第20話 魔法の授業 前編 ガイア1816年5月1日~
その後、半年掛けて現地の言葉がある程度話せるようになると、魔法の授業が再開された。
この半年の間にエリザベート達との関係が大きく変わった。特にエリザベートとは一時期、戦争状態となった。彼女曰く、自分の師匠である大賢者相手にはタメ口で話すのに、なぜ自分相手では敬語を使うのか?なぜ自分に敬称を使うのか?と言われ続けたのだ。年上の女性で、しかも居候先の家長相手にそれは出来ないと断わっていたのだが、ついに負けてしまった…… 女性にタメ口で話すなんて、後輩の
メイドさんや職員さんたちとも、共通語で会話が出来るようになって随分と仲良くなれた。特に専属メイドのナンシーとは、かなり仲良くなれたと思う。今では一日中、部屋の中で彼女が待機していても気にならなくなった。人間の慣れって偉大だと思う。こんなナイスバディな娘が横に居ても「俺のマグナムが!」とは、まだ成ってないのだ。自分を褒めたい!
(誰だ?小心者と笑う奴は?そういう時はそういうお店に行けば良いんだ。仲の良かった教育隊の班長も「そういう犯罪起こすぐらいなら、そういう店に行け!」と教育が終った後、顔を合わす度に誘ってくれたものだ。まだ、この世界では一度も行ってないが……)
再開してすぐに教科書に載っていた中級までの攻撃魔法・防御魔法に生活魔法は覚えた。
魔法には属性という物が有るらしい。火、風、土、水、聖、闇、そしてどの属性にも属さない無属性が有るらしい。その属性を1つから数種類使って、自分の望む結果を導き出すのが魔法らしい。属性1つだとロウソク1つぐらいの火を出すファイア。ライターの火みたいなものだ。水だとウォータでチョロチョロと水が出てくる。飲むことが出来て水筒要らず。そんな風に属性1つだと、ちょっと便利かなという位の魔法しか使えない。これらを生活魔法と呼んでいるらしい。まぁ、実際には生活魔法にも複数の属性を使う物も有るのだけど。
属性1つの生活魔法が魔力の使用量が1番少ない。しかし、同じ魔法でも人によって魔力の使用量が違う。その違いは「その魔法の習熟度と使用する属性の適正の有無」だとか。属性の適正とは、その属性の才能らしい。これらをまとめて「属性適正」と呼んでいる。
最初は全員、属性適正は
その属性に才能が有れば、訓練次第で更に必要魔力量が減り、属性適正も
どの属性に才能が有るかは人それぞれで有るが、少なくとも1種類は必ず才能が有るらしく、親の才能を受け継ぐ者が多いと云う。中には複数の才能を持つ者もいて、稀に大賢者のように全属性の加護持ちも居るらしい。
この加護持ちの人が、属性1つの魔法を使う時に必要な魔力量を1として最小単位にしている。これは大賢者であるケンが定めたものだとか。
さらにややこしいのが、1つの魔法の属性適正が
実はこれが高位の魔法が中々習得出来ない原因になっている。一般成人の魔力量は30前後。中級魔法ともなれば覚える時に属性適正
幸いに俺は小さい頃から続けていた気功法のお陰でガイアの歴史上最大級の魔力量が有り、どれだけ連続で練習しても魔力欠乏症になることも無く、覚えた魔法すべての属性適正を
……
魔法を教わり始めた頃、俺には1つの疑問が有った。ファイアボール等の攻撃系の魔法をすべて手のひらの上に発動するのだ。ボール系の場合、透明な膜の中に火や水が閉じこまれた状態で発動する。手のひらの上に出て来るだけ。アニメじゃ、手のひらから敵に向かって飛んで行って攻撃してたのに……エリザベートはそれを的に向かって投げろと言う……
「あの、エリザベートさん……」
「あらなに?急にさん付けなんてして来て……何か怒られるような事でもしたの?ナンシーにHなイタズラして怒らせたとか?」
「違うから!俺達の世界ではファイアボールと云えば、こう手のひらを敵に向けてファイアボールと叫ぶと手のひらに火の玉が出来て、それが自動で敵に飛んで行って攻撃をするっていうイメージなんだけど……何で投げるの?」
「だって、この魔法の呪文には、飛んでいく要素が全く入ってないもの」
「え?火の玉を造るだけの魔法なの?」
「そうよ。あなたがイメージしてるのはこれでしょ?」
そう言うとエリザベートは手のひらを的に向けると呪文を唱えた。すると手のひらに火の玉が出現し、ポンっと豆鉄砲のような音がして的に火の玉が向かって飛んで行く。火の玉が的に当たると弾けて周りが火だらけに成った。
「おぉ!そう、それ!」
「これはファイアボールを風の属性魔法で飛ばす中級魔法よ」
「え?風の属性魔法?」
「そうよ。風の属性に込める魔力の量によって飛ぶ距離も変わって来るわ。飛ばすだけなら2〜300m飛ばせるかしら?
