第62話

「あれ!藤原くんだ」


事務所に着くなり、廊下でモデルのめいさんと会った。


「翼さんはいらっしゃいますか」


「いるよー?休憩室かな?沖縄はどうー?」


「楽しいです。めいさんは、撮影楽しいですか?」


「んー、それはどうかなー?でもめーは人気になりたいし頑張る」


「そうですか」


人気になりたい気持ち。それはわかる。だが…みとさんは違う。


「翼さん」


休憩室にいる翼さんを直撃。


「藤原くん、なにをしている?」


「みとさんは沖縄に帰るそうです」


「…所詮は親のコネ。努力もしない」


「沖縄では、モデルを続けますが、こちらの東京のモデルはやりません。とのことです」


「そうですか。でははるさんを寄越して下さい」


「いいえ。それはできません」


「モデルがいないと困るんだが?」


「自分でスカウトしてください。この件は社長にも連絡しておきますので。それでは失礼しました」


はぁ〜


言えた。ずっと、言えなかった。スカウトがどんなに苦労することか、あなたにはわからない。スカウトしても、この人はダメと突き返す。藤原くんは見る目がない。…そんなことはない。俺は、写真のコンテストで優秀賞を取ったこともある。被写体選びは得意なんだよ。


翼さんは、モデルを撮ったことのない素人と言っていたが、そんなことはない。風景を人に切り替えただけだ。

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