資料「魔法の初歩」 ギルド総本部:編

前話、第19話でエリザベートから手渡された教科書です。


今回はyoutubeでの朗読はお休みです。

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1.魔法とは

 

 

 1-1 原初の魔法

 

 史上初めて魔法を使ったのは赤ん坊だと言われる。良く「火がついたように泣く」と表現される事が有るが、実際に顔を真っ赤にさせて大泣きをしている赤ん坊の周りで、発火現象が起こる事が何度も確認された。

 当時は自然界に精霊が存在し、不思議な現象が精霊によって起こされると思われており、精霊のイタズラだと言われた。

 2〜3歳に成り、喋れるようになるとこの様な現象が起きなくなるのが普通なのだが、時折成長しても現象を起こす者が現れ、何時しか自分の意志で現象を引き起こす者まで現れた。

 

 これが原初の魔法で有る。

 

 これはたまたま人より多くの魔力を持って生まれた者が、無理矢理発動させるものであり、誰でも使えるというものでは無かった。


 

 1-2 初期の魔法制御

 

 同じ頃、猟師や兵士等が戦いの前に精神統一を行っていたが、この時に臍の下辺りに感じられるエネルギーを手足に纏わせると、力が強くなったり足が速くなったりする事が知られていた。彼らは、これを気と称した。気は訓練すればする程エネルギーが増える事が分かり一気に広まった。魔法が使える者もこの訓練を行う者が増え、やがて何故か魔法の威力が上がったり使える回数が増えたと報告する者が現れた。

 実はこの気なるものが魔力であり、精神統一で気を動かすことが魔力制御である。身体に気を纏わせるという行為は身体強化魔法である。


 

 1-3 呪文魔法

 

 魔法が使えない者が魔法使いに師事することが増え、ある一派が自分のやりたい事を口にしながら魔法を使うと発動しやすくなる事を発見した。半信半疑で口にしても発動せず、絶対に出来ると思い込みの強い者ほど発動した事から、魔法にはイメージが大事だという事が知られた。

 

 今、多くの初心者や指導者は師から教わった呪文を一言一句間違えずに唱える事が大事だと信じられているが、実は本人がイメージしやすければどんな呪文でも良い。但し、慎重に言葉を選ばないと発動しないのはまだしも、暴走させ魔力枯渇を繰り返し、気絶する度に体力を奪われ、死に至る事も有るので注意が必要である。


  1-4 現在の魔法の発動方法

 

 魔法はイメージを素に、魔力を魔力制御で操作し発動させる。呪文はこれらを簡易化させる手段である。

 

 例「火の精霊よ、我が手に火を灯せ。捧ぐは我が魔力。ファイアー」

 

 まず、使う魔法の属性を指定。次にどの様な結果を求めるかをイメージ。

 さらに使用する魔力を指定。ここを「捧ぐは魔石」とすると魔石から魔力が使われる。(保有する魔力が少ない者が使用する事が多い。)

 魔力は必要な分だけ自動的に使われる。威力を増す為に意図的に魔力量を増やすことも可能である。

 最後に発動のトリガー。これで魔法が発動する。


 魔力制御に長けた者はトリガーだけ、もしくはトリガーも発せずに魔法を発動する事が出来る。声を発せず、脳内で呪文を詠唱するのだが、より強固なイメージを必要とする。これを無詠唱魔法と言う。

 さらに詠唱自体行わず、イメージだけで発動させることを詠唱破棄と呼ぶが、実際に発動出来るものはほとんど居ない。しかし、詠唱の時間を必要としない為、非常に素早く魔法を発動できる。

 

 1-5 現在の魔法

 

 今現在、数多くの魔法が開発されている。人のイメージの数だけ魔法があると言っても良い。

 しかし、大まかに分けると「火・風・水・土・聖・闇・無」の7属性と属性複合魔法となる。これらの中に生活魔法・単体攻撃魔法・範囲攻撃魔法・防御魔法・回復魔法・生産系魔法等の系統がある。

