3.ある時

僕は舞音。人間だ。嘘、化け猫だ

元々は妖怪の町にいて、希少価値のある化け猫の僕は常に追われていた。ある時すっ転んでころころ転がった先、今の館の主、主様に拾われた。そこで僕はメイドとして姿を誤魔化し暮らしている。

主様に家事を教わり一通りこなすことができた頃、誰かが館に訪れた。珍しい。この地帯は妖怪が現れる可能性から人は恐れて来ないのに。


誰だろうと思い舞音は玄関へ向かう。玄関横の窓から外を見てみる。


っ!?


奴らだ。化け猫を捕まえようとする、奴ら。

なぜ?なんで見つかった?いや違う。

私は奴らの前で人間になったことは無い。

妖力をゼロにして、敵意も向けない。

少しの妖力でも奴らは気づく。


ガチャ。


『いらっしゃいませ。どちら様でしょうか』


「あぁ、この屋敷の人か?聞きたいことがあってな」


心臓が痛い。頭がキーンとする。


『聞きたいこととは?お答えできることであれば協力しますよ』


できるだけ、友好的に。敵意を出さないで

対話をする。


「助かるよ。で、聞きたいことなんだが、このくらいの黒猫を見なかったか?だいたい2日くらい前だ。俺らはその猫を探しているんだが」


ヴッ…。あぁ、吐きそうだ。痛い。痛い痛い痛い。僕じゃない。僕の事じゃない。猫。そう、ただの猫。僕は猫じゃない。


『猫…ですか。見てないですね…。この辺りは人間おろか動物すらもあまり見ないので…。お力になれず申し訳ないです』


言えた。大丈夫だ。大丈…


にゃ。


ふらりと足が立ちくらみ、倒れてしまった。

目を開けば布の下。モゾモゾと動いて気がついた。


(あ、猫。……猫!?)


猫の体になってしまったのだ。しかも奴らは目の前にいる。舞音は服の下から出たあと、慌てて奴らの足元を潜り外に出た。


猫になった理由は簡単だ。舞音のデフォルトの姿は猫だ。人になるには力を使う。ここに来てからずっと人の姿だった。つまりガス欠だ。妖力を使い切ってしまった。

いくら寝ていても、寝てる時も人の姿じゃ

力は貯まらない。やってしまった。


走る足を止め館から距離を取り奴らに向き直す。ギッと歯を食いしばり、目を使う。ギロッと睨む瞳は真っ赤。走ってる時に補給された妖力を使い波動を打つ。威力は弱いが体は鈍るだろう。


だが、勝てる見込みは無い


奴らは武器を持ってきてない。

袋を持ってる。それに僕を入れるみたいだ


ジリジリと詰められて、ガス欠してる僕は手も足も出ない。主様はきっとお仕事中…

舞音はキュッと目を瞑った。


銃声


どこからか、発砲音が聞こえた

恐る恐る目を開けると

奴らが倒れていた。僕はの目の前で

頭から、血を流して……


顔を上げて玄関の方を見ると

主様がハンドガンを構えていた


助けられた


急いで走って主様の足に擦り寄った

主様はひょいと舞音を抱き上げて

優しく抱きしめてくれた

主様の手は、震えていた

この世界では殺人なんてよく起きること

でもきっと主様は初めて人を殺したんだろう


舞音を守るために



舞音が部屋で寝ている間に

主様は奴らの死体を袋に詰めて

妖怪の町の方に捨ててきたらしい。

玄関に置かれた僕のメイド服を綺麗に畳んで

枕元に置かれていた。

人化する時、妖力にも気をつけないとな

(寝ている時は猫でいよう…)


そうして舞音は追われる日々を抜け出した

このまま館で、平和に過ごそう。


そう思ってたのに。

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