第28話 ダンジョンの闇 ガイア1817年2月16日〜
ひと月程、鉛のインゴット作りをしたので、次は6層の黄銅鉱を採掘しに行くことにした。
6層にはホブゴブリンに
ボス部屋はトーマスとジャックが手伝ってくれるというので、彼らの都合の良い日に行く事にした。ソロでも大丈夫だとは思ったが、せっかく手伝ってくれるというので甘えることにして、今回は採掘だけしに行く。
そして、今日もナンシーが付いて来た。屋敷を出る時、ジャックが絶望した顔で見送ってくれた。
俺は日本刀を腰に佩き、出来るだけ開幕の魔法で戦闘を終わらせ採掘場所へ向かう。黄銅鉱は方鉛鉱より魔力が通りやすく、より見つけ易く採掘がはかどった。
10日程採掘に通うと、トーマスとジャックの予定が空いたのでボス部屋に行くことにした。
ボス部屋を通過して7層の中級薬草、8層の亜鉛を取りに行く為だ。
『ヒロさん、なんでいつもナンシーさんと二人でダンジョンに行くんですか?僕も一緒に行きたいのに!』
『いや、毎回、声を掛けてるだろ?でも、お前が仕事や先約が有るからって来なかったじゃないか』
『でも、僕は……僕は……』
『ジャック君、今日は存分に楽しみましょうね』
『はい!ナンシーさん!』
(おぉ!急に機嫌がよくなってハートが乱舞してるよ。)
『6層のボスはスミロドンキングとスミロドン3体だ。さっさと倒して7層に行くぞ。7層は中級薬草の採集地を確認したら、すぐにボス部屋に行くか。7層のモンスターはポイズンスパイダーにキラービー、そしてキャタピラーだ。7層のボスは
『おう』
『8層のボスは
『まずい?なにか問題が有るの?』
『あぁ、下手に9層でうろちょろしてると逮捕されてしまうし、幻覚バタフライに出会ったら悲惨な目に合うからな』
『逮捕される?9層に居るだけで?』
『9層には幻覚キノコが生えているんだ。これの胞子を浴びると幻覚を見てしまって同士討ちをしてしまう』
『同士討ち……』
『まだ、それは良いんだ。問題は幻覚キノコを錬金すると幻覚薬が出来るんだ。これを飲むと桃源郷に行けるって一時期流行ったんだよ。ただ、依存性が非常に高くてな、一回でも使うと人生終わりだと言われている。しかもそれを自分のものにしたい異性に飲ませる奴が出て来てな。飲ませると飲ませた相手の言う事を聞くようになるんだとよ。自分の言う事を聞いてくれるのではなく、薬をくれる人の言う事を聞いているだけなのにな。そういう訳で9層の自生地はギルドによって封鎖されている。でも、幻覚バタフライが封鎖されている所から時々逃げ出してきて、冒険者に幻覚キノコの胞子を浴びせるんだ。それを狙ってやってくる裏家業の奴らが絶えないので、9層でうろちょろしてると捕まるのさ』
『ケンの方で対策は取れないの?』
『新しく作る層はダンジョンマスターの権限で色々出来るそうなんだが、すでに出来ていた層はダメだったらしい。以前から試しているらしいがな』
6層のボスはスミドロンキングとスミドロン3匹だった。キングは体長3m体高1.6m。後ろ足で立ち上がるとトーマスよりデカかった。連続猫パンチから抑え込むように噛み付いてきたが、40㎝近くある牙をトーマスが剣を横薙ぎに払って叩き折り、勝負は決した。
7層に行くと、そこは草原だった。空も高く爽やかな風が吹いている。そして、地面にはいろんな色の花が咲き、良い匂いがする。
『え?ここはダンジョンの中だよな?なんで天井が無いんだ?』
『天井は有るぞ。空に見えるだけで実際には見えない壁が有るんだ。疑うんなら真上に向かって矢を放ってみろ』
トーマスに言われるがまま、真上に向かって矢を放ってみた。すると10mほど上空で何かにぶつかり矢が落ちてきた。
『本当に見えない壁があるんだな。ということは、この地平線まで続く草原も実際は途中に見えない壁が有って、その先は幻なのか?』
『お!良く分かったな。ダンジョン自体の広さは他の階層と変わらないらしいぞ。でも、見た目だけじゃなく、さっきも言ったがこの7層は今までと出るモンスターがガラッと変わる。ポイズンスパイダーにキラービー、キャタピラーだ。全部虫系のモンスターだな。ナンシーは虫は大丈夫か?』
『大丈夫ですよ。黒いあいつじゃなきゃ……』
『そっか、あいつはここじゃ出ないから大丈夫だな。
で、取れる素材だが、ポイズンスパイダーにキラービーは違う種類の毒が取れる。キャタピラーは糸だ。どいつも攻撃に使ってくるから、倒すのに時間が掛かると獲れる量が減るからな』
『それは困るな。せっかく倒したのに素材が何も残ってないっていうのは……速攻勝負だな』
『ヒロ様、ここのお花は王都に持っていくと良い金額になりますよ。アイテムボックス持ちの冒険者の良い小遣い稼ぎになってます』
『へぇ、どんな錬金レシピが有るの?』
『そんなの無いですよ。お花がきれいで、このダンジョンでしか手に入らないから売れるのですよ。プロポーズするときに彼女の好きな色の花を集めて、自分で採ってきたって言うとポイント高いそうですよ』
(良い匂いがするから、香水作ったら売れるかも。あれ?この世界に香水は無いのかな?いや、職員さんや受付の人で良い匂いの人が居るから香水有るよね?それよりも、毒が2種類か。解毒薬がより高性能に出来るな。糸はなにに使うんだろう?)
