第23話 負荷

 そして太郎は毎日毎日、おもりを付けた腕を、


「だああ」


 と、楽しそうに振り回して遊んでいますが、おばあさんが気がついてしまいました。


「おじいさん……」

「どうした?」


 深刻そうなおばあさんに、おじいさんが心配そうに答えます。


「この訓練、効き目があるんでしょうかね」

「え?」

「太郎の、腕の輪っかですよ」

「え?」


 おじいさんが言われて太郎を見てみると、


「だあああああ」


 うれしそうに振り回してはいますが……


「重く、感じてはおらんよう、じゃのう」

「ええ……」


 例の胡散臭そうな本には、


「ちょっと重く感じるぐらいの負荷をかけるべし」


 と、書いてあったのですが、どう見ても太郎には例のおもりが負荷になっていないようなのです。


「太郎やちょっと貸してごらん」

「だあ!」


 おじいさんが手にしてみたら、ちょっとばかりずっしりと沈み込むぐらいの負荷を感じます。


「考えてみたら、太郎もあの薪を3本折っておったよなあ……」

「ええ……」


 そこでおじいさんとおばあさんは、どのぐらいの負荷が太郎に一番いいのかを調べることにしました。

 ってか、赤ん坊だって前提はもう完全に関係ないんだから、訓練を始める前に調べておけよ、と言いたいところですが、まあ二人共色んな意味で初心者なので仕方ないかも知れませんね。


「太郎やちょっとここに座ってごらん」

「だあ!」


 柱にもたれるように座らせた太郎に、


「これを持ってごらん」

 

 と、まずはあの鉄の輪っかを持たせたところ、もちろん軽々と持ち上げて振り回します。


「じゃあこれはどうかな」

「だあ!」


 あれは、これは、とどんどん重い物を渡していきますが、どれもこれも、


「だあ!」


 の一言で楽しそうに振り回す始末です。


「太郎の手で持てそうなもので、ケガをしなさそうな物は、もうこの家にはないぞ……」

「ええ……」


 思わぬところに落とし穴があったものです。

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