第26話
「もともとお父さんとお母さんが離婚したからわたしたち離れ離れになったのよ。それが元に戻っただけだわ」
この会話を聞いたものならば姉が弟に強い執着を抱いていることは明白だが、姉は気づいていないかのように話し続ける。
「それにしても智樹くんは大人っぽくなったわね。小学生の頃ってもっと幼かった印象だけど」
「そりゃあもう高校生ですから」
「そうよね。すっかり背も伸びて体つきもしっかりしてきた」
智樹は自分の体をちらりと見下ろした。成長期だけあって身長は伸びたものの、まだ姉には届かない。ひょっとしたら彼女より低いかもしれない。
一方の姉の友人はすらりと手足が長く、胸も大きく、スカートからは白い太腿が見えている。そして全体的に肉感的で色香を放っている。智樹の目から見ても魅力的だった。
そんな女にじっと見られたら男なら嫌でも意識してしまう。
落ち着かない気持ちを紛らすように、彼はお茶を飲んだ。しかし、彼女の話はそこで終わらなかった。
「ねえ、智樹くん」
「はい?」
「あなた、彼女がいたりするの?」
いきなり核心を突かれて智樹はむせそうになった。
「な、なんですか急に?」
「だってこんなにカッコ良くなったんだもん。女の子たちが放っておかないでしょう?」
「いえ、別に……」
「そうなんだ。じゃあ今はフリー?」
「え……まあ」
「奈々、智樹をあんまり困らせないで」
見かねて優奈が割って入った。
「ごめんなさい、変なこと聞いちゃったみたいで」
彼女は素直に謝ったが、智樹のほうは複雑な気分だった。
それから三十分後。
部屋では姉たちのおしゃべりが続いていた。
話題の中心はもちろん智樹である。
姉たちは彼を誉めそやし、彼のことをあれこれ知りたがる。
智樹としてはいい加減うんざりしていたのだが、ここで逃げだして自室にこもってもまた姉たちに捕まるだろう。
それを考えると逃げるわけにもいかない。
結局、彼が解放されたのは午後5時を過ぎてからのことだ。
その間、ずっと話をさせられていたので疲れ果ててしまった。
部屋に戻ると布団の上に倒れ込んだ。
「ああ、やっと終わった」
智樹は大きく息をつく。
「おつかれさま。質問責めだったね」
「まったくだよ。奈々さんも何考えてんだか」
「それだけ智樹のことを可愛いと思ってるんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます