第7章 乗り物にまつわる恐怖体験
中国の交通事情には肝を冷やした。
一番の臨死体験は飛行機の遅れだ。私は短期間の弾丸ツアー、帰国後翌日から出勤というギリギリ旅をしている。帰国ができないということはかなりの恐怖だ。なにより、乗り遅れたときの対応が分からない、これが一番怖い。
北京首都国際空港から上海へのフライトを待っていたとき。
中国国内線にも慣れてきて時間もある、上海では観光に行こうかな、と余裕をかましていた。しかし、飛行機は定刻になっても全く飛び立つ様子はない。
乗客もざわついているが、そのまま三時間以上待たされてしまう。思い返せばVIPが来ていた煽りを食らったのかもしれない。
ようやく飛び立ったものの、予定時刻大幅遅れ。上海虹橋空港から浦東空港まで移動しなければならない。日本への便の搭乗時間が迫っていた。
普段は安いバスでのんびり移動するところ、スーツケースをひっつかむと死に物狂いでタクシー乗り場へ走った。
運転手に浦東空港第1ターミナル、とにかく飛ばしてくれと伝えた。タクシーを飛ばせばなんとか一時間だ。ドライバーは意外にも安全運転で、苛立ちが募る。
やっと到着したのは第2ターミナル。このクソ野郎!!!と喉元まで出かかったが、もう文句を言う暇もない。猛ダッシュでセキィリティチェックを抜けて連絡通路を疾走した。
受付カウンターに割り込んでチェックインし、出国手続きも無理矢理横入り。本当に申し訳無いが、それほどヤバい状況だったのだ。
かくして、出発ゲートに到着したときには搭乗が始まっていた。ギリセーフ、心底恐ろしい体験だった。
中国の飛行機は遅れるし、乗り場がコロコロ変わる。気をつけておかないと乗り過ごしたり、予定が狂うことになる。逆に高速鉄道(新幹線)は正確だ。時間を守る必要があれば高速鉄道を使うというのが中国人の言葉だった。
中国ではタクシーが安く、人民の足になっている。しかし、運転が荒いというのが定評だ。
武漢のタクシーの運転は相当荒かった。もう客乗せてるの忘れてんじゃないかというくらいハンドル捌きがワイルド、スピードも半端ない。
長江を渡る橋でも猛烈な追い抜きをかけていき、私はずっと「生きて到着できますように」と神に祈っていた。
上海で利用したときは恐ろしいほど車間距離が近く、助手席に乗っていた私は衝突したときに足を挟まれないよういつでも持ち上げられる体勢で踏ん張っていたほどだ。
タクシーでそれだから、バスは輪を掛けてひどい。
人が降りようとしているのにじわじわ動いていくのだ。おいおい、降りる間はせめて止ってくれ。
長距離バスで亳州から許昌に帰る道のりでは、もう怖くて見ていないが追い越しをかけまくっていたようで、クラクションが鳴り止まなかった。
中国では追い越す方がいまから行くぜ!!とばかりクラクションを鳴らすのだ。
中国の乗り物はスリリングだ。日本の感覚で利用していたら寿命が縮むことうけあいだ。
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