カフェ
夏休みももうそろそろ終わりに近づいた8月末、裕太はバレー部の部活を終え1年生の部員たちと一緒に片づけをしていた。
体育館をモップ掛けしていると、浩ちゃんと佳那が近づいてきた。
「裕ちゃん、この後予定ある?」
「ないけど」
夏休みの宿題も終わったので特にやることもないので、家に帰ったらネット動画でも見ようかと思っていたところだった。
「佳那が駅の近くにいい感じのカフェ見つけたらしいから、一緒に行かない?」
「パンケーキが美味しいらしいよ」
特にやることもないし、浩ちゃんと過ごせる時間が増える分には構わないので一緒に行くことにした。
一緒に3人でカフェに向かって歩き始めた。駅まで向かう途中にあるコンビニの前に差し掛かると、佳那が指をさした。
「ごめん、ちょっとコンビニ寄っていい?」
佳那は同意の返事を待つことなくコンビニに入っていった。そのあとを浩ちゃんと一緒におって店内へと入った。
佳那はおにぎりコーナーの前で、悩んでいた。
「ツナマヨとエビマヨどっちがいいと思う?」
「佳那、今からカフェでパンケーキ食べるのに、今からおにぎり食べるの?」
「パンケーキなんておやつみたいなもんだかね。やっぱ両方にしよう」
二つおにぎりをもった佳那がレジの方へと向かっていった。
コンビニ内のイートインスペースで、佳那はおにぎり二つをあっという間に平らげしまった。
「あっ、ここだよ」
駅をすこし通り過ぎたところにある、ビルの2階にお目当てのカフェがあった。店名は「ロチュス・シュクレ」というみたいだ。階段をあがり店内に入った。木目調の明るい感じの雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「3名です」
浩ちゃんが答えてくれて、店員さんの案内に従って窓際の席に座った。
「なんにする?パンケーキは外せないけど、チーズケーキも美味しそう」
「ザッハトルテも美味しそうだから、1つずつ頼んでシェアしよう」
裕太が口をはさむ間もなく決まってしまった。
「お待たせしました。チーズケーキとドリンクです。ザッハトルテとパンケーキはこの後持ってきますね」
「美味しそう」
早速佳那がスマホで写真を撮り始めた。
「お待たせしました。パンケーキとザッハトルテです」
先ほどの店員さんとは違う店員さんがパンケーキをテーブルの上に置いた。なんとなく店員さんの顔に見覚えがあった。それに女性にしては少し低めの声も、聴いたことのあるような気もしてきた。
「ひょっとして、夏祭りの?」
浩ちゃんが先に気づいたようで、声をあげた。それで裕太も思い出した。夏祭りに男に絡まれていた時に助けてくれた人だ。
「あの時は、ありがとうございました」
お礼を言う時間もなく別れたので、改めてお礼を言った。
「気にしなくていいよ。では、ゆっくりしていってね」
そういって店員さんは厨房へと下がっていった。下がっていく姿を改めて見ると、長身の細身の体にロングスカートが似合っていて素敵だった。
「パンケーキ、ふわふわで美味しいね」
「ザッハトルテも、チョコが濃厚で美味しいよ」
3人でシェアしながら食べている。男である裕太も差別せずに、一緒に輪の中に加えてもらえるのが嬉しく感じる。
「これ、サービスね。若いからまだ入るでしょ」
さっきの店員さんが、プリンを人数分持ってきてくれた。
「ありがとうございます。いいんですか?夏祭りの時も助けてもらったのに、すみません」
浩ちゃんがお礼を言った。
「いつもハクジョ男子が来たら、サービスすることにしているから、気にしないでね。」
裕太は自分が男であることがバレてしまったことで、ちょっと恥ずかしく感じてしまった。なるべく声を出さないようにしていて、最近は少しは女子っぽくなってきた来たと思ったのに、ちょっとショックを感じた。思わず下を向いてしまう。
その様子を見て察したのか、店員さんは言葉をつづけた。
「私もハクジョ男子だったから、なんとなくわかるのよ。気分悪くしたなら、ごめんね。同類の人をみるとなんか嬉しくなって、話しかけちゃうの」
こんなに美人なのに男なの?裕太はハクジョ男子であることがバレた以上の驚きを感じた。
「え~、男に見えない!」
浩ちゃんと佳那も同じようで、驚いている。
「それと余計なことかもしれないけど、先輩からのアドバイスと思って。男であることがバレたかどうかはあまり気にしない方が良いよ。悪いことしているわけじゃないんだから、男でもスカート履いて何が悪いって思うぐらいでいいよ」
裕太の心を見透かしたかのようなアドバイスは的確だった。
「そうですね。ありがとうございます」
「バレるかどうかを気にするよりも、楽しんだ方がいいよ。他に3店舗お店持ってるから毎日はこのお店にいないけど、前もって教えてくれればくるようにするから何か相談したいことがあればいつでも来てね。」
そういって店員さんは去っていった。
「かっこよかったね。先輩。」
「頼れるお姉さんって感じ。」
裕太も浩ちゃんと佳那と同じ気持ちだった。パンケーキも美味しい、またこのお店に来ようと思った。
続・学校の制服がスカートだった件 葉っぱふみフミ @humihumi1234
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。続・学校の制服がスカートだった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます