第39話


「お待たせー!」


 背後から声をかけられたので振り向く。そこにいたのは二人の女生徒たち。どちらも智樹にとっては知らない相手だ。


 彼女たちと一緒に校門を出て、バス停へ向かう。道すがら会話をする。そのうち話題が好きなテレビ番組や芸能人の話になった。智樹も話に加わることができた。だが、心のどこかでは姉のことを想っていた。


(今日は何してるんだろう?)


 そんなことを考えながら相槌を打っているうちに、目的の場所に着いたようだ。


 バスは空いていた。四人掛けの座席に腰掛ける。


 智樹の隣にはポニーテールの少女が座った。向かい側にはショートヘアの子が座っている。二人はクラスメートらしく、仲が良いらしい。


 バスが動き出す。


 目的地までは十分程度なので、雑談しながら時間を潰すことになった。


「ねえねえ、聞いてもいいかな?」


 隣の少女が興味津々といった感じで尋ねてくる。


「なんですか?」


「智樹くんって、彼女いる?」


 いきなりの質問に面食らう。まさかこんな話を振られるとは思わなかったのだ。


「いないけど……」


 正直に答える。すると、向かい側に座ったショートカットの子が身を乗り出してきた。目が輝いている。


「じゃあ、気になる女の子とかは? 例えば同じクラスの子とか」


「…………」


 答えにくい質問だ。どうしようか迷ったが、無難な回答をしておいた。


「いませんよ」


「ホントに?」「ええ」


「そっかぁ。残念」


 本当に残念そうな声だった。どうして自分に好意を寄せてくれるのか理解できない。


「智樹君はカッコいいと思うんだけどね。なんかクールっていうかさ」


「そうですね。ちょっと近寄りがたい雰囲気はあるかも……」


「ふむぅ……」


 少女たちは考え込んでいる様子だ。


「でも、そこがイイ! みたいな?」


「わかるーっ!」


 盛り上がっている。


(俺はそういうキャラじゃないんだよな……)


 内心、苦笑するしかなかった。


 バスを降りると、商店街の中を歩く。アーケードになっており、大勢の買い物客で賑わっていた。


「ここだよ」


 先頭を歩いていた少女が立ち止まる。そこは雑貨屋だった。店の前に小さなテーブルがあり、その上にアクセサリー類が置かれている。手作り品らしい。


「可愛い……」


「だよね」「うん、いいかも……」


 三人とも目をキラキラさせている。どうやら気に入ったものがあるようだ。

店内に入ると商品を手に取って眺め始めた。


「これ、綺麗……」


「これは?」


「こっちの方が……」


 三人は夢中になって選んでいる。


 智樹も適当に見ることにした。


 しばらく経って、ようやく買うものが決まったらしい。会計を済ませると、プレゼント用に包装してもらった。


 店を後にした一行は、さらに街の奥へと向かう。ゲームセンターがあった。

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