第3話 大きな桃のカット方法

「さあさあ、桃が転がらないように押さえててくださいよ」

「あいよ」


 桃の汁が流れて汚れないように、まな板の下に古い布を敷き、桃の下にも桃が転がらないように手ぬぐいを敷いて、いざカット!


「えいっ!」


 相手は桃です。

 結構柔らかいのです。

 おばあさんがそんなに力を入れなくても、研ぎたての包丁はするすると下まで下りていき……


「そうなんだけど、何しろ幅がねえ」

 

 そう、包丁の幅より桃の幅が圧倒的に分厚い。


「手前に引いたらどうだい?」

「そうしますか」


 おばあさんは真下に下ろしていた包丁の角度を変え、手前に引っ張るようにして上の方に浅く切れ目を入れる方法を取ることにしました。


「そこから横に切ったらいいんじゃないかな」

「そうしますか」


 一度包丁を引き抜き、今度はそのあたりを横からスライスしてみます。


「取れた」


 おばあさんの手の上に、おそらく普通の桃の2つ分ぐらいの大きさの桃の塊が乗っています。


「とりあえず味見してみますか」


 桃って、いくらおいしそうに見えてもすごく水っぽくって味がない時がありますからね。

 もしもそんな桃だったら、コンポートにするとかなんとか、ひと手間加えておいしくしないと食べられません。


「はい、どうぞ」


 ちょうど一口ぐらいに切った桃を一切れおじいさんの口に、ほいっと。


「どれどれ……ううむ、これはうまい!」

「それはよかったですね」


 普通の桃だったら真ん中に種があり、皮を剥くのも面倒だったりしますが、何しろ相手は巨大桃、そんなことを気にせずに、甘い実の部分だけをたっぷりいただける。なんて素晴らしい!



 切っても切ってもずっと桃、種までなかなか行き着かない。

 そしておじいさんとおばあさんと言っても、胃腸はまだまだ丈夫でいくらでも食べられる。

 おいしい桃を、甘い実を、たっぷりとデザートにいただきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る