『ナナナナンシーさんは何色の花が好きなんですか?』
『あら、ジャック君、ありがとう。でも、私、いつも自分で採りに来てるの』
(こらこら、「だっちゅ~の」のポーズしながら言ってたら、童T君の記憶が鼻血と共に消えるぞ!)
『トーマスさんは何色の花をプレゼントしたんですか?』
『ん?ここの花はプレゼントしてないぞ』
『え?そんな。マリアさん可哀そう』
『その代わり、北の大雪山でのクエストでエーデロワイズの採取が有ったから余分に採って渡したな。白い可憐な花がマリアに似合うと思ってな』
『キャアーーーーーーーーーー!!!!!!素敵!ヒロさまぁ~、私にもお願いします!』
『大雪山ってどこなの?日本にも同じ名前の山が有るけど』
『この国の北側、領都ノードフロスの北に在る大陸一高い山です。一年中雪に覆われているのでその名前が付いてるんです。その山頂にはホワイトドラゴンが住んでいて、近付き過ぎると襲われるって云われてます』
『ドラゴンなんて居るんだ!』
『居ますよ。大雪山のホワイトドラゴン。このマウントテンプル迷宮と領都フォートマウントクロスの間にある山脈にはバルーンドラゴン。ドワーフ自治区とエルフの森の間に有る山にはブラックドラゴン。他にもダンジョンの近くの山にはドラゴンが住んでいますね』
『そうなんだ。それは怖いね』
『そんなには怖くないぞ。俺たちが無理に巣に近付かなければおとなしいから。たまに素材目的で巣に近付いて殺される冒険者が居るぐらいだ。逆になんとか逃げ帰って町に入られると、ドラゴンが追い掛けてきて町を襲ってしまうので逃げずに死んでほしいぐらいだ』
『トーマスの方がドラゴンより怖いかもな』
『まぁ、エーデロワイズの花は雪が有るか無いか、ぎりぎりのところに生えていてな。ホワイトドラゴンには襲われなかったよ』
『ホワイトドラゴンには?』
『ああ、眷属のワイバーンとかには襲われたが、返り討ちにしてやった』
『ハハハ』
『お!有ったぞ!この草が中級薬草の体力人参だ。こいつは根っこに薬効成分が有るから根っこが切れないように丁寧に採取するんだ。根っこを採るから、なかなか次が生えてこないので『
『結構高いな』
『ああ、それも一人じゃなくパーティーだからな』
『じゃあ、11人パーティーで1人1本づつ持って帰ると、罰金
『そうだ。気を付けろよ』
『じゃあ、今日は安全のためにひとり2本づつにするか』
『そうだな。その分回数通えばいいさ』
……
草原は探索魔法が使いやすい。積極的にモンスターを探し、毒を集めてると呆れられた。
『普通の冒険者は探索魔法が使えるのなら、モンスターを避けていくんだけどな……ヒロは本当に錬金が好きだな』
『地球には無い技術だから面白いんだよ』
『そっか。さて、ボスはカッターマンティスだ。さっさと終わらすぞ』
8層に上がるとまた洞窟だった。亜鉛の採掘現場を確認して少し採掘して帰った。
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毎週日曜に掲載予定です。
会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。
youtubeで朗読させてみました。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9
小説家になろうでも掲載しています。
https://ncode.syosetu.com/n3026hz/
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