症例④ 「大島 明美」

藤野と西條は“夜更かし”に来ていた。

 せつの一件以来、二人は前よりよく話すようになっていた。

 今日はたまにある奥田部長が当直の日なので、二人は飲みに来ていた。奥田部長の年齢を考えるともう当直しなくても良いのだが、急患を診察していないと勘が鈍るとのことで自主的に当直にはいっていた。

 もらえる休みは貰っておかないと、心身ともに病んでしまう。休めるときに休んでおくのは、忙しい人間の常識だ。

 西條がここで食べた春巻きを気に入ったらしく、また“夜更かし”に来てしまった。

一人で居酒屋に入るのは気が引けて、藤野を誘ったという何とも西條らしい考えだった。

 自由奔放というか、女王気質というか。

 ただそれに従ってついていく自分も、家来気質だなと藤野は思う。

 二人はカウンター席について、生ビールを二つ頼んだ。

「今日もお疲れさまでした。」

二人は冷えたグラスで乾杯した。

「ありがちだけど、仕事慣れた?」

藤野は定番の質問を投げかけた。

「カルテの使い方とか、院内のルールとかに慣れるのは面倒だけど、それはやっていくしかないでしょ。それ以上にやりがいがあるから、大学病院よりもずっと楽しいですよ。」

「それはよかった。」

藤野はお通しの茄子の煮浸しを食べながら、うんうんと言っていた。

「藤野先生はさ、なんでこの病院に飛ばされちゃったんですか?」

西條は、藤野が訊きたかった質問を初球で投げてきた。

「なんでって。大した理由はないけどな。」

「えっ。そんなことありますか?だってこの病院は帝東大学附属病院から左遷された人がくる場所なんですよね。大学でも有名ですよ、今年のタツノオトシゴは誰だって話題になるから。」

「タツノオトシゴ?」

「そう、タツノオトシゴ。龍明総合病院に左遷される人をそう呼ぶんです。なかなかセンスありますね。そしたら今年は私がタツノオトシゴだったんです。」

「馬鹿馬鹿しい。そんな話してるんだったら、少しはここの人不足を解消する方法を考えてくれよ。」

藤野はジョッキを一気に空にしておかわりを頼んだ。

「それで、タツノオトシゴになる人はみんな理由があるんです。私と奥田部長は教授に歯向かったから。」

「どうして奥田部長の左遷理由を知ってるの。」

「私が教授と口論になった時言われたからですよ。『お前は反抗的すぎる。奥田そっくりだ。』ってね。」

西條もジョッキを煽った。

「なるほどね。たしかに部長も教授と喧嘩して、ここに飛ばされたといっていたな。その時はこの病院には何もなかったと言ってたよ。人も機材も患者も。それをここまで大きくしたのは自分だって飲むたびに自慢されるから、、俺も良く知ってる。」

俺は耳を塞ぐポーズをした。

 実際、奥田部長の功績は偉業とも呼べるものであった。

 この地域にはもともと病床をもつ病院が龍明総合病院しかなかった。しかし、医療者不足と赤字続きで病院としての機能を失っていた。大規模なベッド数があるにも関わらず、稼働率は三割程度であった。

