第8章 創作への意欲

 許昌への旅から半年が経った頃、鮮明な記憶が薄れていく中でこの感動体験を誰かに伝えられたら、と考えるようになった。

 そこで、市販の旅行記を参考に面白くて親しみやすい、初心者でも中国に行ける気になる、をコンセプトに旅行記本を制作することにした。


 それまで同人活動の下地はあったので、自費出版のノウハウはある。撮影した許昌の三国志遺跡の写真を組み合わせて旅行雑誌のような雑多で楽しい表紙をデザインした。

 日本を出発するドキドキから、三国志遺跡に出会った感動を読みやすい文章で綴り、本文を補う写真を掲載した。


 かくして完成したのは「許昌旅」A5サイズ、表紙カラーの同人誌だ。マニアックなものだし、100部印刷してゆっくり売っていけたらいいかなと考えていた。

 予想に反して好評で、イベント初売りで搬入した50部が一気に完売した。思わぬ反応に驚いた。それから1年待たずに初版が完売、200部を増刷した。


 それからどっぷり三国志遺跡巡りにハマり、年に2-3回の弾丸ツアーで中国を訪問し、魏、呉、蜀のテーマに合わせて旅行記を制作した。


 イベントでは継続購入してくれる読者が増え、声をかけてもらえるようになった。一冊買ってその日の帰り際に面白いからと全種購入してくれる方や、通販で追加注文をもらえたりと嬉しいこともあった。

 なかなか行けないので読んで楽しんでいます、という方から以前行ったので懐かしいという方までいろんな方に読んでもらえ、交流ができたのはとても楽しかった。


 なかでも感激したのは、本を読んで行ける気になったので推し武将関連の地へ行ってきたと教えてもらえたことだ。本が行動への原動力になり、夢が叶えられたことは作者冥利に尽きる。

 それから訪問史跡写真のストックも溜まってきたのでオールカラーの写真集を作った。写真がきれいだと好評で嬉しい限りだ。


 一般向けにも通用する同人誌ということで、東京神田にある東方書店さんに委託販売してもらえ、書店の棚に並べてもらうという小さな夢が叶った。


 好きが高じて始めた三国志遺跡巡りはこうして私の創作スタイルにも変化をもたらした。

 

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