8-7

「妹に、この場所を聞いて来たのね……私が言うのも何だけど、貴方が間に合って良かったわ」

 岬から戻る途中、クラウスの前で、ニナは、ばつが悪そうに、視線を落とす。

「始祖の意向には、逆らえないもの」

 でも……と、そこでニナは視線を上げ、そして、深く、頭を下げた。

「ごめんなさい」

 ぎゅっと手を握り込んだニナに、クラウスは小さく笑って、言った。

「貴女に助けていただいたことは事実です。貴女には、感謝しています」

 ありがとう。

 静かな、しずかな、それは、断罪だった。



 夜が明けていく。黎明の幕が上がり、水平線から、朝陽が光の矢を放つ。

 強い海風が、クラウスの髪とローブをなびかせる。狼の姿になった弟が、クラウスを守るように、風上に立った。その背を、クラウスは、そっと撫でる。

 南へ続く道を、歩いていく。

 地図に記された、七つめの地。

 旅の終点。

 最後の地。

 魔法使いの始祖が、その場所にいる。


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