第21話 魔法の授業 後編 ガイア1816年9月29日~

 ディメンションホールとアイテムボックスが使えるように成ったのでキャンピングカーを駐車場からディメンションホールに移した。また、食材などの時間経過で悪くなる物はアイテムボックスに入れた。好きな時に好きな場所で車に戻ることが出来るようになって便利になった。うん、車のPCに入っているムフフな動画を人目を気にせず見れるようになったからではないよ。言っておくけど。


(エリザベートの様にディメンションホールの中に家を建てても良いよなぁ。こっちで家を建てるのって幾らぐらいするんだろう?まぁ今の全財産、銀貨9枚と魔石が10個位か……無理だろうな。そういえばエリザベートが魔力の回復の話の時、寝る前に魔石に魔力を有るだけ込めて色を変えるとより高く売れるって言ってたな)


 フロスウエスト村に居た時に貰ったゴブリンの黒い魔石に魔力を流し込んでみた。


「お!黒だったのが茶色に成った!まだ魔力入るな……あ、今度は赤くなった。なんか面白い!どんどん入れてみよう……お、今度は黄色!まだ入るな。おぉ白く光ってる。まだまだ……あ、虹色に光り出した。これは綺麗だな。あれ?魔力が入らなくなった……これで終わりかな?」


 部屋に控えてくれているナンシーに質問する。

 

『ねえ、ナンシー。魔石に魔力を込めてみたら、こう成ったんだけど……』

『ヒロ様、魔力を込めたんですか?これはF0の魔石と言って銅貨8枚で売れますよ。F5の黒い魔石が銅貨3枚ですから、倍以上の価値になりました』

『ごめん、銅貨の価値が分からないからピンと来ないんだ……』

『あ、ヒロ様はまだこちらの世界でお買い物とかしたこと無いのですか?』

『実はそうなんだ』

『大体、銅貨2枚で黒パンが1個買えます。銅貨3枚なら肉の串焼きが1本。で、銅貨10枚で大銅貨1枚になります』


(パン1個100円とすると、銅貨1枚50円ぐらいかな?串焼き1本150円……コンビニ価格だな)

 

 ナンシーは自分の財布から実物の硬貨を出して教えてくれる。


『大銅貨1枚だとお昼ごはんが食べられますね。大銅貨10枚で銀貨1枚になります。安めの宿屋で個室に泊まれて、朝晩のご飯が付いてきます。銀貨10枚で小金貨1枚。小金貨2枚で金貨1枚になります。若い店員さんや工員だと1週間働いて小金貨1枚貰えます。月に金貨2枚稼げたらなんとか一人暮らしが出来ますね。それにもう1枚、小金貨が有れば結構余裕が出来ます。6日で1週間、5週で1月ですから週給小金貨1枚貰えたら結構余裕です。まぁ、家族が居たら別ですが……』


(となると大銅貨が500円、銀貨が5千円、小金貨が5万円、金貨が10万円か……)

 

『へぇ、そうなんだ。フロスウエスト村とここの中しか知らないから勉強になったよ。ありがとう』

『ヒロ様、もっと私を頼ってくれても良いんですよ?なんなら私が養いましょうか?ここの給料ならだいじょうぶですよ?』


 ぶほっ!茶が!


『ナンシーには少し興味あるけど、ヒモには興味は無いからね』

『あら、嬉しいですわヒロ様。で、ヒロ様は後ろから突き刺さる視線を向けてくるお尻と、揺れると視線が釘付けになる胸と、どちらの方が興味ありますか?』

『な、ななななにを言ってるのかな?僕には身に覚えがないな……』

『だめですよ。女の子には視線チェッカーのスキルが有るんですから。殿方の視線はばっちり把握してますよ』

『う……ごめんなさい……』

『別に良いですよ。ヒロ様に見てもらえるのは光栄ですから。ところでもうすぐ夕食の時間ですが、ご飯になさいます?それとも、わ・た・し・にします?』


 ぶほっ!お茶を飲んで無くても何かが噴き出た!


『すいません、チェンジで』

『え?酷いです。私を弄ぶなんて……』

『いや、弄んでるのは君でしょ?チェンジお願いします』

『ごめんなさい。これ以上揶揄からかいませんから許してください』

『あ、やっぱり揶揄からかってたんだ……』

 

 やはり魔力を込めると高く売れると聞いて、残りの魔石にも魔力を込め虹色に輝かせた。


『ヒロ様、FランクとEランクの魔石とはいえ、連続で10個全部虹色になるまで魔力を注げるなんて凄いです。E0は大銅貨8枚と銅貨5枚ですよ』

『魔力に余裕が有れば誰にでも出来るでしょ?』

『その魔力にみんな余裕が無いのですよ。訓練してない人だとF5の黒い石を紫にするので精一杯なんです。訓練を受けてる兵士でもF5の魔石を1個、F0の虹色にさせられるかどうかなんですよ。10個も連続で出来るのはヒロ様とエリザベート様ぐらいじゃないでしょうか?』