でも、飛ばす前に火の玉や水の玉が出来ないと意味無いんだけどね」
「あぁ、もしかして……飛ばす前に飛ばす対象が必要と……」
「そういう事。じゃあやってみて」
ファイアボールやウォータボール、アースボール等を作っては投げる。薄い魔力の膜で覆われたこれらの感触は水風船だ。強く握ると割れそう。実際に割れるらしく、自分が火だるまになったりするらしい。投げてぶつかると弾けて周辺に飛び散る様はまさに水風船と同じだ。中身が水か火かの違いだ。
防御方法も教わった。武器で対処する時は、割れない様に剣の腹で進行方向を変えてやると良いらしい。切ると自分に中の魔法が降りかかってくるから駄目だとか。仲間が周りにいて弾く事が出来ない場合は、ウォール系の魔法か盾で物理的に防ぐと良いらしい。最良は呪文を唱え出したら攻撃して、呪文を中断させる事だとか。俺はそこで無詠唱魔法を使ったら驚くだろうなと思うと楽しみになった。
……
「今日は空間魔法を教えるわね。この系統の魔法の多くは他の魔法と違う点が有るの」
「違う点?」
「そう、発動させたら終わりでは無く、魔力を消費し続けて維持する必要が有るの」
「あ……もし、中に物を入れたまま終了させたら?」
「どこかに消えちゃうわね。魔法陣で起動したものなら中の物を指定した場所に吐き出すとか設定出来るけど、呪文で呼び出したものは難しいわね。呪文を弄る必要があるわ」
「大事な物はあまり入れれないな……」
「魔力切れや死亡とかで魔力供給が止まらなければ大丈夫よ。その維持するのに必要なのが魔力なんだけど、自分の魔力の回復量って知ってる?」
「寝たら回復するって感覚は有るけど、実際に正確な量は知らないかな」
「自分の魔力量の10%が
「という事は、8の鐘で寝て1の鐘で起きたら魔力は満タン?」
「そうよ。じゃあ、魔力が満タンになったら、その後はどうなると思う?」
「え?止まるんじゃないの?」
「止まらないのよ。ただ、溢れるだけ」
「なんか勿体無いね」
「その溢れる分の魔力で維持していくのが空間魔法なの」
「なるほど」
「ヒロの魔力量は確か3万を越えてたわね。となると、
エリザベートがニヤッと笑いながら問い掛けてきた。
「その笑顔、なんか怖いな。それに満タンだと溢れるとしても、満タンじゃ無きゃ全然回復しない事になるよね?」
「あら、正解!」
エリザベートが手を叩きながら満面の笑顔で答えた。なんか……馬鹿にされていような気分だ。ムッとした顔で睨むがスルーされた。
維持するのに魔力が1番必要なのがディメンションホールらしい。生き物を入れたままに出来るからとか。どこからか空気の循環が行われ、適温に温度管理もされているらしい。確かに維持するのにコストが掛かるだろう。
「ディメンションホールは3m×4m×2m、4~5人のPTが寝泊まりできるサイズで属性適正
インベントリとかストレージとも言われる、無制限収納とか時間無効とかのチートを代表する魔法だったりスキルだったりアイテムだったりするあれだ。この世界では大きさはディメンションホールと同じで支払う魔力次第。物を出し入れする瞬間しか亜空間とは繋がらないし、閉じている間は時間も温度も空気も何も管理してないらしい。つまり、時間は止まり、温度変化も無く、生きている物は入れられないので空気も要らない。あれ?サイズ以外はこの世界でもチート魔法かも?
「5m×5m×4mで、属性適正
「え?犯罪?」
「検問などで見られたくない人を、ディメンションホールに隠すと見つけられないでしょ?
ちなみにディメンションホールに常に荷物や生き物を入れてるのは今では私ぐらいかも……多くの人は野営の時にテントサイズのディメンションホールを作って起きたらすぐ消すそうよ。」
共通語での呪文を教えて貰い使ってみた。
『アイテムボックス』
「あっさりと成功するわね……私がどれだけ苦労して覚えたか……自信無くすわ」
「いえいえ、師匠の教え方が上手だからですよ!」
「おべっか使ったって無意味よ。大体、師匠って何よ。呪文さえ分かれば、ドンドン自分で覚えて行く癖に。もしかしてディメンションホールも使えたりする?」
「やってみますね。『ディメンションホール』あ、出来た」
両方とも覚えたてなので、維持する魔力量が属性適正
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日曜と木曜に掲載予定です。
会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。
youtubeで朗読させてみました。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9
小説家になろうでも掲載しています。
https://ncode.syosetu.com/n3026hz/
ニ
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