ゼダの紋章 なぜなに質問箱 Part3 風俗慣習編
女皇アリョーネ(以下、女皇)「ちょっとマテい。なんで風俗編にアタシが」
ルイス・ラファール(以下、紋章)「それってアタシも言いたいデス」
ミィ・リッテ(以下、女狐)「うわぁ、キツいなこのメンツ」
トリエル・シェンバッハ(以下、皇弟)「間違えてこんな店に入ったら間違いなくボッタくられるわ。ガチのぼったくりキャバレーだな」
女皇「なんかゆーたか、テリーっ」
紋章「ちっさいおじさんは客設定かいっ」
女狐「美女三人並んでるんだからもちょっと有り難くしてくださいよ」
皇弟「実の姉と甥っ子の嫁サンと仲人でもしてやろうかっていう小娘が三人なんだけどな。で、俺が進行役ってか?」
女狐「ありっ、ポケットにカンペらしきものが。なになに実験セカイ内の風俗と慣習なんかを簡潔に話してね。間違っても不良中年のテリーに風俗店についての話をさせたらダメですって・・・けんおーへいか師匠(ディーン)だなこりゃ」
皇弟「早い話がエウロペアと現実世界の違いと生活文化面についての話ってか」
紋章「あー、違いはありますね。なにしろ、女皇国はまず女系相続が基本であって男性皇族は“殿下”とは言われるけれど、基本的に皇位継承権はない。つまり、ちっさいおじさんの権力もカリスマも女皇騎士団副司令大佐以上でも以下でもありませんな」
女皇「うん、お姉ちゃんの事故(アラウネ事件)のあとも他に選択肢なくて皇太子皇女がアタシにあっさり決まった。タリアも居たけど妨げにしないためにわざわざサイフィール侯爵家に入っていた。大体、テリーに国なんか任せてみなさいよ。それこそ、東征だのメルヒン侵攻だとかやっちゃうから。“余の辞書に不可能の文字はない”とかほざいて滅茶苦茶にされるから」
皇弟「くっ、あながち間違ってないからムカつくけど事実だわ。せめて日本語で読み上げると“こうてい”扱いされてるのはご愁傷様という意味かよっ」
女狐「フェリオと外縁国家群に関してはそうではないようですけれどね。フェリオ連邦王に関しては選王侯爵家が合議で決めますし、基本は男性ですね」
女皇「そうよね。常時王族の居る国家でも基本は男系相続。ゼダと日本、ササンラントとイーンカだけ特例的に女系相続なのよ。なんでだろって思うけど、ネームドは真史でも偽典史でも隣り合う大国同士は男女指導者の組み合わせね」
女狐「それですよきっと。日本とセナは天ツ皇と大皇帝とが男女の組み合わせで最高指導者同士がカップリングされてきたりもしたので、本格的な武力衝突なんて殆ど起きていません。なんかあったら大国の最高指導者同士が夫婦になっちゃったそうです。主戦強硬派はぐうの音も出なかったとか」
紋章「ゼダとフェリオも基本はそうだし、剣皇アルフレッドが高貴とされたのもゼダ皇族の皇子だし、次期フェリオン侯爵家の跡取りだったわ」
皇弟「イーンカとアステイカもそうらしいし、ササンラントとヒンディラもな。あっ、ちなみにイーンカは南米でアステイカは中米。ササンラントが中東でヒンディラは・・・まぁお察しの通りね。基本的に女系相続国家については巫女の託宣を国家方針の中枢にしていた。ユラシア中部に位置して広大なササンラントは女性上位の社会であり、男たちは女性たちを大切に保護しなさいと・・・ってコレもメロウの仕掛けた実証実験のカラクリかっ」
女皇「そうでしょうね。現実世界ではイスラム圏では女性たちが権利も修学も制限されてきたので、その逆を試した。女神イシュタール・バクダルを地域繁栄の礎にしていたせいで、ササンラントは繁栄の女神たちこそが自分たちにとっての預言者なのだと信じてきたのね。エウロペアとは現在のところ文化交流がないわ。なのにイシュタール・タリエル准将が女神に由来した名を持つ男性かは謎だけどね」
皇弟「なんかさぁ、ヨーロッパがあちこちに武力介入や強制改宗しないと何処も平和なんだねぇ。改宗ったってファーバの教義が基本的には其処の地域の慣習と結びついているだけなので、世界中でファーバの教えが下地になってて宗教戦争なんて起こりようがない。メロウもよく考えたもんだわ」
