第26話 魔力注入 ガイア1816年12月15日~

 小部屋から1層に戻り、冒険者ギルドに向かう。ギルドで魔石を4等分にしてもらい、残りの素材や討伐部位をギルドの買取カウンターに出す。魔石と俺の分の毒キノコ以外で合計5500ギル、金貨2枚と小金貨1枚、銀貨5枚になった。俺はファイブテールフォックス D2の魔石を貰ったので小金貨1枚、他のみんなに小金貨1枚と銀貨5枚を渡した。これでも貰いすぎだとは思ったがみんなに押し切られてしまったのだ。


 屋敷に帰り風呂に入り食事をした後、ソファーで持ち帰った魔石に魔力を注いだ。Fランクの魔石を50数個、そしてEランクの魔石を数個、虹色に染めたら意識が無くなった。叫び声と共になにか柔らかい物に包まれた気がしたがはっきりと解らなかった。

 

 朝、起きると寝巻に着替えてベッドの中に居た。なんだかいつもよりすっきりとした目覚めだった。特に腰が軽い。


 2の鐘で朝食に呼びに来たナンシーからいきなり叱られた。


『ヒロ様、あまり無理をしてはいけません。魔石に魔力を注ぎ過ぎて魔力欠乏症になり、気を失っていました』

『え?魔力欠乏症??俺が魔力欠乏症で気を失ってたの?』


 ディメンションホールやアイテムボックスを教えて貰った時に言われたことを思い出した。


(維持の為の魔力が足りないと、中に入れていた物は消えて無くなるって言ってたよな?まずい!)


 慌ててディメンションホールを開く。中を覗くとキャンピングカーがちゃんと有った。シロが嬉しそうに飛びついて来る。安堵からため息を付くとシロを抱きしめ、撫でた後ディメンションホールを閉じ、アイテムボックスを開き中身をチェックする。


『ヒロ様、私の話を聞いていますか?』


 ナンシーのお小言はまだ終わっていなかった。


『ナンシー、ディメンションホールの中身が消えてないんだけど、何故か分かる?』

『急いでマジックポーションを飲ませましたよ。ディメンションホールの中身が消えてなかったんですね。間に合って良かったです』


 維持の為の魔力が消費される前に、マジックポーションを使って魔力を回復してくれたらしい。助かった。


『メイド仲間に手伝ってもらって、どうにかベッドまでお運びしましたが、もっと、ちゃんと自分の体調に気を使ってください』


 そう言いながら頬を染めるのは、寝間着に着替えさせてくれたからか?でも、俺の下半身を見るたびに頬の赤みが増すのはなんだか怖いんですが……

 

 もしかしてすっきりと目が覚めたのは魔力が満ちたからではなく……



ナンシーside



 ヒロ様がF5の黒い魔石を10個まとめて手に握り、同時に全ての魔石に魔力を流し込んでいます。何という規格外な人なんでしょう?私の主でもあり、この世界ガイアで2番目の権力者(もちろん1番は大賢者ケン様です)でもあるエリザベート様でもこんな事はしません。


 ヒロ様はこれが終われば寝間着に着替えてご就寝されるでしょう。私は寝間着を用意して退室します。ヒロ様は着替えのお手伝いどころか、着替えるところを見られる事を好みません。ですが、初めてヒロ様の専属になった1年と1か月前とは随分と変わられました。最初は同じ部屋に居る事すら拒まれていたのです。ヒロ様が部屋にいない時に掃除をし、ベッドメイキングをし、洗濯をしていたのです。そして、それ以外は部屋の外で呼ばれるのを1日中待っていました。


 私は泣きました。何度も何度も泣きました。こんなに嫌われているのに専属で付かなければいけない事に。


 でも、違ってたのです。私達では考えられない程にヒロ様はシャイだったのです。


 エリザベート様に共通語を習われて、どんどん言葉を覚えて行くに連れ、ヒロ様は私に話し掛けてくれるようになったのです。そして私が部屋に居ても困った顔をする事が段々と減ったのです。

 今では朝ご飯の呼び出しから就寝前の準備まで、部屋に居ても嫌がらなくなりました。それに比例するように私の中でヒロ様が心の中を占めるようになって来ました。いつかヒロ様がこの屋敷を出られる事が有れば、エリザベート様に御暇乞いをしてでも付いて行きたいぐらいに……。エリザベート様は命の恩人ですから、そんな事は出来ませんが。


 ドサッ


 何かが落ちる音がしました。音の方を見るとヒロ様が床に倒れています。手からE0の虹色の魔石が床に転がっています。テーブルの上には虹色に輝くF0の魔石が多数……確か今日のダンジョン攻略でF5~2の魔石を54個づつ分けたはず。もしかしてヒロ様はそれ全部に魔力を注いだのでしょうか?やり過ぎです!間違い無く魔力欠乏症です。


