第30話

 夕食を終えて自分の部屋に戻った後、智樹はベッドの上に寝転がっていた。ぼんやりと天井を見上げながら、ここ最近の出来事を振り返る。


 楽しい時間だったと思う。久しぶりに姉と一緒に遊んだ。だが、その一方で何か引っかかるものを感じていた。それは言葉では言い表せないものだった。


 智樹は体を起こして、勉強机の上に置かれたデジタル時計を見た。時刻は21時15分を示している。そろそろ風呂に入る頃合いだ。彼は立ち上がると、着替えを持って脱衣所へと向かった。服を脱いで浴室に入り、シャワーを浴びる。そして、湯船に浸かると手足を伸ばして寛いだ。


(あ~気持ちいい)


 思わず声が出そうになるが、ぐっと堪えた。代わりに大きな溜息を吐く。


 入浴を終えた後、智樹は自室に戻るとドライヤーを使って髪を乾かし始めた。髪が短いからすぐに終わる。それから歯磨きをして、ベッドに潜り込んだ。


(今日も色々あったな……)


 そう思いながら目を閉じる。すると、すぐに睡魔が訪れた。


 彼はその誘惑に逆らわず眠りに就いた。


 夢の中で智樹は一人の女性と歩いていた。そこはどこでもないどこかの草原にある丘で、誰も邪魔しに来ない場所であることだけは確かだった。


「ねえ、智樹」


彼女が優しく微笑みかけてきた。


「何?」


「私ね……あなたが好きだよ」


「おれも好きさ」


 智樹も笑顔を浮かべる。すると、彼女は少し恥ずかしそうな表情を見せた。


「じゃあさ……キスしてもいいかな?」


 女に問いかける。


「うん……」


 智樹は自分の方から彼女に顔を近づけていく。彼女の唇が自分のそれに重なる感触があった。その後、智樹たちは何度も口づけを交わした。やがてどちらからともなく舌を差し出し絡め合うようになる。互いの唾液を交換し合った。


 しばらくして、彼女はゆっくりと唇を離した。二人の間を銀色に輝く糸が繋いでいる。


「もう満足した?」


 女が尋ねると、彼は首を横に振った。


「まだ足りないよ」


 そう言って再び顔を寄せてくる。今度は先程よりも激しく求めてきた。智樹もそれに応えようとする。二人はそのまましばらくの間、お互いを求め続けた。


 夢の中では智樹は遠慮が無かった。


 二人とも同じ色の服を着ていた。同じベージュで、智樹は前びらきのシャツにパンツ、女はブラウスにロングスカート。どちらもゆったりとしたシルエットの衣服だった。


 抱き合いながら二人は大きな樹木の下に倒れ込んだ。


 智樹は恋人らしき女の乳房を揉みしだいた。その手を女の手がとめる。


「いやかい?」


 智樹が訊ねると、女は無言のまま首を横に振った。


「嫌じゃないわ、智樹」


「ありがとう」


 智樹はその手を振り払い、胸元に手を入れてブラジャーの中に指を入れた。乳首に触れると、既に固く尖っていることがわかる。それを摘まむように弄ると、女が小さく喘ぎ声を上げた。

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