『へぇ、そうなんだ』

『Dランクの魔石ならD5の黒が銀貨1枚、それがD0の虹色に成れば銀貨8枚と大銅貨5枚になりますよ。そして、これは秘密なんですがクエスト報酬だけじゃなく、こういった素材納品も冒険者ランクがUPするための大事なポイントになるんですよ。黒い魔石と虹色の魔石だと貯まるポイントが8.5倍違います』

『そんなに違うんだ。って、買取金額とポイントの上昇率が同じって事は……?』

『そうなんです。ギルドの手数料1割と税金1割が先に引かれているのですが、その手数料がポイントになります。依頼失敗した時、罰金が取られますがポイントも罰金と同額引かれちゃいます。お財布に厳しいだけじゃなく昇格も遅くなるんです』

『へぇ、良く知ってるね。ギルドの職員じゃなくてエリザベートの個人的な使用人なんでしょ?』

『私、こう見えて冒険者ランクDなんですよ。ここで働いている使用人は全員、元々冒険者か日々の訓練の為に冒険者をしてますよ』

『え?メイドが戦闘訓練なんてしてるの?』


 ナンシーの顔がキリッとした表情となった。

 

『もし、何か有った時、護衛の者が駆け付けるまでの間、御主人様を守るのも仕事ですから』

『ごめん、そこまで真剣にエリザベートの為に向きあって仕事してるとは思わなかった』

『良いんですよ。エリザベート様は私達の命の恩人なんですから当然です』

『命の恩人?』


 ナンシーが少し俯き、言い辛そうにしながら言葉を続ける。

 

『ギルド総本部含めて、ここって獣人の女性が多いと思いませんか?実は多くの職員が違法に奴隷にされてたり、奴隷にする為に攫われた人で、帰る家も家族も失った人達なんです。盗賊に村ごと皆殺しにされたり……そんな行き場の無い私達をエリザベート様はここで匿ってくれてるんです』


 俺は衝撃を受けた。ナンシーを始め、みんな明るく楽しそうに仕事をしているのに、そんな酷い目に遭ってたなんて……

 

『そうだったんだ。知らなかったよ。俺にも手伝える事があればなんでも言ってね』


 ガバっと顔を上げて満面の笑みで俺のそばに駆け寄ってくる。顔が近い!胸部装甲がめちゃ揺れてる!

 

『では、今晩『チェンジで!』、酷い!ヒロ様!』

 

……


 上級の範囲攻撃魔法も教えてもらい、どれも属性適正プラスに上げた。ここから先は帝級と神級が有るらしいが自分で探し研究し見つけ出さないといけないらしい。呪文を教えてくれる魔法は全て覚えたようだ。そんなある日、大賢者ケンが俺に直接魔法を教えると言ってきた。


「ヒロさん、凄いですね。この短期間で呪文詠唱の魔法を教えられる全てを覚えて、しかも全部属性適正プラスまで上げるなんて」

「先生の教え方が良かったからね」

「それでも今まで会ってきた迷い人の中でも最速ですよ」

「そうなんだ。なんか照れるな」

「ふふふ。そこでヒロさんにご褒美です。まだ、僕以外使えたことのない魔法を伝授します」

「え?それって?」

「はい、GATEです」

「エリザベートでも覚えられなかったって言う、どこで「「わーー」」の魔法?」

「はぁはぁ……そうです。秘訣は……ずばり、ワープです」

「え?ワープってあの第二次大戦の戦艦が宇宙を旅する、あのワープ?」

「そうそう、紙を歪めて出発地点と到着地点を隣り合わせて移動するあれです。その中間域をディメンションホールやアイテムボックスで使ってる亜空間を利用します」

「なるほど……イメージ出来た」

「さすがです。呪文は……です」


 自分の目の前から1m先を、空間を歪め、繋げ、そこに扉を付けるイメージをする。

 

『GATE』


 自分の目の前と1m先に虹色の薄い膜状の空間が出来た。右腕を入れてみる。すると1m先に右腕だけが出てくる。今度は通り抜けてみる……成功だ!


「なんで、出来るんですか?私が何度もトライしたのに、結局覚えられなかったGATEの魔法を、なんで一発で覚えちゃうんですか??」


 エリザベートが壊れた……床に崩れ落ち、泣いている……


 ごめん。俺たち戦後の日本人にとっては、ほぼ共通認識なんだ。


------

日曜と木曜に掲載予定です。


会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。


youtubeで朗読させてみました。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9


小説家になろうでも掲載しています。

https://ncode.syosetu.com/n3026hz/

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る