第8話 同志と二人で……。
それ以来、白河さんとは毎日LIMEのやりとりをして、俺のバイトが八時前に終わる時は
一緒に夕飯を食べた。
「ちょっと聞いてよ、清澄くんっ!」
「何だい? 白河さん」
「シャンプーした後。トリートメントするでしょ? トリートメントつけたつもりが、またシャンプー使って泡だらけよっ! これで今週三度目よっ? …………ねえ、どう思う?」
「二つ並べて置くのが良くないよね。最初から、『シャンプーは右側、トリートメントは左側』って、決めておけばいいんじゃない?」
「ゔっっ……」
ーーーー
「……ところで、明日なんですけど、朝九時からで、平気ですか?」
「うん、ちゃんと起きるから」
白河さんは、俺の部屋がすっかり気に入ったらしく、ソファーでくつろぎながらビールを飲んでアニメを見ている。
今日のご飯も美味しかった!
俺のリクエストでカレーだったんだけど、『具が大きめの、辛さはちょい辛で』という要望通りで、後は隠し味に何か入れたらしくマイルドな辛さのカレーだった。
洗い物は、……当然俺の担当で。
洗い物をしながら、白河さんの今日の仕事の愚痴や、くだらない出来事、今期のイチオシアニメの話など、ほとんど聞き役にまわっていた。
機関銃の様に喋って、手を叩いて笑う。
……そんな白河さんと居ると、何だか落ち着くし、楽しい。
仕事がある日の白河さんは、髪型だけはちゃんとしていて……、と言っても寝癖が無いだけでカチューシャをしているか、後ろに結んでいるかのどちらかだが。
化粧は嫌いみたいで、家に着いたらすぐに落とすらしい。
服も、だいたいがスウェット上下かパーカー、Tシャツにショートパンツ。
男と意識されていないのが、ちょっと不満だが、こっちも変に意識しなくていいので、一緒に居て楽だ。
たまに、すっぴんメガネのくせに、ドキッとする表情を見せるけど……。
ーー
「ねぇねぇ、清澄くんって『プイッター』やってる?」
「呟いたりはしないけど、気に入ってる人のフォローだけして、後は見る専かなぁ?」
「それじゃ、『麦宮美恵』のフォローしてるでしょ?」
「もちろんだよっ! って言うか、麦宮さんが『プイッター』始めたから、俺も登録したんだよ! 凄いんだぜっ、声が聞こえてくるんだ!『むぎみー』が呟くと……、『おはよー』とか食べ物の呟きがほとんどなんだけど、脳内であの声が再生されるんだよっ! もうっ『むぎゅうっっ』ってなるよ!」
「わかるわぁーっ! 私もフォローしてて同じ事思ってたし。てか、清澄くん、急に早口ねぇ? ……もしかしてアナタも『麦宮病』なの?」
「俺は『麦宮病L型』だなっ! 高校に入って、色々なアニメ見て、好きな声優さんいっぱい出来たけど、結局はあの声が一番耳に残って……、最近の若い声優さんにも好きな人、結構いるけど、……やっぱりツンデレやらせたら一番だよねっ? もちろん、普通の女の子や、あと少年役も良いよねぇ」
「……おいおい、止まらないなぁ! こんなに喋る清澄くん、初めてだよっ、ププッ!」
「私は、今二十三なんだけど……、アニメにハマったのが、中二の夏休みに見た深夜アニメで、それから声優さんに興味持って……女性声優は、麦宮さんの他には、『目笠陽子』、やっぱり『花村香奈』、最近は『小原好子』かなぁ? 男は私、一途よ、『神名浩史』一筋だからっ! ……あっ、でも最近『キバショー』も気になってて……、へへっ」
そして遠い目をして、
「高校になって、イベントやコミケにも行ってたなぁー、いつも仲の良い二人と、遠征もしたし。今でも連絡取ってるけど、今は北海道と、大阪に住んでるのよね。だから、……周りに話せる人が居なくなっちゃったの」
そして俺を見て、イタズラ顔で、
「もうっ、こんな話するの、清澄くんだけなんだからっ、ねっ?」
「おーっ! なんとなく似てるっ」
「「あはははっ!」」
ーー
「あーっ、もう十二時過ぎてるっ! 明日休みだから、もっと話してたいけど、清澄くん絶対大変だから、今日はこれで帰るねぇー」
「うん、それじゃ九時に行くからっ」
「はーい、おやすみっ!」
……白河さんの部屋って、どんなだろう?
……なんだかんだ言ってても、ねぇ?
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