 それを奥田部長がやってきて、この病院を立て直した。手術もできるようになった。

 奥田部長はこの町の英雄といっても過言ではないと思う。

 それでも、院長は向かないといって外科部長のままで院長は他の人にお願いしたと聞いている。

 教授は当然面白くない。しかし、関連病院として人を全く送らないことも体裁としてできない。だから、問題児の送り先としているのだ。

 要は教授の単なる嫌がらせであり、その結果がタツノオトシゴである。

「でも本当に凄い人ですよね。私もそれくらい反骨精神持たないと。やられっぱなしじゃ嫌だから。」

彼女の顔は少し赤みを帯びていた。病院にいる時の鋭い目が、少し垂れている。

「西條先生は、その、何がそんなに口論になったの。」

「えっ。」

西條の目尻が少し上がった。

「いや、嫌だったら言わなく良いよ。俺も言ってないし。」

 嫌な間が空いた。こういう時に限ってジョッキが空になっている。

 最初に会った時には、笑って話していたが、やはり気にしているのか。

やめとけばよかったと藤野は思った。

「私ね。杉田教授の愛人だったの。」

彼女は必要以上に大きい声でいった。

 藤野は絶句した。人間驚き過ぎると声がでないことが証明された。

すぐさま周りに病院関係者がいないか確認した。幸い知り合いはいなかった。

「そうなんだ。杉田教授って奥さんと子供いるからそれってつまり。」

藤野は努めて冷静に、そして小声で彼女に訊いた

「そう不倫なの。」

 西條は藤野の配慮をぶち壊して再び大きな声で藤野に言った。

 周りのお客が二人の方をちらちら見始めた。

 西條は見た目に反して、アルコールには滅法弱いようだ。

「彼は私の手術スキルを買っていたの。彼頭は良かったけど、手術は平凡だった。」

西條は頬杖をつき、テーブル上のジョッキの水滴を指でなぞっていた。

「ちなみに彼はセックスも月並みだったの。」

西條は藤野の耳もとで囁いた。

 藤野はビールが気管に入りむせた。

 西條はそれをみて、嬉しそうに笑った。

「そして私は彼の教授という立場を利用して、多くの患者の治療にあたりたかった。権力って大切よ。地位がないと患者も医者も医療資源も集まらない。彼、ロボット手術の第一人者でしょ。ロボット手術はソロサージェリー(術者一人で手術すること)を可能にする。最終的には遠隔操作が可能になるわ。そうなれば全国どこでも高水準の手術が受けられる。ただ、そうなれば洗練されたロボット外科医の教育が必要になる。私はその教科書作りをやっていたの。もちろん著者は彼だけど、私はそれでよかった。日本の医療が良い方向にむいているならいいの。」

 西條は酔っ払いながら話していたが、藤野は真面目に話を聞いた。

「私と彼はそうやってお互いを利用していた。そのうちに恋愛感情らしきものが生まれるのは、そんなに変なことじゃないでしょ。」

「そうだな。」

「楽しかったわ。相手の奥さんと子供には悪い気がしたけど、好きな人と日本の医療の未来を創造していると思うと、忙しい毎日が幸せだった。」

 西條の笑みを浮かべた横顔は、仕事を生きがいとする女性の強さと恋する少女の愛らしさを映し出していた。

 幸せな記憶を旅する女性はこうも遠くに感じてしまうのか。

「でも、ウィンウィンの関係からスタートした恋愛は利用価値がなくなった方が負けるの。教科書が九割完成したところで別れを告げられたわ。律儀にお金まで用意して。彼、口封じをしようとしたの。」

 西條の表情が曇り始めた。

「ショックだった。彼が私のことをそんな風に思っていたなんて。だからお金を突き返して、ビンタしてやったわ。とにかく悲しかった。私は日本の医療のために、たくさんの患者を救うためにやってきたのに。賞賛やお金のためにやっていると思われていたことがとにかく悲しかった。だからタツノオトシゴになったの。」

 西條はふうと一息つき、藤野の方に身体を向けた。

「ああ、すいません。敬語も使わず、失礼しました。でも話せてすっきりしました。」

「大変だったんだね。」

 藤野はこんなことしか言えない自分が恥ずかしかった。

「大学の人にはこんな話できないし、一応不倫になるから家族にも話せなくて。」

 また間が空きそうになるところに、店主が水の入ったコップを二人に出してきた。

 西條は背もたれに身体を預けて、もらった水をゆっくり飲んだ。

「俺はね、実は、、、」

今度は藤野が話を始めようとした。

「言わなくていいですよ。」

 西條は遮るように藤野に言った。

「私が理由を言ったから、自分も言わないといけないって思ったのなら言わなくて話さなくていいです。藤野先生が自分の気持ちを吐き出したい時に、飲みに誘ってください。」

「じゃあここの春巻きを食べたいっていったのは。」

「そこまで言わせないでください。でも、ここの春巻きは本当に美味しいですね。」

そう言って、西條は美味しそうに春巻きに噛みついた。

 店主はそれなりに嬉しそうだった。


「今日僕の外来に来た三十二歳女性です。結論から言ってしまうとS状結腸癌によるイレウス(腸閉塞)で人工肛門造設が必要になります。両葉に多発肝転移もあるため、人工肛門造設の後、化学療法を予定します。」

カンファレンス室で、藤野は科内のみんなに説明した。

金曜日の夕方、消化器外科はカンファレンスを毎週開いている。自分たちの外来患者で、診療に難渋している患者を相談するためだ。

答えのない分野に関して、人の意見を聞くことはとても勉強になる。医師は根拠に基づいた診療を行わないといけない。自分一人で集めた知識や情報は、時としいて偏りが生まれる。だから、他者からの視点を取り入れることが、医師にとっては大切なのだ。

