第32話 太郎の乳母

 なんにしろ、太郎は大きく成長してきて、食べる量も増えてきました。成長期です。


「おじいさん、太郎にもっとおいしいものを食べさせてやりたいから畑を広げましょうか」

「そうだな、わしももっとイノシシやヤマドリ、魚なんかをとってきてやりたいが、その前に畑を広げておこうか」

「そうしましょう」


 と、おじいさんとおばあさんは家の周囲を開拓して畑を広げることにしました。

 

 これまでは2人きりの生活で、しかも年をとるにしたがって食べる量も減っていたのですが、太郎はヤギのお乳を卒業して離乳食になり、今では大人と同じ物をなんでも食べるようになっています。


「そうそう、その前に、長い間ご苦労さんでしたね」


 おじいさんとおばあさんはそう言って、長い間太郎の乳母だったヤギをつぶして肉にして、今度は本体を太郎の栄養にすることにしました。

 ヤギの寿命は10年から15年ぐらい、そしてお乳が出る時期も10歳ぐらいまで。このヤギはおっぱいがいっぱい出る頃におじいさんが猪肉と交換してきたヤギですが、お乳はとっくに出なくなっていて、家の周囲の雑草処理係として細々と暮らしていました。


「畑を広げたら作物を食べてしまう可能性も出てくるし、そろそろ決断しよう」


 と、いうことで、ヤギの焼肉、ヤギのジャーキーなんかとして第二の人生ならぬヤギ生を全うしてくれました。


 太郎の体のかなりの部分がこのヤギさんのおかげでできていると言っても過言ではないぐらい、乳母として、そして食料として活躍してくれたヤギさんに拍手を!


 めえ~

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