第25話 初めてのダンジョン 後編 ガイア1816年12月15日

 投稿、お休みして申し訳ありません。 また、投稿頻度を週1回に変更させていただきます。


------

 ボス部屋を通り抜けると小部屋だった。手のひらサイズの球状の水晶が置いてあり、ギルドカードをそこに載せるように言われた。ギルドカードに魔力を流して光っている状態で水晶に載せると水晶も光った。


『これでヒロも次からは直接3層に来られるようになったな。このダンジョンだけの機能なんだが、この足元に転移魔法陣が有って入口の魔法陣から行き来出来るんだ。帰るときもここまで戻って来て、この水晶に魔力を流すと入口に戻れる。やってみるか?』


 水晶に手を置き魔力を流してみると足元から魔法陣が浮かび上がり、気が付くと入口に居た。次々とみんなが移動して来た。


『今度は同じように水晶に魔力を流したら、頭の中に行ける階層が出てくるので行きたい階層を頭の中で指定すれば飛んで行けるぞ』


 言われるままに水晶に魔力を流すと、確かに2層と頭の中にイメージが見えてきた。それを意識するとさっきの小部屋へと転移した。みんなが揃ったのでボス部屋とは反対の扉を開けると階段が有った。


 3層は2層のバンパイヤーバットの代わりにツインテールフォックスが出るらしい。


『ヒロ、ここをまっすぐ行けばボス部屋の方に行ける。右に行けばツインテールフォックスの巣が有る。うまく1匹づつ釣り出せれば美味しい狩場だ。もし、釣るのに失敗しても、ここまで逃げて来れれば狐達は巣に戻るから大丈夫だ。ただ、足が速いから追い付かれるなよ』

『懐かしいです。同じFランクの同僚と何度も来ました。毛皮が高く売れておいしんですよ。みんなDランクに上がったので最近は来てませんが』

『ナンシーさん、今度一緒にビックボアの部屋に行きませんか?いつでも付き合いますよ』

『お!ジャック、ダンジョンでデートとは!さすがもうすぐCランクと言われるだけあって余裕だな』


 トーマスが揶揄からかうとジャックが『このくそおやじ、今すぐに殺したろか』っという目でトーマスを睨む。


『良いですね!ヒロ様も一緒に行きましょう。ビッグボアのお肉って美味しいんですよ。私、腕によりを掛けてヒロ様のためにお料理しちゃいますから!』


 呆然と300万光年先を見つめるジャックの肩をトーマスがポンポンと叩いて慰めている。


(帰ってこいジャック!帰ってこないと超人ウルトラな男に成れないぞ!)

 

『で、左に行くと目的の毒キノコの採取場所だ。モンスターとの戦闘中に間違って刺激を与えると毒の胞子をまき散らすから注意しろよ。採取する時もだ。そっと袋をかぶせて採ったらすぐに口を縛るんだ。みんな先にこれを飲んでおけ。毒消し薬だ。多少の毒はこれで大丈夫だ』


 まだ、呆然としているジャックを残しトーマスは歩いていく。その後ろを付いていくナンシーのお尻を凝視しながらジャックも歩き出した。


(だから、ナンシーには視線チェッカーの……まぁ良いか、それでジャックの気持ちに気付いてもらえれば)