「ステント留置した後に原発病変の切除し、その後化学療法するのはだめなのか?」

佐々木が言った。

「ステントは狭窄が強く、技術的に留置困難でした。」

藤野は素早く答えた。

「そうか。そうしたら人工肛門になるなぁ。」

奥田部長は背もたれに身体を預けながら言った。

「この人見たことあるわ。あの、なんだっけ。小島、、、?」

西條が写真を見ながら頭を悩まし、なんとか思い出そうとしていた。

「小島成美。本名は大島明美で、女優さんです。」

藤野は付け加えた。

「そう!小島成美!最近みないけど、一昨年凄いでてたましたね。あのドラマ有名ですよね!えーと、なんだっけか。」

西條はまた頭を抱え始めた。

「『あなたの死が近い』ですか?」

カンファレンスに参加している男性研修医の牧野が割って入った。

牧野は高身長で顔の整っているいわゆるイケメンドクターであった。その上、愛想もいいためおばちゃん看護師からも人気が高い。

「そう!あれ泣けました。先生方観てないんですか?」

西條先生は中年男性陣を見渡した。

 奥田部長、佐々木、藤野の中年男性陣は全員首を縦に振った。

「少しは見たほうがいいですよ。患者とのコミュニケーションにも繋がるし、ねえ。」

西條は牧野をみて同意を求めた。

「最近の子は皆同じにみえるからなあ。西條先生の方が綺麗なんじゃないか。」

奥田部長は笑いながら言った。

「からかうのはやめてください。セクハラですよ。」

西條は眉間に皺をよせて奥田部長を睨んだ。

「はいはい。」

奥田部長は苦笑いで返した。

「それでこのカンファに出す問題点は?方針は決まってそうだけど。」

佐々木は藤野に問いかけた。

「問題は彼女が人工肛門を拒否していることです。」

藤野は困った素振りをして言った。

「でもさすがにこれは一期的手術難しいぞ。口側腸管の拡張が強いし、炎症もある。吻合不全のリスクはかなり高いよ。」

佐々木はあご髭をさすりながら指摘した。

「もちろんその説明はしてあります。それでも、彼女は人工肛門を断固拒否しているんです。何とか説得は続けます。」

「方法はそれしかないぞ。このままずるずる長引いて大腸穿孔してしまっても結局人工肛門造設になる。」

「はい。早急に納得してもらいます。」

 藤野は佐々木にそう言ったものの、説得方法に関してはなんのアイディアも浮かんでいなかった。

 藤野が西條先生の方をみると、彼女は不機嫌そうな顔をしていた。

 カンファレンスが終わった後、藤野は西條に話しかけに言った。

「西條先生。先生はどう説得したらいいと思う。相手もやりませんの一点張りで、会話する余地もないんだ。」

「そんな人は、穿孔してしまえばいいんです。死ぬか生きるかになってからじゃないと、そういう人は自分の置かれた立場がわからないんですよ。先生もある程度説得したら、あとは考えすぎない方がいいですよ。」

 西條の返答は意外に冷たいものだった。

 藤野の心にさざ波がたった。

「ちょっと西條先生。それはあんまりじゃないですか。」

 藤野は西條にむかって言った。

「私は生きれるのに生きようとしない人が一番嫌いなの。多くの患者が厳しい治療をうけながら頑張って生きようとしている。どうして簡単に死のうとする人に時間を費やさないといけないの。私は自分の力を、生きようとしている人にだけ使いたいの。」

 西條はそう言い放って部屋を出ていこうとした。

 藤野は西條の腕をつかみ、それを阻止した。

「彼女は生きたいと思っているよ。ただ、開けていたはずの道がいきなり狭まって、暗くなって。彼女は目を背けてしまっただけなんだ。」

 藤野は自分が熱くなっていることに気づいた。

 西條にはなぜか、そんな寂しい考えを捨ててほしかった。

西條は黙って聞いていた。

「だから俺らは、その狭い道の先はまた違った風景が待っていると教えてあげることも必要なんじゃないか。そうじゃないと患者は心配だろう。」

「そうしたいならそうしてください。私は私のポリシーに従ってやってるので。」

 西條は冷たい視線を藤野に送り、藤野の手を払った。

 藤野は心の底から込み上げた言葉がそのまま口から飛び出した。

「あんたみたいに、恵まれた人間にはわからないか。死にたくなるほど辛い人の気持ちなんて。」

 藤野は諦め顔でいった。

 西條は何も言わずカンファレンス室を出ていった。

「勝手にするさ。」

藤野は西條が出ていった後の扉に向かって呟いた。

 藤野は頭を掻きながら、小島のいるVIP用の病棟のナースステーションに向かった。


「絶対に人工肛門は嫌です。」

 藤野が話かける前に小島は藤野に言い放った。

 ベッドに座る彼女が小島成美。女優ということもあってスッピンでも整った顔をしており、純粋に綺麗だと思った。小顔で、厚めの唇と左の目元のほくろが特徴的な女性である。きっと笑顔の時はとても可愛らしい表情になるはずだが、藤野はまだ一回も拝見できていない。