 

 すでに魔法は生活するにも、なにか製品を作るにも欠かせない技術ではあるが、取り扱いを間違え暴発させると、町や都市が一瞬で失くなってしまう可能性がある事を決して忘れてはならない。


2. 魔力の鍛え方

 

 2-1 腹式呼吸 その1

 

 まず最初に覚えることは「腹式呼吸」である。

 これは胸を上下させて呼吸するのではなく、お臍の下あたりを膨らませたり凹ませることで行う呼吸法である。


 姿勢は椅子の上でも床の上でも良いが、姿勢よく座るのが肝要である。天井から頭のてっぺんを糸で吊るされている感覚で、頭・首・背骨・腰・肛門が一直線になる感じで座る。手は左右の指を軽く組んで臍の少し下を軽く包み込むようにする。


 

 2-2 腹式呼吸 その2


 実際の腹式呼吸だが、


 まずはお腹を凹ませて息を吐き切る。


 次に3秒間掛けて、お腹を膨らませながら鼻から息を吸う。


 息を吸い終わったら6秒間息を止める。


 最後に6秒掛けて腹を凹ませながら鼻から息を吐く。


 これを意識しなくても行えるようになるまで続ける。最初のうちは秒数をカウントしても良いが慣れてくると自然に出来るようになる。


 どうしても腹式呼吸が出来ない場合は仰向けに寝て行うとよい。人が寝ている時に自然と行っているのが腹式呼吸である。


 手のひらでお腹が膨らんだり凹んだりするのを感じながらすると良い。


 

 2-3 魔力の感じ方 その1


 腹式呼吸が出来るようになったら、次は臍の前あたりで両掌を合わせ、そして軽く指を曲げ手のひらの中に丸い球体を包み込んでいる形にする。この時、指先だけで球体を作るのではなく、手のひらの手首の付け根から指先までを使って球体を作る必要がある。


 球体が出来たら、腹式呼吸で息を吸うときに手を開く。この時肘を体の側面に付けたまま肩と肘を軸として動かす。


次に息を吐くとき、体の周りにある空気の塊を手のひらで集めて球体に纏めるイメージで臍の前で再度、手のひらで球体を作る。この時、指先が先に触れるようだと手首側からこぼれだしてまとまらないので要注意である。


 

 2-4 魔力の感じ方 その2


 何度か繰り返していくと手のひらと手のひらがくっ付く直前に反発を覚えるようになる。


 これが魔力である。魔力を集める動作を繰り返すとだんだん反発する距離が広くなる。


 両手の指が反発を感じて止まる場所が5㎝以上に成ったら今度は球体の中心へ圧縮するイメージを行う。魔力の濃度を上げて圧縮するのである。


 圧縮を繰り返すと魔力量が増えていく。魔力量が500前後になると圧縮された魔力が淡く光りだす。1000前後になると蝋燭ぐらいの光となる。

これぐらいになると身体強化魔法を使うと全身が薄く光るようになる。


 

 2-5 魔力制御 その1

 

 魔力を圧縮できるようになったら、圧縮と並行して魔力制御を開始する。手の中にある圧縮された魔力を上に動かす。体表に沿って臍・みぞおち・胸・首・顎・唇・鼻・眉間・額・頭頂部と動かす。

 

 途中で注意が逸れると魔力は霧散してしまうので要注意。

 

 頭まで行ったら今度は後頭部から背中を通りお尻の下まで下げていく。そのまま、肛門から性器を通って臍下まで戻す。これをスムーズに滑らかに何回も行えるようになるまで行う。


 そして次は逆回りに手のひらから下に行き背中を通って頭へ行き顔を通り胸を経て臍下へ動かす。

 

 

 2-6 魔力制御 その2

 