 トーマスの横を歩き、小声で聞いてみる。


『なぁ、トーマス、ジャック大丈夫と思うか?』

『あれぐらいの年の頃は、年上の女性に憧れるものさ。麻疹みたいなもんだよ。放っておけ』


 途中、何度か戦闘をして毒キノコの自生地に到着した。少しじめじめとした如何にもキノコが生えてそうな場所だった。


『なぁ、魔石が落ちてないか?』

『そうだ、毒キノコの毒で死んだモンスターの魔石だ。この魔石をモンスターが食べると時々進化するんだ』

『落ちている奴を食べても進化するのか!ということは、あの暗がりにある魔力の反応はその進化した狐か?』

『ん?戦闘準備!』


 みんなが武器を構える。


『ヒロ、あそこだと毒キノコの毒にやられてしまう。魔法でこっちに釣りだしてくれるか?』

『了解!この辺で良いか?それとも、もう少し後ろに下がるか?』

『下がれるなら下がった方が良いな』

『よし、この辺か?いくぞ』

「ファイアボール」


 暗がりから出てきたのは5本の尻尾を持った狐だった。体高が90㎝も有る。


ファイブテールフォックス五尾狐か!D3のモンスターだ。火・水・風・土の魔法を使うから気を付けろよ!』

『10層のボスじゃないですか!ここ、まだ3層なんですよ?何で居るんですか?』

『魔石を食べまくって進化したんだろうよ。まぁでもビックボアと同程度の強さだ。お前たちビッグボア狩りに行くんだろう?大丈夫だ』

『同程度って言っても、これ魔法を色々使うんですけどぉ。私、ファイブテールフォックスなんて初めてですよ』

『大丈夫です。ナンシーさんは僕が絶対守りますから!』

『まぁ、体力バカのビックボアより、体力は無いからさっさと倒すぞ』


 トーマスがヘイトを取ってファイブテールフォックスの頭を向こうに向けてくれる。口からファイアボールやアースボールを次々と飛ばすがトーマスは簡単に避けている。


 ファイブテールフォックスが尻尾を高々と上げるとトーマスが盾で狐の頭を殴った。


『尻尾を上げたら後方への魔法攻撃の前兆だ。尻尾の数だけ魔法が飛ぶから頭を叩いて魔法を止めるか、尻尾の向きを見て避けるか、アースウォールの陰に隠れろ』


 トーマスのお陰で誰も怪我せず、狐の体力を削り切り倒した。


『ヒロ、狐の仲間は毛皮が売れるから解体するぞ。特に尻尾は高値で売れるから丁寧にな。こいつなんて尻尾が80㎝も有るしな。ナインテールフォックス九尾狐になると尻尾だけで160㎝だ』

『もしかして……肉はやっぱり食べない?』

『あぁ、食べられないことも無いんだが匂いがな……』

『やっぱり、こっちでもそうなんだ』

 

 解体しアイテムボックスの中に入れる。周辺の魔石も拾い、毒キノコの採集をする。口と鼻をタオルで隠し、革手袋をして毒キノコに近づく。柔らかく薄い革の袋を被せ、根元から採集するとすぐに革ひもで口を縛る。用意した袋の数だけ毒キノコを採集したら終わりだ。


『俺、毒キノコの採取なんて初めてやったよ』

『ジャック、お前は戦ってばかりで薬草もろくに採った事ないだろ』

『だめですよ、ジャック君。採取も大事な冒険者のお仕事なんですから』

『……はい』


 せっかくだからという事で3層のボスも倒しに行った。ホーンボアという額に50㎝ぐらいの角の生えた体高が120㎝ぐらいの猪だった。日本に居る時に狩っていた猪の倍近くほどデカかった。しかし、トーマスは難なく盾で抑え、跳ね飛ばしていた。解体を終え、ボス部屋を通り抜けて小部屋に入った時に気になっていたことを質問した。


『ボスを倒しても宝箱って出てこないんだね』

『宝箱?そんなのが出てくるダンジョンが有るのか?』

『え?こっちの世界では宝箱って無いの?』

『聞いたことないなぁ。ジャック、聞いたことあるか?』

『いや、俺も無いよ』

『そうなんだ。俺の世界の話では、倒したボスの強さによってお金や武器防具、ポーションなんかが出て来て、ダンジョン攻略すれば伝説級の武器が貰えるって話だったんだけどね』

『ヒロ様、それ素敵です。もしそんなお宝が出てくるならもっとダンジョン攻略に熱が入りますね』

『そうだな。ダンジョンに入る目的がモンスターを倒して素材を持ち帰り売る為だからな。まぁお宝と言えるのは全滅したパーティーの装備や道具くらいか』

『あぁ、全滅したパーティーの装備をダンジョンが宝箱に入れて出して、新たな冒険者を誘っているって話もあったな』

『あんまり喜べなくなりましたぁ……』

『まぁどっちみち、このダンジョンじゃ無理して難しい階層に挑戦して全滅する冒険者は少ないからお宝も出てこないさ』

『そうですね。安全が大事ですね。ヒロ様も無理せずにちゃんと私のところまで戻ってきてくださいね』


(ジャック、いちいち石像にならなくて良いから……それにせめて視線を胸から外してから石に成れ)


------

毎週日曜に掲載予定です。


会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。


youtubeで朗読させてみました。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9


小説家になろうでも掲載しています。

https://ncode.syosetu.com/n3026hz/

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る