藤野にむける敵意むき出しの視線も演技であってほしいと願うばかりだ。

「僕も人工肛門にしなくてすむならその方がいいです。でも、こればっかりは生きるために仕方がないんですよ。」

藤野は小島の目をみて丁寧な口調で伝えた。

「人工肛門にするくらいなら死にます。」

小島の眼はまっすぐ藤野を見ていた。

 取り付く島もなく、話し合いは相変わらず平行線だった。

「なんでそんなに嫌なんですか。もちろんあなたのような若い女性が人工肛門を嫌がる気持ちはわかります。それでも、死を覚悟するくらい嫌なのは、ただ生理的に拒絶しているだけじゃないしょう。」

「あなたには私の気持ちは絶対わからない。私を説得している時間があるなら、人工肛門をつくらなくても済む方法をはやく考えて。」

小島は質問には答えず、病室から出ていった。

 小島が部屋を出ていく時、ちょうど彼女のマネージャーが部屋に入ってきた。小島はマネージャーの男を無視してそのまま出ていった。

「小島さん。」

マネージャーが廊下にむかって声をかけるも反応なく、彼は藤野の方をみて会釈した。藤野も頭を下げた。

 マネージャーの男は藤野よりも若々しくみえる、短髪黒髪の良く似合う爽やかな方だった。藤野が年齢を訊くと、藤野と同い年で衝撃を受けた。やはり医者という仕事は人を老けさせるのだろうと少し悲しい気持ちになった。

「小島がいつもお世話になっております。私、小島のマネージャーの田村と申します。またなにかご迷惑をおかけしましたか。」

田村は名刺を藤野に渡して、丁寧な口調で尋ねた。

 藤野も自分の名刺を田村に渡した。

「いえいえ、迷惑なんて。人工肛門の受け入れがやはり難しいみたいで。若い女性の方には珍しいことではないんですけどね。」

「そうですか。すいません。」

田村は重ね重ね謝った。頭頂部には白髪が目立った。

「小島は仕事熱心で真面目なんですが、真面目過ぎるんです。四月から新しいドラマ始まって久々のレギュラー出演なんです。『ひまわりとあじさい』っていう連続ドラマなんですけど知ってます?」

 田村は藤野の顔色を窺うように尋ねてきた。

「すいません。存じ上げないですね。」

「あ、いえいえ。寧ろこちらこそすいません。お忙しくてドラマなんて観れないですよね。失礼致しました。」

 田村はここにきてからずっと謝っている。芸能業界にいるとこうなってしまうのだろうかと藤野は思った。

「長いことドラマ起用がなくて本人も辛かったと思うんです。そして遂に出番が回ってきたと思ったら今回の病気が見つかってしまって。本当に残念です。」

 田村はあからさまに落ち込んだ。

「人工肛門があるとやっぱり演技できなくなるんですか。」

「そうですね。特に小島は悪女役で出ていて、妖艶さをだすために露出をすることが多いんです。そうなると、お腹に人工肛門がついていると。」

「そうですか。」

 藤野もため息をつきたくなった。

 人工肛門を造設しないと小島の命が危ないし、造設しても小島には憎まれるだろう。

 どちらにしても患者が悲しむ手術なんて、誰もしたくはないだろう。

「それでも本人の命のためには仕方ないですよね。」

 田村は口角を必死に上げた。

 そして小島を探してくるといって病室を出ていった。

 命と生きがい。どちらが無くなっても人は生きていけない。


 西條は夜の病棟で書類作業をしていた。

 夜勤の看護師達は病室を回っていたため、ナースステーションには西條一人だった。

 新しい病院勤務が始まってから、大学病院ですんなりやっていたことも慣れないせいで時間がかかってしまう。

 いつもなら藤野に質問解決しているが、先日の一件で話しづらくなった。

 時間ばかりかかって苛々してくると、さらに効率が悪くなった。

「はぁ。」

 西條はため息をついた。

 自分でもこの書類だけが苛立ちの原因ではないことはわかっていた。 

『あんたみたいに、恵まれた人間にはわからないか。死にたくなるほど辛い人の気持ちなんて。』 

 あの時何とも思わなかった言葉が、自分の心に予想以上刺さっていることに今頃気がついた。

 西條が昔の自分を回想していると、横から聞き覚えのある声がした。

「仕事熱心ですね。」

 江藤が缶コーヒーを二本もって立っていた。

「江藤先生こそ。」

「今日は藤野と一緒じゃないんですか?」

 江藤はそう言っていたずらっぽく笑い、缶コーヒーを西條に渡した。

「そんないつも一緒にいないですよ。カップルじゃあるまいし。」

「そうかな。仲いいなぁと思っていつも見ていたんですけど。」

「やめてください。セクハラですよ。」

「何をやってもセクハラになってしまう世の中ですね。でもウェルテスも言っていました。相手が嫌だと思ったらハラスメントだと。」

「それ、本当にウェルテスが言ってます?」

 二人は笑いながら肝コーヒーで乾杯した。

「藤野と何かありました?」

「どうしてですか。」

「今日藤野と会ったけど、いつもより元気がなさそうだったから。藤野がマイナスの感情を顔に出すのは珍しい。少なくとも西條先生が来るまではそんなことはなかったんです。だから西條先生と何かあったのかと思いまして。」

