第4話 大会!
人は死を意識すると、性欲が上り上がってくるという。
下から突き上げてくるグイグイグイグイ、地球のど真ん中が『子孫を残せ!』とお達しマグマを突き上げてくるのだ。
「俺は死ぬんじゃないだろうか?」
アーノルドはあの日の自分を思い出し、沈んでいく夕日を自分だと投影した。俺は沈む。
しかし、少し時間をかけて復活するだろう。
不死鳥の様に蘇ったアーノルドは、その日から見違えるほどに綺麗になった。
「お前、どんな化粧品使ってんだ?」
あまりにも綺麗になったアーノルドを見て、乳首相撲の部員はアーノルドの白粉を知りたくて話しかけてきた。
「それは恋よ」
アーノルドはそう答えた。
すげぇ! と部員たちの歓声が沸いた。
それからアーノルドは不死鳥になった事で、今まで以上の無敵ぶりを発揮した。
誰が何かを言うわけではない。
部員たちの乳首からブチ抜かれるバルブが物語っているのだ。
ダッガーン!
聞いたことの無い爆発音、それがバルブが大気圏で暴走した様な音であった。
「次!」
乳首茶を乱暴に飲み捨て、またリングに戻るアーノルド。
気迫が違う。
それは、アーノルドには内に秘めるある思いがあったからだ。
そして大会の日がやってきた。
アーノルドはこの大会で優勝して、アンジェラに正式に交際を申し込むつもりだった。そして、子供は17人は欲しいとも告げる予定だった。
見ていてくれアンジェラ。
感じていてくれアンジェラ。
オギっていてくれアンジェラ。
今日のアーノルドちゃんは、なんと負ける気が全くしないのであーる!
聞きたい? 聞きたい?
because ラブ。
人を愛する気持ちは無敵なんだぜ!
乳首をピックで弾きながら、チク唄をチクずさんでいたノリノリのアーノルドは一回戦の相手を地獄送りにするべく、アップをして続けていた。
その時、
「あ、アーノルド……」
「ん? 優勝?」
と、そこにケビンが乳首を押さえながら──物凄い量の乳首茶を垂れ流しながら、やってきた。
おいおい、負けすぎだろ。
弱いからって、乳首茶の量が半端なさすぎ──おそらく、雑魚だから負けたんだろう。いつもの事だ。
「どうした、ケビン? 負けたなら早く乳首のバルブをつけたらどうなんだ? 乳首茶で地面がびしょ濡れだぞ。バルブを戻すのは慣れてるだろ?」
「それが……バルブごと破壊されちまって、もう乳首がハマらないんだ」
「何だって!」
アーノルドはあまりにもお汁が出過ぎちゃってる、ケビンの乳首に目をやった。お前、ビショビショじゃねぇか!
「そんなに乳首茶を垂らして、もしかしてお前、乳首茶を飲んでもらわなかったのか!」
「ああ、『飲んでおくれ』ってこっちから頼んだんだ。なのにアイツ、俺の乳首茶を払い落としやがった」
「なにっ!」
アーノルドはとにかく、バルブが壊れたケビンの乳首に詰めるものを探し、偶然大会を見に来ていた老人が持っていたコケシを穴に詰めることにした。
これでケビンの乳首茶は止まった。しかし……
「バルブが破壊された以上、ケビンはもう乳首相撲はできない!」
「ああ、そうだ……俺はもう乳首相撲はできない!」
ケビンが繰り返した。
アーノルドは「うん!」と強く頷いた。
「しかし、あの野郎、飛んでもない強さだった。試合が始まって一瞬でバルブごと弾け飛んだんだ」
「何だって!」
アーノルドは驚愕した。
いくらケビンが雑魚だからといって、試合開始と同時に乳首のバルブが弾け飛んで、破壊されるだなんて。
いくらなんでも弱すぎる。
逆に『そんな強敵って今日の大会にいたっけ?』と疑問にも思った。
いないと思ったから、アンジェラに告白するって決めてたのに!
「あ、アーノルド」
するとそこで、またしても乳首茶をドバドバ垂らしながら乳首相撲部の仲間がやってきた。
また負けたのか。
なんて弱いんだ、俺以外。
まったく、お前らは地面に乳首茶を巻く大会なら世界最強だな。
「ぼ、僕もバルブを破壊された。もう、乳首相撲はできないよ」
「何だって!」
弱い! 弱すぎる!
こんな弱くて、何が楽しくて、こいつら乳首相撲をやってたんだ!
アーノルドはその辺にあった野球のタイカップ式バットをモブ野郎の乳首にさした。これで乳首茶は止まった。
しかし、コイツもまた二度ともう乳首相撲をすることはできない。
「お前達二人、一体誰にやられたんだ?」
「ゴンチチさんだよ」
「ゴンチチ!」
あの検便大学の大学カリフォルニアチャンプのゴンチチだって!
