第47話
「こんなはずじゃなかった」
待ちわびた、姉弟の生活。しかし、それ故に弟のことで悩まされる日が来てしまった。
(じゃあ、どんなはずだったの?)
浴室で全裸になった優奈は、 考えた。
智樹と結ばれることなどありえないはずなのに、妄想を膨らませようとしている。
(でも、もし私があの子を受け入れたら……)
想像するだけで身体の奥が疼くような錯覚を覚える。下腹部へと手を伸ばしかけたところで我に返った。
(だめ!何考えているの? 私はお姉ちゃんなのよ……!)
自分に言い聞かせるように首を横にふる。
では、自分が何を望んでいたのか。離れていた弟と再び一緒に暮らすことができればそれで満足だったのか?
(いや、そうでしょ!)
何か深く考えかけたが、 離れて暮らしていた家族が再び共に暮らすだけで充分だろう。それだけが望みであっても、何もおかしなことなんてないはずだ。
そう自分に言い聞かせて、思考を元に戻した。
優奈はシャワーを止めると、浴室から出た。バスタオルで身体を拭きながら脱衣所の鏡を見る。そこには姉の顔をした自分が映っていた。
(もう大丈夫みたい)
弟のことをどう思っているのかという答えが見つからないことに安堵を覚えると同時に、どこか寂しさのようなものを感じた気がした。
「もし、智樹が弟でなくクラスメイトだったなら、わたしはどんな気持ちを抱いただろう?」
「智樹と姉弟じゃなかったら?」
「智樹のことが、ただのクラスメイトだったら?」
「もし、智樹が同級生だったら……」
優奈は男が苦手というほどでもないが、あまりクラスメイトの男子と親しくしていない。 男子は距離が近くなるとすぐ告白してくるので、めんどくさくなってしまった。智樹は弟だからこそ近い距離にいてもストレスがかからないが、
「いや、最近はそうでもないか」
弟には悩まされっぱなしだ。
「智樹がクラスメイトだったなら、どんな風に接するんだろう」
「やっぱり今のような感じ?」
「友達みたいな関係かな」
クラスメイトになったら……優奈は想像してみた。しかし、なかなかイメージが湧かない。家族だから知っている智樹のいいところを知っていなければ、クラスメイトとしても特別な好意を抱いたりはしないだろう。
「いえ、ちょっと待ってよ?」
自分たちは普通の姉弟ではない。何年も離れて暮らして再会した。普通の姉弟より姉弟の関係性が薄らいだ関係だ。
「一緒に暮らしていれば、すぐに元の姉弟関係に戻ると思っていたけれど」
弟は自分を一人の女性として慕うようになってしまった。
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