「鋭いですね。」

「藤野とはそれなりに長い付き合いですから。」

 江藤は満足気に言った。

 西條は観念したように江藤に今日あったことを話した。

「藤野がそんなことを言ったんですか。」

 江藤は考え込むように腕を組んで言った。

「たしかに藤野先生の言っていることは大切なことです。しかし、それはあくまで理想論であって医療現場はそんなに甘い所じゃない。たくさんの命を救うためには、諦めるところは諦めないといけない。私はそう思って働いてきました。それは間違っていますか。」

 西條は問い詰めるように江藤に訊いた。

「僕も西條先生の言ってる通りだと思います。しかもこの病院は野戦病院みたいに忙しい。割り切らないとやっていけないと思います。」

 江藤は頷きながら西條に言った。

「ただねあいつは、そういう死にたがりを放っておけないんです。それで自分が忙しすぎて倒れそうになってるのに。馬鹿でしょ?」

 江藤は笑いながら言った。

 西條は反応に困った。

 すると西條はある話を思いだし、切り出した。

「それは父親の件が関係しているんですか。」

 西條は悩んだ末、江藤に尋ねた。

「よく知ってますね。」

「噂程度に大学病院で聞いたくらいです。詳しくは知りません。」

「そうですね。きっと関係していると思います。」

「何があったんですか。」

 江藤は藤野の過去を西條に話し始めた。

藤野の父は藤野と同じ外科医で高橋総一郎と言った。龍明総合病院のように忙しい田舎の病院で、夜中休日関係なく、仕事していた。

ある夜、術後の四〇代の男性患者の容態が悪くなり再手術になりそうで、高橋は病院に呼ばれた。その日、台風の影響で天気は十年に一度の大荒れ。それでも、高橋は車で病院に向かった。

その途中で、高橋はあろうことか車で人を轢いてしまった。

その人は八〇代のおばあさんだった。重度の認知症でたびたび徘徊を繰り返していた。その日も、ひどい雨の中を一人歩きまわっていた。

ただでさえ、灯りのない道を雨で視界不良の状態で運転して、突然予期せぬ飛び出しがあったらだれが避けられるだろうか。

高橋の乗っていた車は、おばあさんを轢いた後そのまま左にあった田んぼに転落した。意識のあった高橋はなんとか救急車と警察を呼んだが、結果としては最悪のものであった。

おばあさんは頭部外傷によるくも膜下出血により死亡した。

そして急変してしまった患者は、手術ができなくなり急いで転院先を探した。

しかし、もともと周りには緊急手術できる病院はなく、悪天候で転院搬送自体に時間がかかった。

結局受け入れ先は見つかったものの、三時間の転院搬送中に心肺停止に。そのままその患者も亡くなった。

高橋自身はこの事故で、脊髄損傷による下半身完全麻痺になった。刑事事件としては、自動車運転過失致死傷罪により執行猶予付きの判決となった。

そして高橋は最も悲しい選択肢をとってしまった。

病院の手術室で大量の鎮静薬のプロポフォールと筋弛緩薬のロクロニウムを自分で点滴静注して自殺した。自分に麻酔をかけ呼吸不全となり亡くなった。

 愛されていた町の外科医は、犯罪者として生涯を終えた。

 江藤はぬるくなったコーヒーを一気に喉に流し込んだ。

「藤野が外科医を目指した動機はおそらく誰も知らない。でも、この事故が彼の人生を大きく変えてしまったのは間違いないと思います。」

 江藤は目を落として言った。

 西條は話を聞くことしかできなかった。悲しむことも憐れむことも、平和に生きてきた自分がやってはいけないように思えた。

「医療業界は狭い世界です。犯罪者の外科医の子供が医者になれば、その足枷をひきずって生きなければなりません。大学病院で藤野が働いていた時、藤野の診療に不満をもった患者が、藤野先生を調べていました。そして、父の高橋先生の事に辿り着き、外来の待合室で大声で言いふらして回りました。わざわざビラまでばらまいて。」

