと勉強をして、立派になるんだよ」
「うんわかった!」
素直にそう答えていた頃はどれほど幸せだったことか。
「僕、もう立派になってしまったよ、一体この先、何を目標にすればいいんだろう」
何不自由ない生活の中、太郎はそんなことを考えるようになってしまっていました。
なんだかまるで行き止まりに突き当たってしまったような、そんな気持ちに。
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