「物凄い勢いで、試合開始とともに乳首のバルブごと宇宙に飛ばされたんだ!」
「えっ!」
アーノルドは天井を見上げて、驚いた。
屋根あんのに、どうやって宇宙まで飛ばされたんだよ! 弱いにも程があるだろ!
「しかも、僕の乳首茶も飲みもせずに、床に投げつけて」
「お前もか!」
アーノルドの怒りが頂点に達した。
乳首レスラーの乳首茶と言ったら、年頃の乙女の描いている日記帳、いやラブレターのようなものだぞ。
それを飲みもせずに床に捨てるだなんて、『今日もタカシ君が好きで健康です』って描いてるのを見て爆笑するくらいに失礼なことだ。
「あ、アーノルド、僕もやられた」
それから次から次へとゴンチチと戦ったことで、乳首のバルブを破壊される乳首レスラーは後を絶たなかった。
アーノルドが決勝に駒を進めた時には、地面はもう乳首茶で浸水し出していた。
「くそっ! なんて事だ! ゴンチチ先輩はどうしてこんなことを!」
「ふふふ、それはお前のせいだ、アーノルド!」
「ゴンチチ先輩!」
アーノルドが振り返ると、そこには得意げな笑みを浮かべているゴンチチの姿があった。
「俺も決勝進出を決めた。しかも、全試合、バルブを破壊してな!」
「何だと!」
「つまり、決勝の相手は俺とお前の戦いという事だ。覚悟しろ、お前のバルブも破壊して二度と乳首相撲ができない体にしてやるぜ」
「どうして、どうしてそこまでするんだ!」
「それはお前が我が妹、アンジェラに手を出したからだ、アーノルド」
「なっ!」
アーノルドはそれを聞いて、ショックを受けた。
あの、交際を申し込もうとしているくらいに惚れていた女、アンジェラの兄貴がゴンチチ先輩だって!
「俺はお前とアンジェラの交際を認める気はない。その為に俺はお前に万が一でも負けまいと、これを用意してきた」
そう言って、ゴンチチはきていたバスローブを脱ぎ捨て、ワイングラス越しにアーノルドに乳首を見せてきた。
「そ、その乳首は!」
ゴンチチの乳首はこの前つけていた漆黒のドス黒い乳首ではなかった。どす黒く光る漆黒の乳首が真っ白に見えるほどのさらにドス黒い『ダーク乳首』であった。
「それは、ダーク乳首! なぜ、それを」
ダーク乳首。
それは、真ピンクのサーモンのような乳首が天使からの贈り物だとすれば、漆黒のダーク乳首は悪魔からの賜物と言われている。
戦場ではゲリラ兵士には乳首力を高めるために、闇の武器商人からダーク乳首を傭兵から付けられる者もいると聞く。
しかし、ゴンチチはアーノルド一人を倒す為に、ダーク乳首を取り付けていたのだ。
「なぜ、ダーク乳首なんて!」
「それはアーノルド、お前を倒すためだ。その為に悪魔に魂を売り、このダーク乳首で戦うことにしたのだ。決勝までの試合はこのダーク乳首を体に馴染ませる作業だった!」
「何だって! その為に、俺たちの仲間のバルブを破壊したのか!」
「ふん。弱い奴が悪いんだ!」
そりゃそうだ。
そう思ったけど、アーノルドは世間体があるから言わなかった。
「だからって……乳首茶くらい飲んでやったらどうなんだ!」
「弱い奴のお茶など、飲む気もせん。俺は牛乳派なんでな」
ゴンチチはそう言って、笑った。
下手くそなジョークだ。
「決勝までに覚悟を決めておくんだな。今日でお前はアンジェラを失い、お前の得意だったプロ入り目前だった乳首相撲も失う。俺の妹に手を出したが最後、全部を失うんだ!」
「そうはさせるか! 俺はアンタに勝って、アンジェラと付き合って、お前をお兄ちゃんって呼んでやる!」
「ふんっ。その強気がどこまで持つか見ものだな」
ゴンチチは余裕の笑みで去って行った。
それからアーノルドは仲間の破壊された乳首のバルブの修理に追われた。
バルブがつかないので、乳首に空いた穴を塞ぐ為に適当な細長いものを会場から持ってきて、乳首の穴に刺していく作業だ。
中にはボーリングのピンくらいの穴が空いている強者までいる。会場にいた卒業証書の筒とかをブッ刺して一命を取り留めた仲間もいた。
「みんな……俺のせいで」
アーノルドは乳首にコケシやら、ボーリングのピンやらをブッ刺している不細工なチームメイトを見回した。
最悪だな。
「ゴンチチ、絶対に負けるわけにはいかない」
いよいよ、決勝戦だ。
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