第18話 思いっきり!

「力が強いからってギュッとしても大丈夫とは限りませんよ?」

「うむ、でも可能性は高い。おばあさん、ちょっとだけ弱くギュッとしてみたらどうだろう」

「弱く、ですか?」

「うむ」


 おばあさんはしばらくじっと太郎を見ていた。

 

「なんて柔らかいほっぺ、なんてぷくぷくのお手々、こんなに柔らかそうなのに……」


 見た目だけから判断すると、今のおばあさんがギュッとしたらぺしゃんこになってしまいそう。


「そっと、そっとやってみなさい」

「ええ……」


 おばあさんがそっとそっと太郎を抱き上げると、


「だあ」


 太郎がうれしそうに笑いました。


「もう、太郎ったら!」


 思わず力いっぱい――


「すとーーーーーーっぷ!」


 おじいさんがギリギリ寸止め!


「はっ、わたしったら!」


 おばあさんが、思い切り太郎を抱きしめようとした手をゆるめました。


「ふう、危なかった……」


 おじいさんが額のびっしょりかいた汗を拭いて、大きくため息をつきました。


「そっとじゃよ、そっと」

「はい、そっと」


 そっとそっと。

 もしかしたら、それでも他の人の何倍、何十倍の力だったかも知れませんが、おばあさんはできるだけ柔らかく太郎をギュッとしてみました。


「きゃっきゃきゃっきゃ」


 太郎は笑っているだけです。


「もうちょっとだけ」


 もう少し力を入れてギュッとしてみました。


「きゃっきゃきゃっきゃ」


 太郎は苦しがるどころか、おばあさんの体温を感じてか、もっともっとうれしそうに笑います。


「もうちょっと」

「きゃっきゃきゃっきゃ」

「もうちょっとだけ」

「きゃっきゃきゃっきゃ」

 

 そうして、最終的にはおばあさんは、


「たろうおおおおおおお!」


 思いっきりギュッとしてみましたが、


「きゃっきゃっきゃー!」


 太郎は大喜びするだけで、全然つぶれる気配はありませんでした。

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