 江藤の声に力が入っていた。

「もちろん藤野の診療には全く落ち度はなく、その患者のただの逆怨みでした。それでも大学病院も風評被害を恐れ、すぐさま藤野をここに異動させました。」

 江藤はそう言って立ち上がって空き缶をゴミ箱に入れた。

西條にはその後ろ姿は震えているように見えた。藤野がどんな過去を持っていても江藤にとってはかけがえのない大切な友人なのだろう。

「あいつの人生は前途洋々じゃなくて、常に障害に阻まれ道が狭まっていったんだと思います。だから普通に生きている人が羨ましく感じるのかもしれませんね。」

 江藤はその普通の人に自分が入っていることを自覚しているのか、少し寂しそうだった。

 夜勤の看護師がナースステーションに戻ってきた。

「あ、これはオフレコですよ。」

江藤はいつもの笑顔に戻して、口の前に人差し指を立てた。

「はい、わかってます。お話ありがとうございました。」

西條は頭を下げた。

 江藤は片手をあげたまま、エレベーターの方に消えていった。

 西條の口から重いため息がでる。

 蒸し暑い夜が、余計に頭を重くした。

 時間を巻き戻したい。本気でそう思った。


 週末は手術がないため、藤野は朝ゆっくりと出勤するようにしている。目覚ましのタイマーが普段より二時間遅いだけで、藤野は幸せな気持ちになる。

 医局に着くと、西條が自分の机でイヤホンをつけて真剣な顔でパソコンを眺めていた。

 後ろからパソコンを覗くと、男女のベッドシーンが流れていた。

 藤野は口を押えて、何も見なかった感じで奥の自分の机に荷物を置いた。

 西條は藤野に気がつき、動画を静止しイヤホンをとった。

「おはようございます。」

 西條が笑顔で藤野に挨拶した。

「おはよう。」

 藤野の声は少し上ずってしまった。

「これやっぱりいい作品ですよ。藤野先生も是非見た方がいいですよ。」

 西條は真顔で絶賛しながら画面を指さした。画面は丁度男女の激しいキスシーンで止まっていた。

「そうなんだ。朝から結構刺激的な物みてるね。ちょっと意外でした。」

「藤野先生。なにか勘違いしてませんか。」

「確かに。西條先生が思ったよりオープンな方だとは知らず、勘違いしていました。」

 藤野は画面と西條を交互に見ながら言った。

 西條はため息をついた。

「これはそういう動画じゃないんです。小島さんの昔でていたドラマですよ。ほらこの人、小島さんでしょ。」

 西條は画面の中の女性の方をマウスで指した。

「あ、本当だ。普段と雰囲気違うから気付かなかったな。」

 藤野は笑ってごまかした。

「変態。」

 西條は早送りして違うシーンに変えた。

「なんだかんだ、小島さんのこと気になってるんですね。」

 藤野は嬉しそうに言った。

「マネージャーの田村さんに土下座されちゃいまして。」

「えっ」

「たまたま病院の外で田村さんに会ったんです。その時に小島さんにどうしても手術をうけてほしいけど、自分が言っても全く聞く耳を持ってくれない。だから私から説得してくれないかって田村さんにお願いされたんです。同じ女性なら話が通じるかもしれないって。」