女狐「エウロペアも実はってことかも。ナカリアはもともと中東系の国家ですよ。メルヒンだって半分は染まっている。白人種と有色人種が混合してますので、アタシらは中東系。ベルレーヌ大佐だって彫りの深いイケメンですので見た感じは白人だけど、中身は混ざってますね」
紋章「アタシに至っては英仏混合。もとが英仏百年戦争の女勇者だし、英仏が混合しているからフランスには歴史上居たことがない女王(女皇)が両国を併せた大国の代表になっている。ゼダも実は多人種国家なんでしょうね。パトリック・リーナ様やアラン・モナースさんたちだって現実世界の人種的にはユダヤ人だし、ディーンもゲルマン系だけどユダヤ人種が混じってる。ライザー父さんがユダヤ人系だからね。そんな人がホロコーストなんてするわけないわね。真っ先に自分や父親が強制収容所送りになるもの」
皇弟「俺も女皇家の人間なのにラテン系の気質だもんな。ケセラセラってなもんで」
女皇「そもそも旧女皇家がマルゴー由来のラテン系なのだものね。対して新女皇家はアルフレッド、ファーンから続くゲルマン系・・・ってハっ。コレってばマズいかも」
皇弟「どったの姉ちゃん?」
女皇「だってそうでしょ。両親ともに同じならテリーとアタシ、姉さん(アラウネ)、タリアだって似てる筈なのに似てないし」
皇弟「うげっ、タリア姉さんとその子だという紫苑は性格的にラテン系。アラウネ姉さんは生真面目で厳格なアングロ・サクソン系でしたわ。そして、アリョーネ姉さんはアングロ・サクソン系とゲルマン気質が混ざってる。ヤンキー体質というのもマサカとは思うけど・・・」
紋章「でも素性はどうあれ、アタシが王様と言ったら王様なのですね。そして、アリョーネ陛下はまさに民衆を導く自由の女神です。王様の中の王様。だからその全権代理人のアタシは戦士たちを導く勝利の女神ということ」
女狐「うわぁ、トドメ刺したかもですよ。ししょー」
(トリエルとアリョーネが顔を見合わせて青くなっている)
紋章「話の根幹に触れたのかもね。もし父親が全員違ってたらとかね。ちなみに姉妹とちっさいおじさんはメロウィンの産んだ子で間違いはないです。姉妹は一人違いますけれどね」
女皇「どういう意味よっ。それにルイスっ、なんで母さんには敬称つけないのよっ?」
紋章「それは秘密です。ちなみにディーンの祖母とも認めてないです。でもその話はディーンにも一生黙ってます。間違いなく悩んじゃうから。基本的にディーンはエクセイル家の気質として自分の足許を確認するのが最後になる。察しのいいメリエルは気づいたかも」
皇弟「やっぱこえー。だから、あれほどルイスを紋章騎士にするのはやめようって言ってたのに」
女皇「確かに軽率だったかも知れないけれど、サーシャ様の想いを知るアタシは・・・」
紋章「それでいいんですって。ごんぶとのアタシの素性だってそりゃ最強騎士だわとなりますけれど、そんなのは勝った後でじっくり考える事ですしね。そもそもティルトはじぶんちの関わる事に関してはロクに調べもしない。双子のお姉ちゃんのダンナさんが誰なのかだとか、伯母さんの嫁ぎ先だとか知ってるので調べない。まぁ、従兄姉のシモーヌ(創世神話編登場予定)はお兄ちゃん(シモン大佐)の後裔だとは気づいてますけどね。それ創世神話編の伏線なので黙ってます」
皇弟「ん?婿入り前のティルトがなんでエクセイル気質なんだ」
紋章「ライザー父さんの子供は4人いたという話です。ディーン、セリーナ、セオドリック、ピエール。前の二人はアローラ母さんが、後の二人はメリッサおばさまが産んだ。ディーンの子はアタシとの間に、セリーナの子はナダルとの間に、セオドリックはこれから分かります。ピエールの子孫たちに関してはエクセイル宗家の予備だったという話(Part1参照)です。ディーンとピエールの後裔たちはゼダに。セリーナとナダルの後裔たちは新興のステイツ(合衆国)に。セオドリックの後裔たちタッスルフォート家はベリアにですね。そしてティルトのお父さんの素性は謎のまま。けれど、幾星霜を経て血のルーツのもとに帰ってくる。ヴァスイムがそうだったようにです」
