第61話

「なぜ…」


「藤原さんが連れて帰ってきてください。藤原さんは優しいから」


「え、…いや…みとさんとほとんどしゃべったことないですよ?」


「いいからいいから!明日行ってください。はるちゃん、どこに泊まってるかわかる?」


「わからないけど、たぶん事務所の一番近くのホテルだと思います」


そんなわけで、仕事を休まされ…いやこれも仕事だが東京へ。

まだ異動して3ヶ月もしないけど。


ホテルのフロントで、モデル事務所のスタッフであることを伝えてなんとか入れてもらえた。


「藤原です」


「え…なんでここまで来ちゃうの!」


ドアを閉められそうになったので、慌てて足を入れて留める。


「あの、自分は沖縄に異動になったんですが、わざわざここに来ました」


「え?なにそれ?え?」


どうやらずっと行ってないようだ。


「みとさんはさぼってるんですよね?」


「…遊んでなにが悪いの?」


「沖縄にもう帰りましょう。嫌なことを無理やりしなくていいんです」


「え…いいの?」


俺はただ言いなりになっていた。自分を…捨てていた。


「はい」


「じゃあ、帰る」


「準備して今日帰れるようにしてください」


「えー片付け大変!」


みとさんを置いて、モデル事務所へ移動する。

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