 西條は頬杖をついて、動画の中の小島をみた。

「私は一度、本人が決めることなのでって断ったんですけど。土下座して頼まれて。それだけされて何もしない人なんていないでしょ。」

 西條は頬が緩んだ。。

「それに私、彼女のファンだから、次の作品も観たいですし。」

 西條はそう言って、またイヤホンをつけてドラマの世界に入っていった。

 藤野がウォーターサーバーから水を汲もうとした時、藤野のPHSが鳴った。

 白衣から取り出し、藤野がでると看護師の大きな声が響いてきた。

「大島明美さんが強い腹痛を訴えています。先生来てください!」

 藤野は一瞬誰の事かわからなかったが、すぐに小島の本名であることを思い出した。

 看護師の慌てようから、緊急性がありそうであった。

 電話から漏れた声が、イヤホン越しに西條にも届き、二人は病室に急いで向かった。

 病室につくと、小島はベッドの上でお腹の押さえながら苦しそうに丸まっていた。

 藤野はお腹を触ると、痛みが腫瘍の位置と一致していた。

 隣では田村が泣きそうになりながら、必死に小島の背中をさすっていた。

「穿孔しているかもしれない。痛み止めをいれながらすぐにCTに行こう。」

 藤野と西條は看護師に指示を出しながら、CT室に向かおいとした。

 小島が藤野のズボンを掴んだ。

「手術はいや。私まだ何も残していないの。」

 小島は痛みで声が震えていた。

 ズボンをつかんだ小島の手を田村がぎゅっと握った。

「もう何も残さなくていい!世間から君が忘れられても、僕は絶対に忘れないよ。だから、だから生きようとしてくれよ!」

 田村は祈るような声で叫んだ。涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃになっていた。

 小島は力をぬいて、手を離した。

 藤野達は急いでCT室に向かった。

「穿孔はしてませんが、腸管拡張は強くなりましたね。腫瘍の部分の炎症も強くなっています。」

 西條はCT画像を見ながら、藤野に言った。

 もう時間の猶予はなかった。

「正直な話、小島さんの大腸はもう限界です。いつ破れてもおかしくない。」

藤野は真剣な顔で言った。

「成美さん。今回のドラマは諦めよう。命には代えられないよ。」

 田村も同意見だった。

 小島はベッドの上で枕をかかえて体育座りで黙り込んでいた。

 かれこれ三〇分はこの状態が続いている。

 小島の痛みは相当なもののはずだった。それでも我慢しているのは、彼女の夢への固執の強さを示していた。

 全員が黙り込んでいると、急に病室の扉が開いた。

 西條がそこに立っていた。だけど、どこかいつもと雰囲気が違う。

 西條は部屋の中に入って、腰に手を当てながら小島を指差した。

「あなたの寿命は人工肛門造設して化学療法をしてもあと二八二日。一年もないわ。自分のドラマの再放送はみれないくらいの余命ね。でもドラマ撮影はほぼ確実にやりきれる。もし人工肛門を作らず、意地を張り通した場合の余命は五日。この感じだと近々腸管が破れるのね。」

 西條は不敵な笑みを浮かべて小島に向かって言い放った。

「あなた何を言ってるの。」

「私ね、見えるの。あなたの寿命が。信じようと信じまいとどっちでもいい。ただ事実を伝えているの。その上で、どちらが賢明な判断か、あなたならわかるでしょ。」

 西條のやっていることはめちゃくちゃだった。しかも余命予知をこんな所で暴露してしまって。

 小島と田村はぽかんとしていた。

 藤野はどうすべきか考えていたが、もちろん答えなんて出るわけもなかった。その間に西條はまた爆弾を投下した。

「あなたの死が近いわ!」

 西條は声を張っていった。

 藤野は飛び出して西條を口に両手をあてた。

「ごめんなさいね、小島さんと田村さん。ちょっと彼女最近疲れてて。それに、えーと。」

 藤野は思いつく限りの言い訳を並べようとした。

 西條は藤野の手を振りほどこうと暴れた。

「ふふっ。」

 藤野と西條は取っ組み合いをやめて、小島の方をみた。

 小島はお腹を押さえながら笑っていた。

「こっちはお腹痛いのに、笑わせるのやめてよ。そんな下手な演技見たの久しぶりだわ。」

 小島は笑いすぎて涙がでていた。

 西條もさっきとは違う穏やかな顔で笑っていた。

 藤野はついていけず、田村の方に救助を求めて目を向けた。

 田村は藤野の方に近づいた。

「これ昔小島が主演でていた“あなたの死が近い”っていうドラマのお決まりのシーンなんです。」

 田村は藤野の耳元で、小声で嬉しそうに説明した。

 藤野は西條が本気で狂言を言い始めたのかと思った。小島が馬鹿にする演技にすっかり引っかかってしまったことが悔しかった。

 西條は椅子に座り、小島の顔を見て話し始めた。

「一昨年の小島さんのドラマ、当時私見てたわ。細かい感情を表情や仕草で表現する、すごい女優さんだなって思った。」

 小島は笑うのをやめ、黙って西條の言葉を聞いていた。

「あなたの強みは外見じゃない、演技力なんでしょ。当時の監督さんのコメントも見たわ。小島さんは本当に楽しそうに演技してたって。」

 西條は優しく声をかけた。

「あなたがそんなに手術を拒否しているのは、容姿が変貌してしまうことへの恐れなのよね。田村さんから聞いたわ。“あなたの死が近い”の後の作品の時に視聴率が伸びず、それを監督から小島さんの容姿のせいにされたって。」

 西條の言葉を聞いて小島は田村の方を睨んだ。田村は視線を避けるように俯いた。

「田村さんはあなたのことが心配で、同じ女性の私に話してくれたの。だからわかってあげて。」

 藤野は田村の判断は正しいと思った。

 同じ病気にかかっても、男女で与える精神的な影響は違う。

 抗癌剤の脱毛や皮膚障害は男よりも女の方が、受けるショックが大きい。

 そんな辛い時寄り添うのは、やはり男よりも女の方が共感できて良いだろう。小島自身もよくわかっているはずだ。

 だからこそ、小島も田村を責めることはなかった。

「自分を信じてあげて。あなたは誰よりも感情豊かな演技力で世のなかを虜にしたはず。そんなあなたなら、癌だってなんだって乗り越えられる。」

 西條は小島の手を取って訴えた。

 小島の目から涙が零れた。

「怖かった。死ぬことよりも、自分が誰からも必要とされなくなることが。一度光を浴びてしまうと、暗闇に戻ることが何より苦痛になるの。次々にでてくる若くて綺麗な若手女優が私の居場所をどんどん奪っていった。だから負けないように、美容に時間とお金を費やした。整形もしたわ。それでもどんどん私の出番は減っていった。ネット上ではすでに消えた人扱いだった。」