 すぐにヒロ様を抱きかかえ起こそうとしましたが、私の力ではびくともしません。身体強化を使ってようやく上半身を起こし、ソファーにもたせ掛けれました。でもこれ以上は無理です。マジックポーションをヒロ様の口の中に流し込み、私は部屋を飛び出し同僚のメイド達に救援を求めました。私を入れて5人でようやくヒロ様をベッドまで運ぶことが出来ました。みんなに礼を言って帰ってもらった後、私は悩みました。このまま着替えなくてもヒロ様は怒らないでしょう。でも、着替えた方がより休めるのではないか?っと。


 私は決心をしてヒロ様の上着を脱がせ、寝間着を着せました。次は下です。実は私、男性の下着姿は父親しか見た事が無いのです。8歳の時に村が盗賊に襲われ、住民全員が皆殺しの上、20歳以下の若い女性だけが拉致されたのです。幸い1番若かった私は酷い目に合わず牢屋の中で震えていただけでした。すぐにエリザベート様率いる総本部の皆さんに助けて貰い、それ以降はマリアさん達先輩メイドの皆さんに囲まれてきたので、父親以外の男性の下着姿なんて見た事が無いのです。

 

 それがヒロ様は意識が無いとはいえ、私が男性のズボンを脱がすなんて……でも、私はヒロ様の専属メイドなんです。少しでも気持ち良く過ごして頂くには必要な事なんです。


 深呼吸をして心を落ち着けます。ベルトに手を掛けボタンを外し、チャックという不思議な金具を動かします。お尻とベッドの間にズボンが挟まって脱がし辛かったですが、なんとかやり切りました。それにしても変わった下着です。洗濯の時、何度も見てますが実際に着用してる姿を見るのは初めてです。太ももがほとんど露出してます。私たちは男性も女性もみんな膝下まであるドロワーズを着用しています。更にひざの上まである靴下を履いて足を完全に隠しているのです。(まあ、上流階級の女性の人はシュミーズだけで、下の下着は付けないらしいですが……)


 次は寝間着の下をはかせます。太ももまでは簡単でした。ここからお尻を越えなくてはいけません。先程もお尻とベッドの間で苦労しました。そのまま引っ張り上げようとしましたがやっぱり駄目でした。なんとかして隙間を作らないと駄目なようです。腰の下に左手を差し込みました。身体強化を左手に掛けて持ち上げます。すると目の前にヒロ様の下着の盛り上がりが!父親でもこんなにどアップで見た事は有りません。思わず左手を引き抜き、体ごと飛び退いてしまいました。ヒロ様の腰はそのままベッドに落ちてバウンドしています。私は慌てて腰にヒールを掛けました。私、ヒーラーで本当に良かった。今度は慎重に持ち上げてズボンをはかせることに成功しました。


 倒れた時にどこか身体をぶつけたかも知れません。全身にヒールを掛けます。特に腰に……べべべ、別に証拠隠滅では無いですよ?

 掛け布団を掛け、灯りを消し、退室しました。明日はお説教です。これは決定事項です。

 自室に戻り布団に入りましたが、目を閉じるとあの下着のどアップがチラついて中々眠れなかった事は内緒ですよ。


 

ヒロside

 


 毒キノコを使って毒薬を錬金した。そして、毒薬と薬草3種類を素材にして毒消し薬も作った。まぁ毒薬より毒消し薬の方が目的なのだが…… そして毒薬はアイテムボックスに保管した。この後、別の毒薬を作ったらそれと合わせて2種類の毒に効果のある毒消し薬が作れるそうだ。


 毒消し薬が終わったらダンジョンの5階層を目指す。麻痺薬の素材になる麻痺タケを採取するためだ。4階層はツインテールフォックスとコボルト、ゴブリンシャーマンが出てきた。ボスはトリプルテールフォックスだった。5階層はホブゴブリン、ツインテールフォックス、コボルトが出た。


 麻痺タケはお化けの九ちゃんによく似た白い歪んだボールのような形で頭に穴が開いている。日本のホコリダケによく似ている。この穴から麻痺効果のある胞子を噴き出す。これも上から革袋を被せて採取。俺の作りたい武器に使う予定なので何度も通って大量に集めた。錬金術で麻痺薬と抗麻痺薬を作った。

 後は睡眠薬が欲しいのだけど、この近くには素材が取れるドリーミングモンキーは居ないらしい。サンタローザ王国の隣国、ユマララプシ王国にあるアーブルヘイム大森林というところに居るらしい。


 睡眠薬が作れたら麻痺薬と混ぜて発煙タイプのグレネードを作るつもりだ。鎮圧には一番良いと思う。使わないのが一番だけど……


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毎週日曜に掲載予定です。


会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。


youtubeで朗読させてみました。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9


小説家になろうでも掲載しています。

https://ncode.syosetu.com/n3026hz/

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