第24話 初めてのダンジョン 前編 ガイア1816年12月15日
申し訳ありませんが、祖母が遥か高みへと旅立とうとしているため、見送りに実家に帰ります。その為落ち着くまで更新が出来ません。
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『よう、ヒロ、今日は初めてのダンジョンだって?俺たちが付いてるから大丈夫だ』
トーマスが俺の背中を叩きながら豪快に笑う。
『痛い!ねぇ、トーマスって着てる服で性格が変わるよね?スーツの時は凄く穏やかな話し方なのに……』
『あれは猫を被ってんだよ。執事がこんなんじゃエリザベート様が笑われるからな』
『あ、ああああの、ナンシーさん、今日はよろしくお願いします』
『ジャック君、久しぶりね。ヒロ様のお世話は私に任せてね』
(ジャック……顔を真っ赤にしてそんな睨むようにナンシーの身体を見てるんじゃないよ。彼女は視線チェッカーのスキル持ちなんだぞ)
『あれ?ジャックの方が年下なの?』
『そうですよ。ジャック君は16歳だったっけ?冒険者になって1年ちょっとで、もうすぐCランクなんですよ!若手のホープですよ。私はもうすぐ20歳になるのにまだDランク……才能無いんです』
『そんな事ないですよ。ナンシーさんはお屋敷の仕事が忙しくてなかなかダンジョンに来れないだけですから』
ナンシーに褒められて茹蛸のように顔を真っ赤にしたジャックがフォローする。
(フォローする時は胸じゃなく顔を見ような……ジャック)
『今日は3層の毒キノコ採取が目標だったな。普通なら初ダンジョンで3層まで行くのは止めるんだが、ヒロなら大丈夫だろう。今日は武器は何を使うんだ?』
『あぁトーマス、ダンジョンでどんな武器を使えば良いか分からないから、アイテムボックスに全種類入れてきたよ』
『今日は俺がタンクをやって、ジャックが両手剣で削るからヒロは後方から魔法で攻撃してみるか?武器は弓で良いかな。ナンシーはヒロの横で回復頼むな』
『はい、ヒロ様の回復は任せてください』
『いや、タンクの俺が一番怪我するから俺を回復してくれよ』
『はい、ヒロ様のついでに回復します』
『ついで……まぁそれでもいいわ。そっちには1匹も行かせないから頼むわ』
ダンジョンの1層は洞窟状の迷路風通路だった。ゴブリンとスライムが出てきた。最初は1匹づつ、奥に行くにつれ、2匹、3匹と増えて行った。スライムは掃除屋らしく倒されたモンスターを食べてくれて綺麗にしてくれるらしい。このサイズなら、こちらから攻撃しなければ襲ってこないとか。
『ゴブリンしか出てこないからって油断するなよ。ゴブリンアーチャーやゴブリンシャーマンも出てくる。遠くにいるからと思っても気を抜くなよ』
この階はトーマスとジャックが全て一撃で倒したため、俺たちの出番は無かった。
2層はゴブリンが3種類とコボルト、
『コボルトはF2の割りに素早いから気を付けろよ。バンパイヤーバットは音波攻撃をしてくるから、近づかず遠距離攻撃で倒すと良い。音波攻撃を受けると
最初に出てきたのはコボルト1匹だった。
『トーマス、コボルトは初めてだから俺に任せてくれないか?』
『おう、ヒロやるか?外れたら俺がヘイト取ってやるから思いっきり行け』
右手をコボルトに向ける。
「ファイアボール」
『おい、ヒロ……今のはなんだ?ファイアボールだとは思うけど青かったぞ?』
『ファイアボールで合ってるよ、トーマス。自分で少し改良したけどね』
『少し改良してあの威力か?それになんで青いんだ?』
『青いから威力が出るんだよ。火ってね高温で燃えれば燃えるほど青白くなって透明に近付いていくんだ』
『ヒロさん、めちゃくちゃ早かった気がするんだけど?』
『こっちの人って、自分が投げるスピードでイメージしてボールを飛ばしているでしょ?地球じゃボールを投げるのが専門の人達が居て、普通の人の倍の速度で投げるんだよ。それをイメージしたらこのスピードになっちゃった』
『ヒロ様、頭が飛び散って討伐部位の右耳がどっかに行っちゃいましたよ』
『あ、ごめん……』
青いファイアボールは禁止された。
今日はそれほど硬い敵は居ないらしい。スピードは良いみたいだ。
ゴブリンシャーマンやゴブリンアーチャーが居る時は俺の赤いファイアボールで開幕。トーマスが突っ込み、全部のヘイトを取って駆け抜ける。通り抜けると振り返ってモンスターの攻撃を一人で受ける。モンスターを挟むように、ジャックがトーマスの方を向いているモンスターの後ろから剣で切りつける。
