⒉ まず初めに

 この世は、四つの世界と、二柱の絶対なる神と、三人の王によって成り立っている。

 中心に人界ノスラデルス。

 右方に光の世界ルライトリア。

 左方に闇の世界テネストラ。

 下方に魔の世界アストラロッド。

 ルライトリアには光を纏う光の女王。

 テネストラには闇を司る闇の王。

 アストラロッドには魔を制覇する魔王。

 ノスラデルスはその中立場。逆に言えば全てから影響を受ける。

 それら全ての世界に行使する、破壊神と創造神。

 全てが歯車の様に合わせ重なり、調和を保っている。一つでも偏ればこの世は破滅へと向かう。何を以てしてこのように成り立っているか?

 それには太古の言い伝えがある。

 確かこのような話だった思う……。


 …………。

 数千年前には、

 混沌の世界──カオステラ──。

 と呼ばれる唯一の世界が存在した。

 この世の全てが混じり合った混沌の世界。

 光と闇、創造と破壊、善と悪。

 それら全てがカオステラに動乱していた。

 しかしいつしか、どこからとなく現れた一人の者が、混沌からこの世の英知を身に着けて神人となった。カオステラは神人となった者を偉大な王と認め、崇敬した。

 偉大な王はカオステラを治め、世界を再構成リスタートし、自分の理想形に一新した。

 最初に、世界を成り立たせる根本的な要素を分離した。

 光と闇を分離し、それぞれ光の世界と闇の世界として区別した。

 善と悪を分離し、善を上、悪を下と定めた。上は人界を指し、下は魔界を指す。

 不可抗力である創造と破壊を分離し、絶対なる創造神と破壊神として更生した。

 次に、生命が与えられた全ての者を分別した。

 光に適した生命を光の世界へ。

 闇に適した生命を闇の世界へ。

 善を余す者を人界へ。

 悪を余す者を魔界へ。

 最後に、全てに自由意志を与えた。

 全世界は永らく調和を保ち維持した。


 これが太古の時代から語り継がれている、この世の生誕話だ。

 初めからこうだったからこのように続けるしかないのだ。愚か者が作り上げた愚かな世界に、愚かな調和を保ち続ける。当然、この世に生誕した者は全て愚か者であり、命を全うした者は愚か以外の何でもない。

 だから、この世は愚かなのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る