皇弟「セリーナってヤッパリかいな・・・話題変えよう。人種に関してはごちゃ混ぜされてて、再現セカイ内の国家的事情は共食いという同族間の深刻な闘争回避のためにメロウが予防線を張った。他に風俗ねぇ?」
女皇「じゃ、紋章騎士ルイスへの仕返し。貴方は本当はルイス・ラファールではなかった。皇分家名跡は結婚後も残ります。だから、ルカ・クレンティエンの夫であるエーベルはエーベル・クライン・クレンティエンになった」
皇弟「ああそれね。C.C.はそうだし、実はエイブ少将とお前と兄貴もって話だな」
紋章「でも、皇分家よりも家格が上だとそっちが優先される。ディーンとの入籍に伴い、ルイス・エクセイル公爵夫人。それが私の正式な名です。単に通りが良いのでルイス・ラファールを自称してますが、その話に関しては作者が後日譚のエピソードで用意しています。アタシはしらんふり。そもそも女皇戦争終結と革命後にあったメリエルの女皇退任で、残っていた爵位も自動的に消滅しました。エクセイル公爵家やヴェローム公爵家も爵位がなくなりましたわね。ついでに先皇陛下のご身分も」
女皇「むきぃー、コイツ手強い。伊達にオードリーの長女じゃなかった」
皇弟「だーから、紋章騎士にするのはやめようって」
女狐「ルイスししょーは史上最強騎士かつインテリなの忘れてましたか?なにしろ、文武両道の《鉄舟》サンの直弟子ですよ」
紋章「えっ、そうなの?あの細髭枢機卿で泣き言ばかり言ってる宗教戦争バカがアタシの師匠だったセプテムおじさま?」
皇弟「そうだった・・・。ルイスは誰でも知っている事情は知らないとほざくのに、余計なことというか機密事項は正確に知ってるという矛盾のカタマリだった」
女皇「人選間違えた・・・」
女狐「まぁまぁ。でも、《鉄舟》サンの弟子たちは重要局面でそれぞれ活躍しますってば。《鉄舟》サン自身も韜晦してますけど」
紋章「風俗っていえば今アタシたち何語で話してるんでしょ?」
女狐「一番アタマの良くないあたしに合わせてベリア語ですね」
紋章「大学でベリア語は書く方の文法まで習ってたから。それに同窓生の女友達にメルヒンからの留学生も居たからベリア語は堪能かも。フェリオ語もハメルとかオランドの友達も居たんで日常会話くらいならね」
皇弟「何気にルイスは高学歴だものな。休学中とはいえエルシニエの大学生だし」
女皇「あたしとトリエルは国家要人なんだものね。自国語とベリア語、フェリオ語の共通語(外交で用いられるメルヒン王国とフェリオ連邦フェリオン候領で使われる基礎言語)は当然の嗜みですわね。劇中で用いられる言語で知らないのはルーシア語だけですわ」
皇弟「ルーシアは国自体があってないことにされてる設定だからね。知りようもないわさ」
女狐「あたしは残念ながらベリア語でナカリアの方言ってところかな。最近はフリオからフェリオ語を習ってるけどね」
紋章「弟子どもは仇同士の割には仲良し・・・」
女狐「だって罵り合うにしてもナカリアの方言とフェリオ語のアストリア方言だと通じ合わないしぃ!」
皇弟「ほんでて覚醒騎士同士なんで意味は通じてるんで嘘教えてても即バレするわな」
紋章「女狐が自分のことをアストリア方言で“隠れビッチ”とか言ってたら笑うんだけどなぁ」
女狐「なんか言いましたか師匠ぉ」
(ミィがルイスの膝を思い切りツネる)
紋章「こんにゃろっ、女狐の分際で」
(ルイスとミィのどつき合い開始)
皇弟「なんかルイスの性格が段々と悪くなっている気がする・・・」
女皇「メリエルに染まりつつあるんでしょうね。はぁ、トワントが言い出したことなので、いちお私はシーナを差し置いてメリエルを後継女皇とか考えましたけれど、人選間違えたのかもと思ってたりしますわ。姉さんの気苦労がわかるわぁ」
皇弟「特定の子に愛情を注ぎ過ぎるとエライことになるってのは、俺とジョセフィンも思ってることだけどね。ウチも長男が自殺願望者で、エドナに頼んで修正してるけど、アイツの死にたがりも分からなくはない。さすがに消えた《黒髪の冥王》のかわりというのはちょっとね」
女皇「冥王は消えてませんけどね。解脱者ラプラス(ライザー)が宿命の書き換えした結果として、代理が担ぎ出された。トゥドゥールが可哀想な子だというのは、甥っ子として私も思うところが大きい・・・って“取り替え子作戦”についてなんでテリーが知ってるのよ?」
皇弟「一応、第3幕終了時点ってことなんだけれど、実は第4幕の番外編でライザー義兄さんから真相は聞かされているので。でも本人に言うつもりもない」
女皇「テリーも苦労人なんだねぇ」
皇弟「いちばん苦労させてる姉さんがゆーなっ!」
(第3回はやはり無事ではすまなかった・・・)
オマケ 名手サンたちの捕捉
ビルビット・ミラー少佐(以下、ビリー)「はぁ、先輩(トリエル)やへーかたちに任せたりするから」
イアン・フューリー少佐(以下、イアン)「風俗慣習なのに“手合い”と“エキュイム”の話をしてない」
ビリー「まぁ、騎士手合いに関しては散々出てきてますし、スポーツがまだ未成熟なので娯楽は騎士たちの訓練である“手合い”ですけどね。まあマルガ競技場みたいに広い施設はまだないというか、ないまま真戦兵が消える。二足歩行の巨人兵器をすいすい動かせる人が急激に居なくなり、多脚歩行戦車とか航空機の時代になっちゃいます。そのあたりは“黒き森の鎮魂歌”でのトゥルーパーたちを考えると想像出来ますけれどね。飛空戦艦は洋上艦艇と同様に残っていきますからイアン提督としてはちょっと嬉しいんじゃ?」
イアン「いや、いっそなくなって欲しかったわ。女皇戦争後の俺は散々だったからね。そのせいもあってちょっとボケちゃった。ほんでもって“エキュイム”ね。さて名手ビリーの面目躍如ってことで説明いってみよぅ」
ビリー「エキュイムに関しては基本ルールはチェスですね。ただチェスより盤面が広い。駒に関してもキング、クイーン、ビショップ、ナイト、ルーク、ポーンってとこですな。ただし違うのは将棋のルールも混ざってるとこ。相手の駒を取るとこっちの駒として使えます」
イアン「うんうん。盤面はわかりやすいよう格子模様だけど、駒に関しては黒と白とで色分けされてません。取ったときに色が違ってたら盤上に置いたときによくわかんなくなるので。立体的な木製の駒を使います。形が明らかに違うのがポーン」
ビリー「そんなわけでチェスよりも複雑です。キングが詰んだら負けというのは変わりないですけど、劣勢になると盤面が敵の駒ばかりになる」
イアン「現実の戦争と同じでシビアだよなぁ」
ビリー「チェスと違い“駒落とし”、“駒増し”(相手の落とした駒をハンデを与えられた側が配置する)というハンデ戦が出来るのも、最初の駒の数はチェスと同じ計32個ですが、ポーンと他の駒は間に1列入ります。盤面が8×8でなく、横10×縦12なのですね。そして駒自体はチェスですがポーンは前に1歩しか進めませんし、チェスにある駒の特殊ルールも少ない。将棋の“二歩”に相当する同列へのポーン配置は出来ません。そして両サイドの2列に最初の駒配置がない。この空列をいかに使うかが腕のみせどころですし、“駒増し”されたらその列に置くとなってます。またポーンは頑張って敵陣(自陣からみて奥側3列)に入ると逆さまにしてキングと同じく八方向に1歩動けるようになります。成ったポーンはポーンでなくなるので同列にポーンを置けます。ルールとしては将棋の“と金”と似てますが“金”でなくキングと同じというのが違います。またいきなりは敵陣に置けません。空いた列にある敵陣の一歩出前に置くというのが定石ですね」
イアン「ポーンの使い処が勝負の鍵を握り、他の駒には“成る”というのがないのがミソかな。実際にやってみっか?」
ビリー「最初の勝負がまだ決着してないの忘れてます?それと読者に伝わらないですって」
イアン「そっか残念」
ビリー「そんなわけで捕捉は以上です」
イアン「なんだかんだでお前とディーンの出番が多い気がする」
ビリー「次回は“エドナ”として出ます」
(第3回も無事終了)
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