 小島から本心が溢れてきた。

「それでもできることは全部やった。これでだめならもう女優をやめよう。そう思って”ひまわりとあじさい”のオーディションにでた。合格通知の電話が来た時、本当に嬉しかった。自分がまた認められた。いままでの苦労なんて吹き飛んだ。」

 小島は”ひまわりとあじさい”の台本をバッグから取り出し、パラパラとページをめくった。

 小島のセリフの部分に黄色のマーカーがひかれ、そのひとつひとつに細かい文字で表現方法が記載されていた。

「そんな中の癌告知。人工肛門が必要になると言われた。私の今回の役は肌露出の多い悪女。脱ぐことがNGになってしまえば、降板になってしまう可能性が高い。やっと手にした復活のチャンスだった。」

 小島は台本をゴミ箱に投げ捨てた。

「それでももういいの。何も残せないなんてことはなかった。私には彼がいて、彼が私の事を一生忘れないといってくれた。私を本当に想ってくれる人の心に残れば、それでいい。」

 小島は田村の方を向いて、笑顔を向けた。

 田村は我慢しきれず、声をあげて泣いた。

「わたくし小島成美改め大島明美は手術を受けます。宜しくお願いします。」

小島は立ち上がり、深々と頭をさげてはっきり言った。

女優らしい、いい声だった。


手術が終わって小島は麻酔から覚めた。

「手術は予定通りで終わりましたよ。」

藤野はベッドで横になる小島に言った。

 小島はぼんやりしながらも、手をお腹にあてた。

左側腹部に人工肛門を覆うパウチを触れて、小島は寂しそうな顔をした。

 そんなに簡単には割り切れないだろう。小島が人生をかけてやってきた仕事だ。

 小島の女優人生を終わらせてしまった。

どうしようもないことが分かっていても、藤野はそう思ってしまう。

 藤野が浮かない顔をしていると、小島が藤野の手をとり言った。

「藤野先生。私、手術うけてよかったと思ってるよ。ありがとう。」

小島は酸素マスクを外して言った。小島は笑っていた。

 患者に気を遣わせる医者か。俺もまだまだだな。

 藤野は心の中で溜息まじりに呟いた。

 すると田村が大慌てで入ってきた。後ろでは看護師が走らないように注意していた。

「成美さん!成美さん!大丈夫ですか。痛くないですか。気分は大丈夫ですか。手術終わった直後ですからね、まずは落ち着いてリラックスですよ。」

 田村は両手を広げて深呼吸をした。

「大丈夫だから。あなたがまず落ち着いて」

 小島は穏やかな顔で田村に言った。

「あ、はい。」

 田村は恥ずかしそうに笑った。

 西條は田村が右手に本をもっていることに気が付いた。

「田村さん、それなんですか。」

 西條は田村に尋ねた。

「あっ、これなんですけどね。」

 そう言って田村は本をみせた。

 小島が以前捨てたはずの台本だった。

「実は、手術中監督から直接電話がかかってきたんです。降板の電話だと思って、出たんです。とにかく謝りました。自分達のせいで番組に迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでしたと。でもよく話を聞くと降板の電話じゃなかったんです。」

 田村は興奮しながら監督の言葉を一期一句違わず復唱した。

『あなたの役は残してあります。早く戻ってきてください。あなたの悪女がないと、主演の子が引き立たない。なにより、私はあなたのファンなんですよ。お願いしますね。』

 監督はそう言ったそうだ。小島は出会ってから一番の笑顔を見せた。

 その痺れるような可愛さに、藤野は小島のファンの気持ちがわかった気がした。

 

 小島の術後経過は良好で一週間もしないうちに退院となった。

 藤野と西條は小島達を病院の出口まで見送りに行った。

 小島と西條が仲良さそうに話していた。

「お腹の露出はせず、その分演技で色っぽさをだしてほしいと言われました。」

「あなたの才能を監督は知っていたのね。」

「藤野先生、西條先生。ありがとうございました。私の演技みててくださいね。」

小島は二人に深くお辞儀をした。

 小島は手を振りながら、田村と病院を出ていった。

「綺麗な人だったなー。」

藤野は安堵とともに心の声が漏れた。

「鼻の下のびっぱなしでしたよ。にやにやしちゃって。」

西條は鼻で笑って言った。

「そんなことないよ。」

藤野は真顔に戻した。

 二人は病棟に戻る方向に歩き始めた。

 藤野はまた一つ石を積んだ。

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