第38話
智樹の顔を見ると、頬を上気させ、荒く呼吸していた。瞳は潤んでいる。
姉は意を決して、弟の剛直を握った。
熱い。火傷してしまいそうだ。
恐る恐る上下にしごく。
智樹は小さく声を上げた。
もっと反応を見たくて、亀頭を撫でたり、裏筋を刺激したりする。すると、さらに大きくなって、先走り液の量が増えた。
(気持ちいいみたいだ……)
姉は自分のしていることを客観的に見ることができた。
弟の顔を見る。そこには快感に耐える男の表情があった。普段の様子とはかけ離れた色っぽい姿にドキッとした。このまましばらくこの行為を続けててもよかったが、数分で智樹は限界が来たのか、彼は体を震わせた。
白濁液が勢いよく飛び出してきて、姉の手にかかった。どろりとして粘っこかった。射精が終わると、彼はぐったりとしていた。放心していた。
しばらくして意識を取り戻すと、慌てて起き上がった。姉の手についた精液を見て、ショックを受けている様子だったが、ティッシュを取ると丁寧に拭ってくれた。
「大丈夫?」
姉が心配そうな目で覗き込む。
「ああ……」
智樹の声は掠れていた。まだ体の芯に火が残っているようだった。二人は並んで座ったまま、言葉を交わすことなく時間を過ごした。
「姉ちゃん、ありがとう」
その日以来、姉弟の関係が変わったかというと、そうでもない。表面上は今まで通りだった。ただ二人の間に微妙な空気が流れるようになった。それは、ほんの小さな変化であり、おそらく両親は気がついていないだろう。
やがて新学期が始まり、智樹は優奈の通う学校の一年生となった。
中学校時代の詰襟の学生服は姿は卒業式の後以来、見ていない。姉と同じ配色の濃紺の上着とグレーのパンツ、単色のネクタイは学年ごとに色が分かれている。一年生は暗い赤色。一年上の姉は深い緑のネクタイをしている。
新しい学校生活が始まった。最初は戸惑うこともあったが、すぐに慣れて普通に過ごすことができるようになった。クラスメイトにも恵まれた。
入学式から数日経ったある日のこと。
授業が終わったあと、智樹は友人に誘われて街へ出かけることになった。駅前までバスに乗っていくらしい。
帰り支度を整え、教室を出る。廊下を歩いていると、ちょうど階段を降りてきた女子生徒がいた。智樹の姉である。彼女は一瞬だけ弟の姿を認めると、さっと顔を背けて足早に立ち去った。
少し寂しい気持ちになったが、いつも通りの態度だったので気にしなかった。
下駄箱で靴に履き替える。友人たちはまだ来ていなかった。一人で待つことにする。
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