 これも出来るようになったら、次は手の循環。手のひらから右手首・右ひじ・右肩・首・左肩・左ひじ・左手首・手のひらと回す。これも左右どちらでも出来るようにする。


 次は足の循環。これは座り方が変わる。両方の足の裏を合わせるように座る。臍下から右の真横に進み太ももとお腹の間にある出っ張った骨(腸骨稜)へ行き太ももの上から右ひざ・右脛・右足首・右足の甲・右足の指・左足の指・左足の甲と臍下まで循環させる。

 これも左右行い出来るようになったら臍下・肛門・太ももの裏・膝の裏・ふくらはぎ・右かかと・左かかとと循環させこれも左右練習する。



 2-7 魔力制御 その3


 ここまでくると体の好きなところへ魔力を動かすことが出来るようになれたと思う。

 次は球体ではなく薄く魔力を伸ばし包帯を巻くように隙間なく体全体、もしくは体の一部をらせん状に魔力を巻き付ける。この時に「力が増す」「早くなる」「硬くなる」等のイメージをしながら行うと身体強化魔法となる。


 この時点で魔力も増え、魔法を発動する速度も速くなったと思う。


3. 魔力量

 

 3-1 魔力量と適正 その1


 ギルドカードのステータス欄で自分の魔力量を知っていると思うが、この魔力量について説明する。

 

 まずこの数字は、「属性の加護を持っている者が初級の生活魔法(ファイヤーやウオーター等)を1回使うときに使用する魔力量」を1としてカウントしている。

 魔力量30ならばファイヤーを連続30回使用できるだけの魔力量を持っているという事になる。

 

 しかし現実には魔法を覚え始めた者にはそんなにも使えない。それは「属性適正」というものが関わってくるためである。

属性適正とは、その魔法の習熟度と使用する属性に対する適性の有無により起こる使用魔力量の変化の事である。この属性適正の違いにより、最大9倍使用魔力量が変化する。


 

 3-2 魔力量と適正 その2


 初めて使う魔法は全て「属性適正マイナス」となる。何度も使用してその魔法に慣れてくると徐々に使用魔力量が減り、1/3まで減ると「属性適正+ープラマイ」と呼ぶ。さらに何度も使用して、その属性に素質が有れば使用魔力量が更に減り「属性適正プラス」と呼ぶ。使用魔力量が属性適正+ープラマイの1/3まで減ると「〇〇属性の加護持ち」と呼ばれるようになり、ギルドカードのスキル欄に「○○魔法」と記載される。


属性適正のプラスマイナスの違いは同じ魔法でも使われる魔力量の違いである。

初級生活魔法は「属性適正プラス」の「加護持ち」なら魔力1で使用できるが、これが「属性適正+ープラマイ」で魔力3、「属性適正マイナス」は魔力9が必要となる。


魔力量30の魔法初心者は初級生活魔法を連続で練習できるのは3回であり、4回練習すると魔力欠乏症で気絶する可能性が有るので要注意である。


4. 魔力の回復量


 最後に魔力の回復量について述べる。

 一刻2時間安静にしていると、全魔力量の10%が回復する。そして、睡眠時には回復量が倍になり一刻で20%回復する。

 つまり、8の鐘で就寝して、1の鐘で起床すると100%回復する事が出来る。


 魔力が完全に回復した後でも時間で魔力は回復しつづける。余剰分は溢れて無駄になるが空間魔法や魔術具の維持に利用する事が出来る。維持に多くの魔力を割り振ると、魔法を使った後の魔力回復が出来なくなるので注意が必要である。


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日曜と木曜に掲載予定です。


会話の「」内は基本地球の言語を、『』内は異世界での言語という風に表現しています。お互いの言語学習が進むと理解出来る単語が増えて読める様になって行きます。


youtubeで朗読させてみました。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLosAvCWl3J4R2N6H5S1yxW7R3I4sZ4gy9


小説家になろうでも掲載しています。

https://ncode.syosetu.com/n3026hz/

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