第4話 亡霊
「じゃあ、始めようか」
「お願いします」
次の日、俺は基地内のトレーニングルームにいた。
「名前は決めた?」
「はい。
「……わかった。練習を始める前にいくつか質問をさせて欲しい。生田所長から死神についての説明は受けたんだよね?」
「はい。全部聞いて、その上で死神になることを決めました」
生田所長から説明はしたと聞いていたが、一応聞いておきたかった。
「死神になることに後悔はない?」
「はい」
雪城さんは迷いなく答えた。
「死神が戦う敵、
「生物の魂です」
「その通りだ。外見は生物とは大きく違っているが、中身は生物の魂だ。
「……はい。できています」
「わかった。その覚悟が揺らいだ時、または疑問に思ったら死神としては死んでしまうことは覚えておいて欲しい」
「死神として……死んでしまう……」
「そうだ。死神を長く続けるのコツはまともでいないことだ。まともな精神では死神は務まらない」
「わかり……ました」
「確認は以上かな。まずは……そうだな。
「……いえ……」
「なんとなくのイメージでもいいよ」
「……生物が死ぬと身体と魂に分かれるという感じですか?」
「間違ってはいないかな。けど、一つ大きな認識の違いがある。それは死についてだ」
「??」
雪城さんは不思議そうな表情を受かべる。
「さっき雪城さんは生物が死んで身体と魂に分かれると言ったが、それは違う。身体に限界がくると身体と魂が分かれるんだ。魂になるということは肉体的な死ではあるかもしれないが、本当の意味で死ぬというわけではないんだ。魂が地上から消えて初めて死と呼べるんだ」
「なるほど……。魂が地上から消えるとどこに行くんですか?」
「わからない。地上ではないどこか、としか言えない。色々な説があるよ。天国か地獄に行くとか、無とか、転生するとかね。でも誰も体験してないからね。本当のことはわからないよ」
魂が最終的に行く場所は長年の謎である。しかし、この謎が判明することはないと俺は思っている。
「そうですよね……。誰も体験してないですもんね」
「人類の永遠の課題だろうな。とりあえず、死神になるにあたって死について正しく理解して欲しかったんだ」
「はい、理解できました」
「身体から分離した魂は、普通の人には見えなくなるが地上に存在する。それは一定の時間をかけて地上から消えることになる」
「えっ……。消えちゃうんですか?てっきり
「それは違う。魂の約7割は何もしなくても自然に地上から消えると言われている。しかし、残りの約3割は
「この世界のバランスを保つ役割という意味でいいんですか?」
「うん。それでいいよ。そして、地上に存在できる魂の数には限界があるんだ。限界を超えてしまうと世界のバランスが崩れる」
「世界のバランスが崩れる……ですか……?」
「ピンときていないって顔してるね。当然だよね、こんな話。誰が言ったのかわからないけど、地上に存在できる魂の数は決まってると言われているんだ。身体がある魂、身体がない魂、両方を合わせてだ。例えば身体がない魂が増えすぎるとどうなるかわかる?」
「えっと……地上に存在できる魂に限界があるってことは……身体がある魂が消えていくとかですか?」
「違う。正解は身体がある魂が生まれなくなる。だから、俺たち死神は自力で地上から消滅できない魂である
「……なるほど……。魂が
「魂が
「
「ああ。
「解析は進んでいるんですよね?」
「それはもちろん。だが、データの積み重ねをするだけでは俺たちが一番知りたいことはわからない。1000年以上経ってもわからないんだ」
「そんな昔から死神って存在したんですか?」
「うん。書物に今の死神と似たような人たちの記載があるらしい。実際は書物に残っていないだけでもっと昔から死神はいるかもしれない。それほど長く戦ってもまだ
「…………そんな未知の敵とどうやって戦えば……」
雪城さんは少し不安そうな顔を見せる。
「じゃあ、ここからは
「魂にふれることってできませんよね……普通……。そもそも魂って見れるんですか?」
「普通の人間は魂を視認することができない。魂を見るためには死を実感しないといけない。ただ、見えるようになっても、
「それが……死神なんですね」
「そうだ。死神というのは誰にもでもなれるわけじゃない。本当に死を感じた者にしかなれない」
「私は……なれますか?」
「おそらくなれる。
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