第40話
「あっ、プリクラがある」
ポニーテールの子が指差す先には機械が設置されていた。
「撮らない?」
「賛成!」
「私もいいですよ」
智樹は断ろうとしたが、結局、一緒に入ることになった。
撮影が始まる。画面にはいろいろなポーズの指示が表示された。指示通りに動く。最初はぎこちなかったが、慣れてくると自然にできた。
出来上がったシールを受け取る。それを大事そうに鞄の中にしまった。
「次はどこに行く?」
「カラオケ!」
「ゲーセン!」
「映画!」
意見が割れた。なかなか決まらない。
最終的にジャンケンで決めることになり、勝ったのは智樹の隣に座っている子だった。彼女は嬉しそうだ。
目的地が決まると、その方向へ歩き出した。
智樹は二人に挟まれる形で、彼女たちについていった。
数分後、到着したのは映画館の前。上映中の映画のポスターが貼ってある。
「どれにする?」
「これなんてどう?」
「恋愛物なんだ……。苦手かも」
智樹は黙って見ていた。こういう場所は慣れていないので戸惑ってしまう。
「智樹君は何か観たいのある?」
突然、話しかけられて驚いた。
「いえ、特には……」
「じゃあ、これにしようよ」
智樹は返事をしなかった。
やがて、どの作品を見るか決まった。チケットを購入して館内に入る。
席に座ると、照明が落とされた。いよいよ始まるらしい。
スクリーンには予告編が流れ始める。智樹はぼんやりと眺めていた。
本編が始まると、智樹の意識は完全にそちらに集中してしまった。物語に引き込まれていく。
いつの間にか、他の観客と同じように没頭していた。
やがてエンドロールが流れると、場内に明かりがついた。
劇場内に拍手が起こった。それを聞いて我に返る。周りを見ると、皆、立ち上がっていた。智樹も慌てて立ち上がる。
智樹たちは映画館を出た。まだ興奮が冷めないのか、感想を言い合っている。
「面白かったね」
「うん。感動した」
「あの俳優さんの演技よかったよね」
そんなことを話しながら歩いていく。
智樹は何とも言えない気持ちになっていた。あんなに夢中になって見た映画は初めてかもしれない。
その後、ゲームセンターに行ったりして遊んだ。クレーンゲームの景品を取るため、お金を使い果たしたりしたが楽しかった。
夕方になり解散することになった。
智樹は駅まで彼女達を送っていくことにした。
別れ際、二人は名残惜しそうな顔をしている。
また会おうという約束をして別れた。
電車に乗って家に帰る途中、智樹は今日の出来事を思い出してみた。
こんな風に女の子と一緒に出掛けたことはなかった。だから新鮮だった。でも、どこか疲れてしまう部分もあった。
家に帰ってベッドの上に寝転ぶ。天井を見上げながら考える。
次の日の朝、目が覚めると外は曇っていた。雨が降っているわけではないのだが、どんよりとした空が広がっている。
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