ナンシーはヘイトを奪わない程度にトーマスへヒールやバフを掛けようとするが、トーマスが全くダメージを受けない。全部、防いでいる。
俺はジャックと同じ敵を狙って赤いファイアボールをぶつける。トーマスは高い身体能力でモンスターの攻撃を避けまくっている。時に盾で殴って吹き飛ばし、時にカウンターで切り捨て、時に蹴り飛ばす。5匹居ても5分も掛からず戦闘が終わる。
魔石を取り、討伐部位の右耳を切り取る。バンパイヤーバットは翼の飛膜という皮を採取した。柔らかく伸縮性のある皮は皮革工芸の素材だそうだ。
一番奥に行くと大きな扉が有った。
『お!もしかしてボス部屋か?』
『ヒロ、よく知ってるな。1層には居ないけど2層以降はボス部屋を通らないと次には進めないんだ。ここのボスはホブゴブリン1匹だ。ヒロのあの杖ですぐ終わるぞ』
トーマスは豪快に笑い、ジャックは苦笑いしている。ナンシーは何の事か分からずに首を傾げてる。
『ヒロの一番得意な武器は不思議な杖なんだ。500m先から敵を倒すことができるんだよ』
『え?ヒロ様は魔法使いじゃないのですか?エリザベート様もいつもヒロ様の魔法の才能に呆れてますよ?』
『魔法だけじゃないぞ。俺とヒロの練習見てただろ?剣も槍も弓も体術も達人級だぜ。まったくこんなのがEランクっていうのが笑えるわ』
『もしかして、今日、私たちは要らなかったのでは?』
『実力で言えば要らないな。でも、初めてのダンジョンだ。知識も経験も足りないから教える奴が必要なんだ』
『そうなんですね。ヒロ様、私も色々ヒロ様にお教えしますね。今夜『チェンジで!』、ヒロ様酷いです』
『ヒロさん……もしかして』
ジャックが青い顔をして、ぶるぶると震えながら俺の顔を見ている。
(安心しろ、
ボスは俺ひとりでやれと言われた。何のためのパーティーなんだ?弓をアイテムボックスに仕舞い、日本刀を取り出す。これは俺が初めてダンジョンに挑戦すると聞いてケンがプレゼントしてくれたものだ。初めて会った時の約束を覚えていてくれた。
左腰に日本刀を佩くとホブゴブリンに向けて歩き出す。
『ヒロ様、剣を抜いて構えてください!』
ナンシーが叫ぶ。
『良いんだよ。あれがヒロの構えなんだから』
『え?剣を抜かない剣の構えなんて有るんですか?』
『まぁ安心して見てな。一瞬で終わるから』
『え?一瞬?』
俺に気付いたホブゴブリンは刃こぼれしたロングソードを上段に構え駆け出した。
(おいおい、160㎝程度の身長でその長さは大きすぎないか?)
まるで九州の剣術のように奇声を上げながら上段から袈裟に切りかかってきた。俺は左足を斜め右に出し、ホブゴブリンの左足の外に踏み込み半身になる。右足から腰、背中、そして左手を一本の棒のように固め、下から掬い上げる。ホブゴブリンの顎に手のひらを当て、クイっと顎を上げる。顎クイをされたホブゴブリンは、顔を上に向け、しかし、身体は勢いのまま前に突進する。顎は地面に生えた杭にぶつかった様にその場から動けず、身体は振り子の様に宙を駆け上がる。結果、顎を中心に逆上がりをしてる様に全身が水平に浮かんだ。俺は身体強化を掛け、ゴブリンの体重と俺の体重を顎一点に載せ地面へと叩きつけた。
ぐしゃ
ホブゴブリンは後頭部を陥没させ死んだ。
『んったくまぁ、武器も抜かずに終わらせるのかよ』
『ヒロ様……切られたところは大丈夫ですか?すぐにヒールを掛けますね!』
『ナンシーさん、ヒロさんは相手の攻撃を受ける前に倒しちゃったんですよ。ヒロさん、なんなんですか?あの動きは??それになんでホブゴブリンは死んだんです?』
『相手の力を利用したのさ。勢いよく突っ込んで来てくれたからね』
討伐部位と魔石を取るとボス部屋奥の扉へと向かった。
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日曜と木曜に掲載予定です。
会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。
youtubeで朗読させてみました。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9
小説家になろうでも掲載しています。
https://ncode.syosetu.com/n3026hz/
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